第2話・中編

消えた300万円。逆ギレする夫の信じられない盲信


通帳に刻まれた「残高:* , * * *円」の数字を、私は何度も見つめ直した。

けれど、何度目を凝らしても、私たちが血のにじむような思いで貯めてきた300万円は、綺麗さっぱり消え失せていた。


その日の夜、仕事から帰ってきた拓也の前に、私は無言でその通帳を突きつけた。


「これ、どういうこと? 説明して」


拓也は一瞬、ギクリとしたように目を見開いたが、すぐにフンと鼻で笑い、悪びれもせず言い放った。


「あぁ、それか。別に使い込んだわけじゃないよ。俺たちの将来のための『投資』に回したんだ。事前にお前に言うと、どうせ反対するだろ?」


「投資……? 誰にそそのかされたの? 玲奈さんでしょう」


私の口から「玲奈」の名前が出た瞬間、拓也の顔色がサッと変わった。


「な、なんで玲奈さんの名前が出るんだよ! 関係ないだろ!」


「関係なくないわよ! 火曜日の夜、残業って嘘をついて、駅前のカフェバーで彼女と会っていたの、知っているんだから!」


言い逃れができないと悟った拓也は、顔を真っ赤にしてソファから立ち上がり、今度は怒鳴り散らし始めた。


お前、俺を疑ってコソコソ嗅ぎ回ってたのか!? 最低だな! 玲奈さんはな、俺たちみたいな一般家庭が少しでも豊かになれるようにって、外資系エリートのご主人の特別なコネ枠を、善意で分けてくれたんだよ!」


善意。その言葉が、あまりにも滑稽で吐き気がした。

あの裏アカウントで「低年収夫、お買い得なワインで大喜び。ちょろすぎて笑える」と嘲笑われていたことも知らずに、この男はまだ、完璧な女王様の「特別扱い」に夢中になっているのだ。


「善意なわけない人よ、あの人は……! 騙されてるのよ、拓也!」


「うるさい! 地味で世間知らずなお前と違って、玲奈さんは本物のセレブなんだよ! いつも俺の仕事を評価してくれて、応援してくれるんだ。お前みたいに毎日ケチケチ小言を言う奴とは格が違うんだよ!!」


夫の口から飛び出した、容赦ないモラハラ発言。

20代から一緒に苦楽を共にしてきた妻に向かって、出会って数ヶ月のママ友を擁護し、私を奈落の底に見下すような言葉をぶつけてきたのだ。


パチン、と私の中で、夫への情が完全に切れた音がした。


「そう……。そこまで言うなら、もういいわ」


私はすっと表情を消し、冷たい声で言った。


「その投資、本当に利益が出るのね? 300万円、必ず戻ってくるのね?」


「当たり前だろ! 来月には最初の配当が出るって、玲奈さんのご主人直筆の署名が入った契約書も交わしてるんだ。お前は黙って見てろ!」


拓也は吐き捨てるように言うと、自分の部屋に引きこもり、バタンと激しくドアを閉めた。


玲奈の夫の直筆署名が入った契約書――。

私はその言葉を、聞き逃さなかった。

もし、あのエリートと噂される玲奈の夫がこの「架空の投資話」に本当に関与していないとしたら、事態は玲奈の想像を超える方向へ転がることになる。


私は暗闇の中でスマホを取り出し、あの頼れる戦友、佐藤弁護士への相談メールを作成し始めた――。




💬 管理人コラム

第2話・中編をお読みいただきありがとうございました!

消えた300万円を問い詰めた沙織さんに対し、まさかの大逆ギレを見せた拓也。玲奈さんに完全に洗脳され、妻を「地味で世間知らず」と見下す態度には、怒りを通り越して呆れてしまいますね……!怒髪天です!てか、格が違うって何!?💢


しかし、沙織さんはただ傷つくだけの女性ではありません。拓也が口にした『玲奈さんの旦那さんの契約書』という言葉から、新たな反撃の糸口を見つけ出したようです。


次回、第2話・後編では、沙織さんが佐藤弁護士(待ってました!)と共に、玲奈さんの「家庭のウラ側」に潜む致命的な弱点を暴き出します!

タワマンの女王の仮面が、少しずつひび割れていく爽快な展開をお楽しみに!

拓也のバカっぷりに「一発ガツンと言ってやりたい!」と思った方は、ぜひ『いいね』やコメントで沙織さんを応援してくださいね!👇