老人とリスパダール液 | kyupinの日記 気が向けば更新

老人とリスパダール液

今、診察に行っている病院で、ある老齢の女性患者さんにリスパダール液1.5mlが処方されていた。彼女は老人ホームに入所しており、軽度の知的発達障害があった。症状としては、

すぐに大声を出す。
人の言うことが気になる。
イライラしていることがある。
他人に干渉する。


などであり、これらに対しリスパダール液が処方されていると思われた。副作用としては、「口ジスキネジアの出ていること」くらいであったが、あるいは症状にいくらか影響しているかもしれないと思った。リスパダールでアカシジアなどがあると、このような落ち着きがない状態になることもあるから。だから、今の症状を総合すると、リスパダールを減量するか、あるいは思い切って中止し他の薬を使ってみる価値はある。

ところで、リスパダール1.5mlの評価であるが、これはリスパダール1.5mgに相当し、絶対値としては少量だが、この女性患者は統合失調症でもなんでもない上、知的発達障害もあるので、一概に少ないとは言えない。

特にリスパダールは抗精神病薬の中でもとりわけ力価の高い薬物なので、わりあい老人に使われているとは言え相性は良くない。老人に対するリスパダールの処方によるEPSから来る転倒、流嚥、ジスキネジアなどはザラにある。

一般に、抗精神病薬は統合失調症以外の人でしかも老齢の人には副作用が出やすい。それがたとえセロクエルであれ。特に知的発達障害の場合はなおさら出やすいと言えた。この女性患者の場合、現実にジスキネジアが出ていた。僕が引継ぎを受けた最初の日、カルテには「ツムラ71(四物湯)が良い可能性がある。」と書いている。しかし処方したのはルーランであった。

ルーラン4mg追加。

僕はリスパダールを減量することなく、ルーランを平凡に追加した。その結果だが、

変化がなく、大声もある。

その後、ルーランをそのままにしツムラ54(抑肝散)を5g追加しリスパダールを1mlに減量してみた。その後の経過であるが、どうも人の行動が気になるらしく、人に干渉するという。当時のカルテに、

①デパケンR
②セロクエル
③グラマリール
が良いかもしれない。


と書いている。ここで、思い切ってリスパダールを中止して

セロクエル  50mg
ルーラン   4mg
グラマリール  75mg
ツムラ54  5.0g


の処方にした。付き添いの施設の職員によれば、これで若干おとなしくなったという。全く、ふらつきはない。ただ朝は眠いと言う。いつのまにか口ジスキネジアは消失していた。ジスキネジアは慢性の副作用の中ではまだ治りやすい方に入る。セロクエルがこの量なら、この患者さんに限ればツムラ54は中止してもかまわないような気がした。ルーランは微妙だが、なんとなくセロクエルだけでよさそうに見えるので中止してみた。

セロクエル 75mg
グラマリール 75mg


この処方でも、やはり立ちくらみなどはない。症状としては良かったり悪かったりであるが、表情が穏やかになり、大声がほとんどなくなっているという。少し波はあり、干渉は時々する程度らしい。

この処方になってもう3ヶ月ほどだが、更に改善しており、今もジスキネジアはなく施設内適応も上々のようだ。この患者さんだが、決定的まではいかないけど、リスパダールが合わなかったのだと思う。たぶんこの患者さんの落ち着きのなさの一部はリスパダールが悪影響を及ぼしていたような気がしている。

まあ、もともと知的発達障害があったわけで、落ち着きがないからといって、元の症状ではないかと見過ごされやすい。僕はリスパダールはドグマチールと同じく、老人には長期には使わないことにしている。

参考
リスパダール
セロクエル