入院中に実は全く服用していなかった人 | kyupinの日記 気が向けば更新

入院中に実は全く服用していなかった人

外来と入院での治療の大きな差の1つに、入院では服薬遵守を徹底できることが挙げられる。外来では服薬はそこまで徹底できない。

 

従って、統合失調症のように服薬が続かないと悪化する確率が高い疾患では、入院継続より外来治療の方が服薬しないことがきっかけとなって悪化する経過がしばしばみられる。これは研究で証明されており、時間が経つにつれて服薬率が落ちる傾向があるのである。

 

現代社会の精神医療はなるだけ入院させず、外来で治療することが推奨されている。これは人権や医療経済的なものも考慮されている。

 

従って、全く服薬せず精神症状が極端に悪化した外来患者さんが、世間を震撼させるような事件が起こしたとしても、精神科病院を含め医療機関に文句を言うのは間違っている。国の医療政策に苦情を言うべきであろう。そもそも大多数の精神科患者さんは通院治療を強制されてはいない。通院は任意のものである。

 

精神科病院では、適切な治療をすればそれなりに落ち着く経過が普通だが、薬物療法やECTでもなかなか落ち着かない人は、多くの時間、隔離室に収容されている。このような人は、定期的に行われる都道府県の監査により正しく処遇されているか、精神科医の診察も行われチェックされる。これも人権を考慮されている。このような監査で診察を受ける患者さんはいつも同じ人になりやすい。逆に言えば、年間で長期間隔離されるような患者さんはあまりいないのである。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000932530.pdf

 

しかし、長期入院しているのに実は服薬していなかったという人が稀にいる。精神科病院では毎回服薬の際に確認しているが、うまく舌の下に隠して後で吐き出すなどである。またいったん服薬したものを胃から吐き出せるような人もいるが、このケースでは何がしか服薬しているため、舌の下に隠して吐き出すよりはマシである。

 

これが統合失調症患者さんの場合、服薬しないで数年経過すると、悲惨な予後になることが多い。

 

幻覚妄想が発展して、強固というか、とてもじゃないが退院できないくらい悪化するのは、まだ理解できる。統合失調症の人が長期間服薬していないと、次第に精神症状が悪化するので周囲からわかる経過になる人が多い。

 

しかし統合失調症でも、妄想性型の人は比較的その辺りの破綻がそこまで目立たない人もいて、時間が経ち、取り返しのつかない事態になる。実は服薬していなくて、なおかつそれに気づかれないなんて奇跡のような確率である。

 

悪化するのは科学的にまだわかるが、極端に忍容性が低くなり、かつては服薬できていた薬が全然服薬できなくなるのは不思議である。ただし、これは服薬しなかった全ての患者さんに言えることではないと思う。

 

これは重い統合失調症が背景にあり、長期間の無服薬により著しく悪化したわけだが、ドパミン過剰の環境が、極めて脳に有害なことを示唆している。同時に、長期に服薬していないことにより、全く服薬できない事態に至るのは特殊だと思う。

 

統合失調症に人は、薬物治療の後の長期間の服薬なしの状況では、レセプターの態様の変化にいくつかバリエーションがあるのではないかと想像している。レセプターのアップレギュレーションやダウンレギュレーションでは理解しにくいからである。

 

いずれにせよ、本人が悲惨なのは間違いない。