第一感でこの薬が良いと思うこと(リエゾン編) | kyupinの日記 気が向けば更新

第一感でこの薬が良いと思うこと(リエゾン編)

患者さんの診察時、主訴や病歴やその患者さんの表情、様子などを診て、第一感でこの薬が良さそうと思い処方する。ここで言う第一感とは感覚的なものであり、診察内容が加わっているとはいえ、主観的な部分が大きい。

 

しかし、第一感で投薬する薬でうまくいく確率は計算したことはないが、たぶん95%を超えていると思う。しかし5%くらい外しているのは重大である。むしろ僕はこの方を重視している。

 

病状を改善しフィットしているが、継続できないことがある。例えば、ラミクタールのように中毒疹が出て続けられないことがある。これらはうまくいって始まっているので一応、95%に入れている。うまくいくイコールそれで良いというわけではない。そもそも、診察した時、確実にその人に中毒疹が出るかどうかまで予測できない。生活歴、病歴で薬で中毒疹が出やすい人はリスクが高いといったところである。

 

診察時、リスクを取りやすい時とそうでない時がある。例えば、過去ログにも触れているが、リエゾンの治療により賦活し過ぎて病棟が大騒ぎになる事態は許されない。それは身体科のリエゾン医師に対する期待からも反している。

 

そのようなことから、例えばレキサルティは少量で賦活が強いため、良さそうに思えてもかなり処方しにくいものだ。つまり、リエゾンでは常に第一感で良さそうな薬を選択しているわけではない。

 

ジプレキサ(オランザピン)も同様、精神症状を悪化させることがあるので処方し辛いが、奇異反応的な賦活がレキサルティほどではないし、選択肢がそれしかないこともあるので、看護師と病棟薬剤師に十分注意喚起して処方することもよくある。

 

そのタイプのリスクは、単科精神科病院病棟では十分に許容できるので、これらの薬も処方しやすい。できれば転院して貰って治療をした方が良い。つまり、どこで投薬するかで選択しやすい薬は変わるのである。

 

リエゾンでのレキサルティの場合、一発で寛解するというか、完治のような病態変化もあり、次回行ったら既に退院している。いわゆる魔法のような効き方である(実話というか、実際の病棟ナースの言葉)。

 

リエゾンで比較的投薬頻度が高く有効なことが多い薬として、バルプロ酸、オランザピン、クエチアピン、ドネペジルが挙げられる。このうち、バルプロ酸、オランザピン、クエチアピンはじわじわと徐々に効果が表れるタイプだと思う。(その日に効果が出ないという意味ではない)

 

それに比し、ドネペジルは鋭いナイフのように効くタイプである。ドネペジルは過小評価されている向精神薬の1つだと思う。

 

ドネペジルは、コリンエステラーゼ阻害薬で、副作用が出る時は1㎎程度でも出現する。リエゾンに限ればレビー小体型認知症の幻視に対し処方する機会が多いが、当初、奏功して幻視が止まることの方が、そうでないことより遥かに多い。

 

リエゾンではない場面では、ドネペジルは認知症っぽい精神症状の変化が起こったタイミングで服薬させると精神が締まる印象を持つ。過去ログにあるように、いつも日記や家計簿をつけていた高齢者がぱったりしなくなったなどの変化である。このタイミングでドネペジルを少量投与すると、以前に戻ったように再開したりする。

 

また曜日感覚が乏しくなり、曜日の勘違いが多くなった時も、正確に把握できるように回復するケースがある。家族から見て繰り返しのつまらない質問の減少もそうである。

 

リエゾンの場合、ドネペジルが5㎎~10㎎など大量に処方されていて、精神症状が悪い時はむしろ中止した方が良い。精神に有害作用を及ぼしているケース(具体的には認知症の随伴症状を悪化させている)が多いからである。

 

リエゾンでは特に、1.25㎎投与してそれで効かないなら、増やす意味すら乏しいと言うか、期待値が低すぎるといったところだと思う。なぜ1.25㎎なのかと言うと、リエゾンに行くような民間総合病院はドネペジルの3㎎錠がなく5㎎錠しかないからである。したがって4分の1に分割すると1.25㎎になる。

 

驚くのは、ドネペジル1.25㎎で幻視がピタリ止まるのは良いとして、下痢などの副作用が出ることである。これはドネペジルがコリンエステラーゼ阻害薬であることを考えると、十分にあり得る副作用だが、そもそもドネペジルは高齢者にしか投与しないため、高齢者では腸管の動きが弱まっている(つまり便秘になりやすい)ことを考慮すると、そこまで多くはない副作用である。つまりその下痢をした患者さんにとって、ドネペジルがそこまで切れているからであろう。

 

また更に驚くことは、下痢の副作用のためにドネペジルを中止した際、幻視が再燃する人と、幻視が完治してしまっている人にわかれることだ。

 

ドネペジルを中止して下痢が消失し幻視が再燃する人は、ドネペジルの薬理作用をそのまま証明している。幻視が止まって再燃しない人は、元々レビーではなかったのでは?という疑念が湧く。雑多な、もう少し未分化な精神症状だったのだろう。

 

では、なぜ止まったかと言うと、その辺りに幻視の座があるからなんだろうと思う。軽い精神疾患では時々経験することである。

 

特にリエゾンで第一感が的中しやすいのは経験的なものが大きい。おそらく27歳の時からリエゾンをしているからだろうと思う。