頼むからドアをドンドン叩かないでくれよ
卒業後、研修医2年間にあまりにも当直のアルバイトをしたため、その後、さほどアルバイトをしていない。この言い方も変だが、なぜかそういう人生なのである。
最初の2年間以外は、夜間当直に関してはさほどしていない医師に入る。総合病院時代、当直はなかったものの、夜間に起こされて出かけて仕事をしていた時期もあるが、これだって毎日ではないし、総合病院全体からみると、精神科はあまり仕事がないのではと思われているところはあった。実際、ある他科の勉強会に参加していたら、
精神科が忙しいわけがない。
と言われたこともある。これは半分当たっているが、実際の業務を知らない人には言われたくはない。
時々、夜間に救急外来に駆けつけていると、色々な人間模様をみる。医師側から見るからこそ、とても面白いのである。
ある若い医師(僕と同じくらいの年齢)は救急外来の当直に来ていたようであるが、激怒し、周囲に当り散らしていた。
この病院は全然、寝られないじゃないか。もう二度と来ない!
と叫んでいたのには、笑いをこらえるのに必死。事前に調査して来ないと。眠る時間があると思う方がおかしい。
また、こういう病院はあらゆる病院や事故現場から瀕死の状態の患者が救急搬送されてくることが多いので、パッと見て、疾患の内容や深刻さが判断できないと相当に厳しいと思う。つまり駆け出しでは無理な話で、経験を必要とし簡単な気持ちで来ると大変なストレスになるのである。もちろん、当直料とは全く釣り合っていない。
大きな総合病院の救急外来では、薬剤師も事務の人たちもちろん休みなしに夜勤をしている。
僕は当時、ほんの短い期間だけ他の病院で夜勤(当直)をしていた時期がある。
一般の人はわかりにくいと思うが、精神科に限らず内科でも夜勤は寝ていてかまわないのである。しかし何かあると起きて仕事をしなくてはならない。運が悪いと、かなり忙しいこともある。(医師の場合、普通、当直した翌日はお休みにはならない)
あの先生が当直をすると、よく大事件が起こる。
という有難くないジンクスを持つ医師も存在する。実は僕はそういうタイプだった時期もある。これはある種の引きの強さだと、当時は自分に言い聞かせていた。(あらゆる事態に対応できるようにとか・・)
医師の当直は総合病院の救急のように眠る時間さえない当直は滅多にないのである。あの少年の怒りはもっともな話であった。
当時、行っていた病院は典型的な老人病院であり、ほとんど仕事がないわりに当直料が高かったので、最初は喜んでいた。
ところがである・・
その老人病院は、認知症の老人ばかりなのはまだ良いとして、建物が考えて造られておらず、当直室のすぐ外に患者さんがやって来るのである。
当直室から真っ暗な廊下に出た瞬間、なんでか、転倒。
良く見ると床におばあちゃんが四つん這いでいる。床のおばあちゃんに躓く、そんな風なのであった。これは慣れないとびっくりすることである。もっと困るのは、
空襲ですよ~!
と大声で叫び、当直室のドアを叩き続けること。これには参った。最初はこの時代に空襲なんて「新鮮だ!」とか思っていたが、叩く音がうるさくて全然眠れない。その当直は金曜日だったので、翌日の外来の業務に響くのである。(当時は土曜日も外来をしていた)
おまけに、その病院は厳密には精神科ではないらしく、老人を眠らせる薬や抗精神病薬の種類が少ないのである。セレネースがないのにはびっくりした。従って、空襲警報を伝えに来るおばあちゃん達を何とかする方法は乏しかった。
次第に心臓を悪くし、しばしば不整脈が起こるようになった。胸部絞扼感を何度も体験した。胸部絞扼感は締め付けるような不快感を伴い、これは死ぬかもしれないと言った不安感も出る。
その老人病院の院長になんとかならないか相談したら、
痴呆の勉強になるから・・
と言うトンチンカンな返事で、善処してくれる気配がなさそうなのである。この返答には相当に頭に来たが、そんな風に言う人にそれ以上は望めない。
不整脈や気色の悪い胸部絞扼感も気になるので、自分の病院の循環器のドクターに相談に行った。トレッドミル運動負荷試験をして見ましょうと言われた。
トレッドミル運動負荷試験実施中・・
突然、循環器の先生が、先生大丈夫ですか?と聞く。「まだ大丈夫ですけど、何か出ていますか?」と答えたら、
先生、もう止めましょう・・
と言われ、試験はドクターストップで中止になったのである。結果は良くなかったようであるが、内容までは覚えていない。ボスにこのことを伝えたら、
アンタ、体どこもかしこも悪いなあ・・脳と心臓を取ってもらったら・・
と言われた。ボスの返事はいつもそんな風であった。このドクターストップの事件は、当直を辞める説得力のある理由になった。あとそれ以外のことで、当直中に何か病院であった時に駆けつけられないというのも相当にストレスになっていたのである。その2つの理由で辞めた方が良いと思っていた。かくして、更に収入が減ったのである。
その後、トレッドミルはしたことがない。結果を聞いて、ショック死するのも嫌だし。
不整脈は当時はよくあり、綺麗なリズム感ある三連脈(三段脈)も経験している。ところが、この10年はあまり妙な不整脈は経験していない。
だいたい、それ以降、精密検査をしたことがないので詳細は謎のままなのである。
これも、医者の不養生の一種だと思う。ただし、心臓は怖くて調べないが、胃カメラとか腸の検査はしている。
最初の2年間以外は、夜間当直に関してはさほどしていない医師に入る。総合病院時代、当直はなかったものの、夜間に起こされて出かけて仕事をしていた時期もあるが、これだって毎日ではないし、総合病院全体からみると、精神科はあまり仕事がないのではと思われているところはあった。実際、ある他科の勉強会に参加していたら、
精神科が忙しいわけがない。
と言われたこともある。これは半分当たっているが、実際の業務を知らない人には言われたくはない。
時々、夜間に救急外来に駆けつけていると、色々な人間模様をみる。医師側から見るからこそ、とても面白いのである。
ある若い医師(僕と同じくらいの年齢)は救急外来の当直に来ていたようであるが、激怒し、周囲に当り散らしていた。
この病院は全然、寝られないじゃないか。もう二度と来ない!
