「なぜですか?」と逆に聴き返されること | kyupinの日記 気が向けば更新

「なぜですか?」と逆に聴き返されること

患者さんに薬を併用しようとした時、「なぜですか?」と逆に聴き返されることがある。それも本人ではなく、付き添いの家族に。

僕はどうしても多剤併用になる傾向があり、患者さんを治療中、ある薬を加えれば、もっと良くなるかもしれないと思う事がある。そういう薬とは、例えばルーランとか、エビリファイとか、デパケンRやリボトリールなどである。

シンプルな処方は理想だが、たとえシンプルな処方でも最高形になっていないと意味がない。

ある時、ジプレキサで治療中にわずかにEPSが生じた。そのEPSは減量するかアキネトンを追加すれば軽減しそうなのだが、僕は無理な減量はろくな事がないし、本人のためにもならないと思うタイプなので、他の方法を考慮するのである。

精神疾患の向精神薬は、その人にとっての絶対値的適量が存在している。

エビリファイの3㎎の半錠を追加したら(1.5㎎)、そのEPSはみごとに消失した。これは薬理作用的に非常に理解できる。EPSはこの場合、ジプレキサによって出現しているわけで、もちろんドパミン遮断作用に伴うものだ。従って、その部分を少しマスクしてやれば、EPSは減少してもおかしくない。

エビリファイは極めてD2に親和性が強いため、ジプレキサを押しのけて結合し、結果的にジプレキサの毒消しになったのである。おまけに表情が明るくなるし、良いことばかりであった。この場合、エビリファイ単剤にしてしまうと、全く異なる治療展開になる。(将棋で言うと、それもまた1局というものであろう)ジプレキサをあくまでメインに使い、エビリファイを補助的に加えているのである。

エビリファイは単独で使うとEPSが出て困ることがあるくせに、他の薬を併せて処方すると、他の薬のEPSを隠すという面白い効果を持つ。

過去ログでも、これと同じような薬理作用について触れている。リスパダールで治療中に高プロラクチン血症が生じたとき、エビリファイを少量追加することで、高プロラクチン血症が改善するのである。これは上のジプレキサのEPSの消失と理屈は同じである。

問題は、こういう多剤併用について、家族からチャチャが入ること。彼らは実は、患者さん本人以上に薬を飲ませたがっていないのである。

つまり精神医療を、心をこめてまでは信用していないってわけだ。

参考
薬を増やしてほしくない父親
3人目の女性患者(その2)
2人目の女性患者
「2人目の女性患者」その不思議な経過
エビリファイとデパケンR。果たして1+1は2なのか?