第3話・後編:逃げ場を失った夫への宣告。「実家を守るか、自分が破滅するか」

呼び出しのメッセージを送ってから1時間後。

法律事務所の相談室のドアが静かに開き、夫の健一が入ってきた。

ビジネスホテルで一晩中眠れなかったのだろう。目の下には酷いクマが浮き出し、髪はぼさぼさで、スーツはシワだらけ。かつての優しげな面影はなく、ひたすら怯えたような目で私を見つめてきた。

『美咲……本当に、弁護士を立てたのか? そこまでしなくても、家でじっくり話し合えば……』

「座ってください、藤本健一さん」

私の代わりに、佐藤先生が低く重みのある声で遮った。健一はビクッと肩を震わせ、私の正面の椅子に腰掛けた。


先生は、あらかじめ用意していた【離婚協議申入書】と【財産分与・慰謝料請求の書面】を、すっと健一の目の前に滑らせた。

『ご主人。あなたの奥様に対する20年間の婚姻費用の不法な隠蔽、および半年前の無断での多額の連帯保証人契約。これらにより、婚姻関係は修復不可能なレベルで破綻しています。奥様は、本日をもって正式に離婚をお求めです』

『あ、あの……! 姉貴の借金は、俺がなんとかします! 働く時間を増やして、毎月少しずつでも……!』

健一が必死に食い下がる。その期に及んだ言い訳に、私は心底軽蔑の視線を送った。

「なんとかするって、どうやって? あなた、債権回収会社から420万円の【一括請求】が来てるのよ? 毎月少しずつなんて通じるわけがないでしょ」


健一が言葉に詰まると、佐藤先生が眼鏡の奥の目を鋭く光らせ、本題を切り出した。

『ご主人、現在のあなたに420万円を即座に支払う貯蓄はありませんね? もしこのままあなたが支払いを拒めば、相手企業はあなたの給与の差し押さえ、最悪の場合は自己破産の手続きを進めるでしょう。そうなれば、会社での立場も失います』

『そ、それは……困ります……。でも、俺にどうしろって言うんですか……!』

頭を抱える健一に、佐藤先生は冷徹な選択肢を突きつけた。

『道は二つに一つです。ご主人、あなたが【お姉様に対する求償権】を行使し、お母様が住まわれている義実家の土地と建物を売却、あるいは抵当に入れて420万円を全額回収してください。実家にケジメをつけさせるのです』


『えっ!? 実家を売る……!? そんなことしたら、母さんはどこに住むんだよ! 姉貴だって行く当てが……!』

健一が信じられないという顔で叫んだ。この状況になってもまだ、自分を騙し続けた実家の心配をしている。その姿に、私の怒りは頂点に達した。

「じゃあ、あなたが変わって自己破産して、会社をクビになって、子どもたちの養育費も払えずに一生泥水をすするのね?」

私は机をバンッ!と叩いて立ち上がった。

「私の20年間を、子どもたちの未来を犠牲にしてまでお義母さんたちを守りたいなら、どうぞそうしなさいよ! あなたが実家に責任を取らせないなら、この法律事務所はあなた個人を徹底的に訴えて、給与も退職金も、取れるものは一銭残らず差し押さえるから!!」


私の気迫に圧され、健一は完全に言葉を失い、ガタガタと震え出した。

『実家を売らせるか、お前自身が自己破産して破滅するか、だ』

佐藤先生が冷酷なトドメの一言を放つ。

『今週金曜日までに、お母様とお姉様を説得し、実家で金を工面する旨の合意書を持ってきてください。それができない場合は、来週月曜、あなた個人への法的措置を開始します』


相談室を出るとき、健一は魂が抜けたような顔で、フラフラと書類を抱えて去っていった。

形勢は完全にこちらに傾いた。しかし、全7話の物語はまだ第3話が終わったところだ。あの往生際の悪い義母と、借金をバックれて逃げ回っている義姉が、大人しく家を手放すはずがない。

夫に「実家の解体」という爆弾を持たせて送り出した私。次なる戦いの舞台は、いよいよあの忌々しい【義実家】へと移ることになる。本当の泥沼劇は、ここから加速していく――。

――第4話へ続く。


✍️ 管理人より

弁護士事務所での三者面談!「実家を売らせるか、自分が自己破産するか」という究極の二択を突きつけられた夫は、完全に顔面蒼白でした。この期に及んでまだ母親や姉の心配をする夫には心底イライラさせられましたが、美咲さんの怒りの一喝と先生の冷徹な宣告でスカッとしましたね!

💡 自分自身の破滅か、それとも実家を売却させるか…夫の今後の行動について

  • マザコンの夫は、本当にあの強烈な義母と義姉に「家を売れ」と交渉できると思いますか?
  • それとも、交渉に失敗して、また美咲さんに泣きついてくるでしょうか?

第3話はここで幕を閉じます。第4話からは、夫が持たされた爆弾を巡り、義実家を巻き込んださらなる泥沼の戦いが始まります!ぜひフォローして次回の更新をお待ちください!