パーキンソン病のうつ状態に何を使うか? | kyupinの日記 気が向けば更新

パーキンソン病のうつ状態に何を使うか?

特にリエゾンの際にうつ状態のパーキンソン病の患者さんの相談を受けることがある。パーキンソン病にはいろいろな精神症状が出現することが知られており、一般にはうつ状態が多い。また不安障害や特に幻視を伴う幻覚や妄想も合併しやすい。不安障害が多いのは、一般に高齢者のうつ病には不安が伴いやすいことも関係しているように思う。

 

本来、パーキンソン病治療薬にはうつ状態改善する薬理作用があるが、同時にうつ病にも適応があるものは滅多にない。うつ状態を改善する可能性のある薬として試みられる程度である。(ビシフロールなど)。

 

うつ状態に対しては、おそらく認知に関する影響がすくないという理由でSSRIが第一選択になると思われるが、本来SSRIにはうつ状態はともかく二次的にドパミンを枯れさせるメカニズムがあるため、若干使い辛そうに見えるかもしれない。しかし直接的にドパミンをアップさせる薬が併用されているため、臨床的にはそこまで投与しにくくはない。

 

マニュアル的には、第一選択はSSRIで良いが、そこまで効かないといったニュアンスで書かれている。一方、パーキンソン病を悪化させる規模もそこまで大きくないという。

 

感覚的に使いやすいのはリフレックスである。リフレックスは食欲も増すため、副作用もこの患者さんたちには良いように見える。

 

全然動けなくなっている状況、たとえばうつ状態の昏迷状態のような病態は工夫を要す。このような病態だと、食事もとれないしリハビリも困難なので一刻も早い対処が必要である。

 

ある時、パーキンソン病の患者さんの昏迷状態にリボトリールを最初から2㎎投与してみた。次に診たとき、なんとベッドサイドでテキパキと掃除していたので驚いた。このリボトリールは本来はワイパックスがセオリーだが、現場になかったため代替としてリボトリールを処方したのである。

 

この処方の真意は、カタトニアにはベンゾジアゼピンが非常に有効なことからくる。また、パーキンソン病は精神科目線では、家族関係や病前性格など非定型精神病と非常に関係があることもある。

 

このような昏迷状態にベンゾジアゼピンが効かない場合、ECTも視野に入る。マニュアル的には、パーキンソン病のうつ状態では検討に値すると言った感じで記載されている。ECTは運動障害やうつ状態には奏効するが、せん妄を誘発するリスクが高く、既に認知障害が出ている人にはその確率が高まるという。

 

昏迷に至っている人には少量のジプレキサも可能性がある。一般にジプレキサは少量ではうつ状態を改善することも稀ではない。

 

パーキンソン病にうつ状態には、現代風にはサインバルタやイフェクサーも良いケースがある。ただし高齢者なので身体状況にも注意する(特に重い腎障害)。サインバルタの方がイフェクサーより使いやすい印象である。またサンバルタは自分の患者さんでは結構、結果が出ている。

 

SSRI及びサインバルタ、イフェクサーなどSNRIと古いタイプの3環系抗うつ剤(トリプタノールなど)の差異は、後者は認知障害や便秘を悪化させる抗コリン作用やα遮断作用が多いことだと思われる。その点で、古いタイプの3環系は相当に使いにくい。

 

今回の記事はパーキンソン病とうつ状態の関連をトピック的に取り上げたもので、精神病状態(幻覚妄想)は薬物そのものがパーキンソン病を悪化させるメカニズムを持つためかなり異なる考え方になる(今回は長くなるので詳細には触れない)。

 

パーキンソン病のうつ状態に対しSSRISNRIなどの薬物がそこまで幻覚妄想を悪化させるようにはみえない。

 

一般にパーキンソン病の精神病状態は、パーキンソン病そのものよりパーキンソン病治療薬による二次的なものと考えられており、パーキンソン病治療薬のドパミン神経系に影響する規模に比べ、SSRI及びSNRIのドパミン神経系に影響する規模が小さいことも関係がありそうである。

 

パーキンソン病治療薬と抗うつ剤は精神病治療薬に比べ、同じ方向に作用しているものなので、努力しやすいタイプの治療だと思う。

 

(おわり)