動きながら考える秋

――ひとつの場面に、ひとつの想い


9月下旬、全体での動きも少しずつ本格化し、

物語の場面をどう表現するか、

グループごとに深めていく時間が始まりました。



この時期に特徴的だったのは、

「動きながら意味を考える」こと。



どの位置に誰がいて、

どんなセリフを誰が発するのか、

それぞれの関係性はどうか…。



ただセリフを聞くだけでなく、

「なぜそう言うのか」「何を感じているのか」

といった感情の部分にまで

目を向けるようになっていきました。



例えば、ジャガーの場面。

暗闇の中で起こる出来事を

どう表現するかは、悩ましい課題でした。


ジャガーを直接見せるのではなく、
暗闇から悲鳴が聞こえ、ブリアンが飛び込み、
斬られたジャガーが逃げる。
その結果、視界が開けてブリアンとドニファンが残る――。

このように、「何を見せるか」よりも

「何を伝えたいか」に

重点が置かれるようになっていきました。


ひとりのつぶやきが、全体を動かす


10月に入り、印象的だったのが

ある夜の話し合い。



少年たちが一度分裂し、

フランス洞を離れてしまった後の場面について、

みんなで「どんな気持ちを表現したいのか」

を考えました。


「仲たがいして、残されたほうはどんな気持ち?」
「さみしい。でも、悲しいとはちょっと違うかも」
「欠けたまま食卓を囲んだら、ぽっかり空いた席が気になるよね」
「上級生にもカラ元気な子と沈んでる子がいそう」
「仲良くなかったけど、信頼はしてたのかも」
「明るくふるまってるけど、心は落ち込んでる…そんな感じ」
「そういう気持ちが『石』になってるんじゃない?」

誰かの一言が、次の誰かの気づきを呼び、

話し合いがどんどん深まっていく。



こうした言葉の連鎖が、

やがて一つの動きになって

表現されていきました。



「みんながバラバラの方向を向いて

座っているけれど、

やがて同じ方向を向いて立ち上がる」



――そんなアイデアが出て、

実際にやってみると…


うまくいかない。



でも、それも大切なプロセス。

うまくいかないからこそ、

「もっと伝わる表現は?」

と考えるきっかけになります。



上の子たちの葛藤と責任

この時期、中高大生の中には

「時間が足りない」

「間に合わないかもしれない」

という焦りが見られ始めました。



けれど、そんな中でも

「合同の場で、

下の子たちの意見も一緒に取り入れたい」

という思いが揺らぐことはありませんでした。



一人で突っ走るのではなく、

みんなの声を集めて形にする。



その姿勢が、ラボの縦のつながりの

根っこにあります。



動きやセリフを決めていく場面でも、

誰かが発した一言が

思わぬヒントになることもありました。



あるとき、ブリアンとドニファンの

関係を考えていた時、ひとりの子が

「トラックにひかれそうになって、死ぬ!と思ったときに、
喧嘩してた友達が助けてくれた感じじゃない?」

その瞬間、

周囲の子たちの顔がパッと明るくなり、

「なるほど!」

「ジャガーに襲われる気持ちは

分からないけどそれなら分かる!」

と全体が一気に納得感をもって動き出しました。



理解できなかった心情に

リアリティが生まれた瞬間でした。



子どもたちは、この時期を通して

「表現は、知識やスキルだけではなく、

気持ちの理解が土台になる」ということに

気づき始めていたように思います。



動きながら、迷いながら、ぶつかりながら…。



ひとつの場面の背景を掘り下げ、

そこに込める想いを仲間と一緒に見つけていく。



そうした日々の積み重ねが、

やがて全体の物語の芯となる表現へと

つながっていきました。



次回は、

「仲間とともに心を重ねた冬の表現づくり」

をご紹介します。

(第3回へつづく)