エビリファイの副作用(続き) | kyupinの日記 気が向けば更新

エビリファイの副作用(続き)

エビリファイ発売前の副作用の詳細であるが、アカシジア、ジスキネジア、ジストニアに限れば

○アカシジア    12.11
○ジスキネジア   2.15
○ジストニア    2.29  (%)


であったという。前の項で42000例に対しアカシジア83例というのはとてつもなく低い頻度で、僕がこの42000例というのはちょっとおかしいと書いた理由である。アカシジアは精神症状の悪化なのか、あるいは精神症状の悪化なのかわかりにくいこともあるので、この頻度は報告者により幅があるのではないかと思う。

僕はエビリファイは少量域で使うことも関係しているが、EPSは10人に1人も出現しないという感覚はある。

ちなみにジプレキサについては、
○アカシジア   11.9
○ジスキネジア   3.1
○ジストニア    3.3


ルーランについては、
○アカシジア   25.4
○ジスキネジア  2.8
○ジストニア   3.5


となっているが、エビリファイの副作用は概ねジプレキサと変わりがないのがわかる。

ところで、ルーランのアカシジア25.4%というのはたぶん八百長である。これは、ルーランはD2の親和性が強いのが周知されていたので、調査した精神科医が心眼で「これはアカシジア」と思ったのであろう。おそらく検査の前から、ルーランはそのような副作用は多いはずという先入観があった。その証拠に(ってほどはないけど)ジスキネジアやジストニアは一般に低い頻度なので、先入観の影響が薄まり低い値になっていて、エビリファイやジプレキサと同様な数値になっている。実際、臨床的にルーランはたぶん、エビリファイよりはアカシジアは出現しやすいと思うが、4人に1人はやりすぎだと思う。

昔、僕が研修医の頃、上の先生のお手伝いでよくP300の検査をしていた。その機械は、中は多分NECの汎用のパソコンくらいしか入ってなかったと思うが、医療器械なので800万とか900万の世界だった。調子が悪いとか、あるいは、使い方がわからない時にメーカーに言うと技術者が飛んできた。その技術者はまだ若者で僕とあまり年齢も違わなかったが、京都大学を卒業していた。つまり、これはサポート代も含めた金額なのであった。

だんだん話が横道に逸れていってしまったが、当時の論文をP300というものが出現した当時から読んでいくと、最初の頃は「統合失調症ではP300が小さい値になる」というものがわりあい多かった。実際は逆で、いかに検査自体が先入観に支配されやすいかがわかる。統合失調症では、感覚的には「超覚醒」なので、P300は小さくなりそうなのである。このようなことはたぶん医学以外の学問にもきっとあると思う。

エビリファイの前回の項で、自殺既遂が5名というものがある。この数が多いか少ないかは分母が確定しないので議論できないが、なんとなくこれは理解できる。

エビリファイの悪化のパターンで良くないと思うのは、焦燥感や賦活がごった煮になった亜昏迷に至ることがあること。亜昏迷は非常に危ない状況であり、こんな時に自殺などが生じる。昏迷とは自発的な身体的・精神的表出を欠いた状態をいう。無言、緘黙、無動・無表情であり、時にカタレプシーを伴うが、意識障害ではない。これの量的な面で少ないものが亜昏迷なのである。

専門家以外の人々には、このような昏迷に準じた病態で、殺人事件や自殺、あるいは拡大自殺が起こることはおそらく理解しにくいと思われる。なぜなら、書物には、昏迷状態ではほとんど動けないようなイメージを起こさせるようにしか説明がされていないからだ。しかし精神科医には理解できる。

緊張病性昏迷は緊張病性興奮と表裏の関係になっており、亜昏迷にしても、緊張病性興奮の要素が内在しているのである。亜昏迷の方がまだ体が動くので、昏迷より軽いぶんだけ更に危ない。殺人事件などの精神鑑定の際に亜昏迷状態で殺人事件が生じたという文脈になることがあるが、こんな風に説明して、果たして裁判官はわかってくれるのだろうか?といつも思っている。

特記:
拡大自殺は例えば産褥期精神病(特にうつ状態)で母親が自殺しようと思い、自分が死ぬなら子供が困ると思ってまず子供を殺害することを言う。その後の母親の自殺は未遂に終わり裁判になることが多い(と思う)。

参考
エビリファイの副作用
ジプレキサ
ルーラン