第1話・中編:夫が20年間隠していた借金。明かされた「義母の秘密」と、私の困惑
「お義母さん……どういうことですか?」
日曜日、まだ朝の8時。玄関先に立ち尽くす義母の目は赤く腫れており、明らかにただ事ではない様子だった。
夫の健一が慌てて玄関に駆けつけ、義母の肩を支える。
「母さん、なんでここに……。俺、まだ何も詳しく話してないよ」
「健一、もういいの。これ以上、あなたにだけ泥を被らせるわけにはいかないわ」
義母は震える声でそう言うと、リビングのソファに腰掛けた。
いつもなら「お邪魔するわね」と上品に微笑む義母が、今は小さく縮こまり、まるで罪人のように俯いている。
私は冷めかけたお茶を出しながら、胸のざわつきを抑えられずにいた。
「どこから話せばいいのかしら……」
義母はカップを握りしめ、ぽつりぽつりと話し始めた。
「健一が結婚する直前、実家の自営業が本当に火の車だったの。お父さん(亡き義父)が無理な投資をして、多額の不渡りを出してしまってね。このままだと家も土地も取られて、健一の結婚式どころか、破産するしかない状態だったのよ」
私は健一の顔を見た。健一はただ、静かに目を伏せている。
「健一は『自分に任せてくれ』って言って、あちこちからお金を工面してくれたわ。でも、まさかあの時の借金を、結婚してからの20年間も、あなたに内緒で一人で返し続けていたなんて……」
義母の目から涙がこぼれ落ちた。
「私はてっきり、健一が独身時代の貯金や、ボーナスなんかでとうに返し終わったものだとばかり思っていたの。健一も『もう大丈夫だから』としか言わなかったし……」
頭がクラクラした。
義母の話が本当なら、夫は「実家の危機」を救うために動いたことになる。
ギャンブルや浮気といった、身勝手な理由ではなかった。でも――。
「それなら、どうして私に一言も相談してくれなかったの?」
私の口から出たのは、義母への同情ではなく、夫への怒りと悲しみだった。
「結婚式の2週間前だったんでしょ? これから人生を共にするって決めた相手だよ?どうして『実家が大変だから、一緒にがんばってほしい』って言ってくれなかったの?」
健一は絞り出すような声で言った。
「言えるわけないよ……。そんな借金を抱えた男だって知ったら、婚約を破棄されるかもしれないって怖かったんだ。美咲(私)の両親にも合わせる顔がない。俺さえ黙って、毎月少しずつ返していけば、誰も傷つかずに済むと思ってた」
「誰も傷つかない!?」
私は思わず声を荒らげた。
「私はこの20年間、何だったの?あなたの小遣いが少ないのも、いつも何かを遠慮しているように見えたのも、全部そのせいだったんじゃない。私は『家族』として、完全に蚊帳の外だったんだよ!」
毎月の返済額は、おそらく数万円だろう。
しかし、20年という歳月はその総額を膨らませ、何より「隠され続けた」という事実が、私たちの信頼関係を根底から揺るがしていた。
「本当にごめんなさい、美咲さん。全部、私たち親の責任なの。健一を責めないあげて……」
義母はソファからずり落ちるようにして、フローリングに膝をつき、私に頭を下げた。
「お義母さん、やめてください!」
慌てて止めようとしたその時、夫のポケットでスマートフォンのバイブレーションが激しく鳴り響いた。
画面に表示されたのは、先ほどの債権回収会社ではなく――「健一の姉(義姉)」の名前だった。
このタイミングでの義姉からの電話。
それは、この借金問題が「美徳に満ちた家族の助け合い」などという綺麗な話ではないことを告げる、さらなる波乱の幕開けだった。
――第1話・後編へ続く。
✍️ 管理人より
義母の口から語られたのは、夫が「実家を救うために背負った借金」という衝撃の事実でした。理由が何であれ、20年間も隠され続けた妻のショックは計り知れません。
💡 もしみなさんが主人公の立場なら…
- 「家族を想っての行動だから」と夫を許す方向に動きますか?
- それとも「嘘をつかれ続けたこと」への不信感から、離婚も視野に入れますか?
次回、義姉からの電話でさらに事態が動きます。ぜひあなたの意見をコメントで教えてくださいね!