と叫んでいたのには、笑いをこらえるのに必死。事前に調査して来ないと。眠る時間があると思う方がおかしい。
また、こういう病院はあらゆる病院や事故現場から瀕死の状態の患者が救急搬送されてくることが多いので、パッと見て、疾患の内容や深刻さが判断できないと相当に厳しいと思う。つまり駆け出しでは無理な話で、経験を必要とし簡単な気持ちで来ると大変なストレスになるのである。もちろん、当直料とは全く釣り合っていない。
大きな総合病院の救急外来では、薬剤師も事務の人たちもちろん休みなしに夜勤をしている。
僕は当時、ほんの短い期間だけ他の病院で夜勤(当直)をしていた時期がある。
一般の人はわかりにくいと思うが、精神科に限らず内科でも夜勤は寝ていてかまわないのである。しかし何かあると起きて仕事をしなくてはならない。運が悪いと、かなり忙しいこともある。(医師の場合、普通、当直した翌日はお休みにはならない)
あの先生が当直をすると、よく大事件が起こる。
という有難くないジンクスを持つ医師も存在する。実は僕はそういうタイプだった時期もある。これはある種の引きの強さだと、当時は自分に言い聞かせていた。(あらゆる事態に対応できるようにとか・・)
医師の当直は総合病院の救急のように眠る時間さえない当直は滅多にないのである。あの少年の怒りはもっともな話であった。
当時、行っていた病院は典型的な老人病院であり、ほとんど仕事がないわりに当直料が高かったので、最初は喜んでいた。
ところがである・・
その老人病院は、認知症の老人ばかりなのはまだ良いとして、建物が考えて造られておらず、当直室のすぐ外に患者さんがやって来るのである。
当直室から真っ暗な廊下に出た瞬間、なんでか、転倒。
良く見ると床におばあちゃんが四つん這いでいる。床のおばあちゃんに躓く、そんな風なのであった。これは慣れないとびっくりすることである。もっと困るのは、
空襲ですよ~!
と大声で叫び、当直室のドアを叩き続けること。これには参った。最初はこの時代に空襲なんて「新鮮だ!」とか思っていたが、叩く音がうるさくて全然眠れない。その当直は金曜日だったので、翌日の外来の業務に響くのである。(当時は土曜日も外来をしていた)
おまけに、その病院は厳密には精神科ではないらしく、老人を眠らせる薬や抗精神病薬の種類が少ないのである。セレネースがないのにはびっくりした。従って、空襲警報を伝えに来るおばあちゃん達を何とかする方法は乏しかった。
次第に心臓を悪くし、しばしば不整脈が起こるようになった。胸部絞扼感を何度も体験した。胸部絞扼感は締め付けるような不快感を伴い、これは死ぬかもしれないと言った不安感も出る。
その老人病院の院長になんとかならないか相談したら、
痴呆の勉強になるから・・
と言うトンチンカンな返事で、善処してくれる気配がなさそうなのである。この返答には相当に頭に来たが、そんな風に言う人にそれ以上は望めない。
不整脈や気色の悪い胸部絞扼感も気になるので、自分の病院の循環器のドクターに相談に行った。トレッドミル運動負荷試験をして見ましょうと言われた。
トレッドミル運動負荷試験実施中・・
突然、循環器の先生が、先生大丈夫ですか?と聞く。「まだ大丈夫ですけど、何か出ていますか?」と答えたら、
先生、もう止めましょう・・
と言われ、試験はドクターストップで中止になったのである。結果は良くなかったようであるが、内容までは覚えていない。ボスにこのことを伝えたら、
アンタ、体どこもかしこも悪いなあ・・脳と心臓を取ってもらったら・・
と言われた。ボスの返事はいつもそんな風であった。このドクターストップの事件は、当直を辞める説得力のある理由になった。あとそれ以外のことで、当直中に何か病院であった時に駆けつけられないというのも相当にストレスになっていたのである。その2つの理由で辞めた方が良いと思っていた。かくして、更に収入が減ったのである。
その後、トレッドミルはしたことがない。結果を聞いて、ショック死するのも嫌だし。
不整脈は当時はよくあり、綺麗なリズム感ある三連脈(三段脈)も経験している。ところが、この10年はあまり妙な不整脈は経験していない。
だいたい、それ以降、精密検査をしたことがないので詳細は謎のままなのである。
これも、医者の不養生の一種だと思う。ただし、心臓は怖くて調べないが、胃カメラとか腸の検査はしている。