あるところに
世界の真東にある光の国と
世界の中心にある影の国がありました。
光の国は
いつもまばゆい光に溢れていて
人々は静かでおだやかで
平和な世界でした。
いっぽう影の国は
いつも夕暮れの空のような暗さで
光の国のような
明るさやまぶしさはないけれども
人々の家に灯るあかりは
その一つ一つがまるで
空に散りばめられた星々のように美しく
人々は陽気で
神秘的な魅力にあふれていました。
ある時、
影の国のツヤ子さんは
光の国に出かけることにしました。
光の国に行ってみるとそこは
ツヤ子さんにはまぶしすぎて
白くて何も見えません。
でも、目が少しづつ慣れてくると
そこにいる人々や景色が
ぼんやりと見えてきました。
そこには
ツヤ子さんの国と同じように
人々が普通に生活していました。
光の国の住人は
皆笑顔にあふれていて
とても親切で
影の国から来たツヤ子さんに
光の国の人と同じように
優しく接してくれました。
ツヤ子さんはすっかり
光の国を気に入ってしまいました。
(わたしの故郷である影の国も大好きだけど、ここはなんて居心地のよい場所なんだろう! そうだ。わたしは光の国にずっと住もう!)
ツヤ子さんは自分の故郷である
影の国を離れて
光の国で生活することにしました。
ツヤ子さんは
光の国のミツオさんを好きになりました。
『ミツオさん、あなたはとっても素敵ね。わたしはあなたのことが大好き。』
するとミツオはいいました。
『ツヤ子さんの髪は紫色だよね。僕は金色の髪が好きなんだ。』
ツヤ子さんはとてもショックでした。
影の国のみんなは
紫色の髪の毛が普通なのに‼️
それからツヤ子さんは初めて
光の国にいる自分を
鏡でよーく見てみました。
紫色の髪の毛。
釣り上がった目。
ワシのような高い鼻。
くすんだ闇のような肌の色。
影の国では全く知らなかった
見たこともない自分が
そこにはいました。
ギャーーーー‼️
影の国からきたツヤ子さんは
急いで自分の国に帰りました。
そこはいつものように薄明るいだけで
夜の静けさが広がっていました。
家々のあかりは美しく
人々は陽気に迎え入れてくれました。
『ツヤ子、どうしたの?元気ないね。光の国で何かあったの?』
ツヤ子は光の国で出会った男性と
そして自分の容姿について語りました。
『ツヤ子、どうしたの?あなたの目は釣り上がっていないし、鼻は美しくシュッとしているし、あなたのその褐色の肌はまるで、黒水晶のようにツヤツヤと輝いているわよ。』
ツヤ子は恐る恐る自分を鏡で見てみると
友達の言う通り
そこにはいつも見る自分の姿がありました。
(な〜んだ。いつものわたしじゃない。)
ツヤ子は落ち着きを取り戻し
光の国の自分の家に帰りました。
ツヤ子は大好きなミツオに会っても
もう好きな気持ちは伝えられませんでした。
傷ついた心は
彼女から素直な心を奪ってしまったようです。
ツヤ子さん元気?
今日は一緒に何をしようか。
ミツオに声をかけられても
ツヤ子さんの心は沈んだままです。
ツヤ子は
もう一度自分を鏡で見てみました。
そこには
紫色の髪の毛。
釣り上がった目。
ワシのような高い鼻。
くすんだ闇のような肌の色。
何これ⁉️
やっぱりわたしは何も変わっていない‼️
ツヤ子は確かに何一つ変わっていないのです。
影の国では見えなかった
光の国だから見える自分の姿。
ツヤ子が目にしているのは
光の国にいる影の国の自分でした。
ツヤ子は自分のことが
大嫌いになりました。
そして
光の住人がいつも自分に
・お前の髪の毛は私たちと違う紫色
・お前の顔は美しくない
そう言われているような気持ちになりました。
それは
誰が言った言葉でもない
ツヤ子自身が自分に対して
感じている思いでした。




