不眠でうつ状態になるのか?
今回は、不眠とうつ状態およびニワトリとタマゴの話。
うつ状態になると、一般には不眠の症状が出現することが多い。そういう症状が出ない人ももちろんいるが。ここでは希死念慮が出る、不安・焦燥感が出るなどは考えないことにする。最初のポイントだけのシンプルな考察である。
一般的に言えば、短期的な不眠は「抗うつ的」に作用する。言い換えると、うつ状態に対し「治療的」なのである。その証拠に「断眠療法」という治療があるし、日常的にも徹夜をすると翌朝は妙に笑い声が出る。気分が浮かれ、うつ状態が軽減している。
これは学生の頃、徹夜マージャンをした時はそんな風な感じになっていたし、深夜明けの看護師さんに冗談を言うとよく笑ってくれる。これは気分がやや高揚しているのであろう。その原因は明らかに断眠である。
慢性疲労系のうつ状態ですら、ありえないことに徹夜をすると翌朝、倦怠感が軽減している。短期的にはこういう病態でも改善するのである。しかし、この断眠の効果は長くは続かず、数日経つとかえって全身の肉体的疲れから倦怠感が酷くなってしまう。だから、中期的には慢性疲労系の患者さんにはこの治療法はもちろん向かない。
ここで簡単にまとめると、全くの不眠(断眠)状態では抗うつ、賦活的な作用を脳に及ぼす。(しかし体力的には実は疲労困憊なのである)
統合失調症の人では病状がやや悪化し不眠が持続し始めると、次第に躁転ないし著しい興奮状態への歯車が回り始め、遂には入院せざるを得ない状況になりうる。だから、普段不眠がないような統合失調症の人たちは、不眠が出現し始めたら、かなり注意をしたい。これは本人はそこまで苦痛に感じていないこともあるので、家族が早めに主治医に相談するなどサポートも重要である。不眠は大きな病状変化に先行することが多い。
1つの謎は、うつ状態や統合失調症などの精神疾患を持たない一般人の不眠が、うつ状態やうつ病を発病させるかどうかであろう。
これには統計があり、ほぼ結論が出ている。
20歳代の不眠の人は3年間で一般の人に比べ4倍、うつ状態になりやすいと言われている。
学生時代に不眠症があった人は将来的に一般人の2倍の確率でうつ状態になりやすい。
また医学生のうち1000人程度の不眠のある人を長期調査したものがある。34年間追跡した結果、そのうち100人くらいがうつ状態を発病し、そのうち13人が自殺していたと言う。
などのことがわかっている。結局、不眠はうつ状態の「タマゴ」になりうるのである。
僕はここで少し疑問がある。この若い人たちの不眠だが、放置していた場合と、なにがしかベンゾジアゼピンなどの眠剤を服用し治療していた場合では、経過や結果が違うのであろうか?
もし、不眠が脳内の神経伝達に長期的に悪影響を及ぼし、うつ状態を発病させるとしたら、なんらかの治療を行っていた方が、うつ状態への移行が少なくなるような感じも個人的には少しだけする。
新患の人の病歴をとっている時、例えば診断がうつ病だったりすると、ずっと以前、20代の頃に不眠があり、近くの内科でハルシオンを貰っていたなんてことを聞く事がある。そういうのは珍しくはないんだな。
しかし、将来に起こるかどうかわからないものに対し、ひょっとしたら不必要かもしれない薬を飲み続けるのは現実的ではない。むしろ、「不眠を放置して、いつも不十分な睡眠状態でいるのは脳に対し良くはない」くらいは言えるような気がする。
不眠のために薬を平凡に飲むことは、将来的な大厄を避けることになるかもしれない。睡眠薬に偏見を持ち、不眠なのにそれを放置して毎日、不健康な状態で生活するのは、結局は人生の損失になるかもしれないのである。
そういう風に徒然なるままに思いを巡らせていくと、うつ病の人の早朝覚醒とエビリファイに行き着く。
一般に、特にうつ病になると、早朝覚醒が生じることが多い。もちろん過眠などの逆の状態になる人もいる。この早朝覚醒をどのように考えるかであろう。早朝覚醒が生じると言うことは、つまり睡眠時間が短くなることを意味している。これはある意味、セルフ・コーピング的だ。
なぜなら睡眠時間が減少するのは脳への賦活的な意味合いがあるから。これは本人がそうしているわけではないが、脳がそういう風に自己治癒しようとしている結果なのかもしれない。(かといって、早朝覚醒は本人には辛いものなので、普通は治療しているのだが・・)
また、エビリファイで不眠が酷くなり継続的に服用できない人もいるが、うつ病圏内でまあまあの効果で継続している人たちでは、エビリファイのために睡眠時間が短くなったと言う人がいる。しかも、その睡眠時間の短縮に対し、本人がほとんど苦痛を感じていないこともけっこうあり驚くことがある。
これは、エビリファイの及ぼす謎の抗うつ作用と無関係ではないのかもしれない。
また、統合失調症の人たちへのエビリファイの長期投与における最終的な敗北(つまり数ヵ月後のエビリファイ中止)はこのようなメカニズムも一枚噛んでるのかもしれないと思う。
統合失調症の人をエビリファイ単剤で治療すると、失敗例ではその中止のタイミングが2相性になっており、最初いきなり失敗するか、数ヶ月後、なんとなくまとまらなくなって中止するパターンがみられる。(僕の患者さんではエビリファイは単剤より2剤併用の人たちの方がずっと経過が良好である)
