尿閉と緊張病症候群 | kyupinの日記 気が向けば更新

尿閉と緊張病症候群

過去ログでは、ECT(電撃療法)では、緊張病性昏迷、著しい拒食、希死念慮には非常に効果的だが、幻覚にはあまり効果がないと言う話が出てくる。

効果的な3つの症状のうち、「著しい拒食」は、緊張病症候群に出現することも稀ではなく、3つのうち2つは重複しているとも言える。

ある時、ある女性患者さんが緊張病性興奮状態(緊張病症候群の1側面)に至り、尿閉が生じた。

このような場合、薬を増量してもうまくいかず、次第に昏迷に至り悪性症候群に移行することがある。即ち、単純に薬を増量することは、危険性があるのである。

本人は、「薬のせいで尿閉が出た」と強く訴えていたが、抗精神病薬はエビリファイしか処方していなかったし、他の薬もそのような副作用が生じにくい状況である。

しかし、本人はそんなことも理解できない。(病識欠如)また、このように会話ができることは、少なくとも緊張病性昏迷ではなかったこともわかる。

これはECTを実施するタイミングだったので、家族にも伝えて承諾を得た。尿閉+緊張病症候群の際にECTを実施すると、女性の場合、けいれんの際に尿失禁が起こることがあるが、そうならないこともある。

彼女は、(木箱)ECTはきれいにかかり、しかも尿失禁もなかった。

古典的ECTが「きれいにかかる」とは、強直性けいれんと間代性けいれんが連続で十分な時間生じる現象を言う。きれいにかからない場合、効果も十分に得られない。これを診ても、古典的ECTでは筋肉にけいれんが生じることが重要なことがわかる。

彼女はこの1回のECTで、緊張病性興奮状態と尿閉が完全に消失し、精神病に伴う奇妙で荒唐無稽の妄想もなくなってしまった。もし、彼女が妄想性障害であれば、そう簡単にはいかない。

緊張病性興奮に伴う一連のものだったので、全て消失したのである。緊張病症候群の興奮と昏迷がコインの表と裏のようなものであることを示している。

彼女はECT実施当時、隔離室に収容されていたが、その後、精神症状は急回復し、まもなくして退院となった。

現在はエビリファイを16mgと眠剤程度を服用しているだけである。エビリファイは、効果面でなにかしら不足すると感じることも多いが、良い状態を維持するだけなら、副作用も重篤なものは稀で素晴らしい軽さを持っていると思う。

参考
精神症状身体化の謎
想像力の低下と妄想性障害
木箱ECTとサイマトロン