うつ状態になると、一般には不眠の症状が出現することが多い。そういう症状が出ない人ももちろんいるが。ここでは希死念慮が出る、不安・焦燥感が出るなどは考えないことにする。最初のポイントだけのシンプルな考察である。
一般的に言えば、短期的な不眠は「抗うつ的」に作用する。言い換えると、うつ状態に対し「治療的」なのである。その証拠に「断眠療法」という治療があるし、日常的にも徹夜をすると翌朝は妙に笑い声が出る。気分が浮かれ、うつ状態が軽減している。
これは学生の頃、徹夜マージャンをした時はそんな風な感じになっていたし、深夜明けの看護師さんに冗談を言うとよく笑ってくれる。これは気分がやや高揚しているのであろう。その原因は明らかに断眠である。
慢性疲労系のうつ状態ですら、ありえないことに徹夜をすると翌朝、倦怠感が軽減している。短期的にはこういう病態でも改善するのである。しかし、この断眠の効果は長くは続かず、数日経つとかえって全身の肉体的疲れから倦怠感が酷くなってしまう。だから、中期的には慢性疲労系の患者さんにはこの治療法はもちろん向かない。
ここで簡単にまとめると、全くの不眠(断眠)状態では抗うつ、賦活的な作用を脳に及ぼす。(しかし体力的には実は疲労困憊なのである)
統合失調症の人では病状がやや悪化し不眠が持続し始めると、次第に躁転ないし著しい興奮状態への歯車が回り始め、遂には入院せざるを得ない状況になりうる。だから、普段不眠がないような統合失調症の人たちは、不眠が出現し始めたら、かなり注意をしたい。これは本人はそこまで苦痛に感じていないこともあるので、家族が早めに主治医に相談するなどサポートも重要である。不眠は大きな病状変化に先行することが多い。
1つの謎は、うつ状態や統合失調症などの精神疾患を持たない一般人の不眠が、うつ状態やうつ病を発病させるかどうかであろう。
これには統計があり、ほぼ結論が出ている。
20歳代の不眠の人は3年間で一般の人に比べ4倍、うつ状態になりやすいと言われている。
学生時代に不眠症があった人は将来的に一般人の2倍の確率でうつ状態になりやすい。
また医学生のうち1000人程度の不眠のある人を長期調査したものがある。34年間追跡した結果、そのうち100人くらいがうつ状態を発病し、そのうち13人が自殺していたと言う。
などのことがわかっている。結局、不眠はうつ状態の「タマゴ」になりうるのである。
僕はここで少し疑問がある。この若い人たちの不眠だが、放置していた場合と、なにがしかベンゾジアゼピンなどの眠剤を服用し治療していた場合では、経過や結果が違うのであろうか?
もし、不眠が脳内の神経伝達に長期的に悪影響を及ぼし、うつ状態を発病させるとしたら、なんらかの治療を行っていた方が、うつ状態への移行が少なくなるような感じも個人的には少しだけする。
新患の人の病歴をとっている時、例えば診断がうつ病だったりすると、ずっと以前、20代の頃に不眠があり、近くの内科でハルシオンを貰っていたなんてことを聞く事がある。そういうのは珍しくはないんだな。
しかし、将来に起こるかどうかわからないものに対し、ひょっとしたら不必要かもしれない薬を飲み続けるのは現実的ではない。むしろ、「不眠を放置して、いつも不十分な睡眠状態でいるのは脳に対し良くはない」くらいは言えるような気がする。
不眠のために薬を平凡に飲むことは、将来的な大厄を避けることになるかもしれない。睡眠薬に偏見を持ち、不眠なのにそれを放置して毎日、不健康な状態で生活するのは、結局は人生の損失になるかもしれないのである。
そういう風に徒然なるままに思いを巡らせていくと、うつ病の人の早朝覚醒とエビリファイに行き着く。
一般に、特にうつ病になると、早朝覚醒が生じることが多い。もちろん過眠などの逆の状態になる人もいる。この早朝覚醒をどのように考えるかであろう。早朝覚醒が生じると言うことは、つまり睡眠時間が短くなることを意味している。これはある意味、セルフ・コーピング的だ。
なぜなら睡眠時間が減少するのは脳への賦活的な意味合いがあるから。これは本人がそうしているわけではないが、脳がそういう風に自己治癒しようとしている結果なのかもしれない。(かといって、早朝覚醒は本人には辛いものなので、普通は治療しているのだが・・)
また、エビリファイで不眠が酷くなり継続的に服用できない人もいるが、うつ病圏内でまあまあの効果で継続している人たちでは、エビリファイのために睡眠時間が短くなったと言う人がいる。しかも、その睡眠時間の短縮に対し、本人がほとんど苦痛を感じていないこともけっこうあり驚くことがある。
これは、エビリファイの及ぼす謎の抗うつ作用と無関係ではないのかもしれない。
また、統合失調症の人たちへのエビリファイの長期投与における最終的な敗北(つまり数ヵ月後のエビリファイ中止)はこのようなメカニズムも一枚噛んでるのかもしれないと思う。
統合失調症の人をエビリファイ単剤で治療すると、失敗例ではその中止のタイミングが2相性になっており、最初いきなり失敗するか、数ヶ月後、なんとなくまとまらなくなって中止するパターンがみられる。(僕の患者さんではエビリファイは単剤より2剤併用の人たちの方がずっと経過が良好である)