リタリン
一般名;塩酸メチルフェニデート
リタリンは抗うつ剤ではなく、中枢刺激薬あるいは交感神経作用薬のカテゴリーに入る。ノバルティスが販売しているが、全国の売り上げはかなり小さいと思われる。剤型は10mgと細粒がある。用量については1日60mgまでの範囲で処方されるが、上限は疾患により異なる。
効能・効果は、
①ナルコレプシー
②抗うつ剤で効果の不十分な難治性うつ病、遷延性うつ病に対する抗うつ剤との併用
(他、注意欠陥多動性障害(ADHD)の児童にも処方されている。)
となっている。処方量については、ナルコレプシーに対しては1日20~60mg、難治性あるいは遷延性うつ病に対しては20~30mgとされており、ナルコレプシーの方が多くの量を処方できる。ナルコレプシーは極めて珍しい疾患なので、実質的には注意欠陥多動性障害と難治性うつ病に対しての処方がまだ見られるといったところであろう。構造式的にはリタリンはアンフェタミン(覚醒剤)に類似している。リタリンは服薬後消化管からの吸収は良好で、1~2時間で血中濃度はピークに達する。血中半減期は2~3時間と短いため、本来1日に数回の服用を要すが、夕方服用すると不眠になるため、1日朝1回か朝と昼の2回の処方で行われることが多い。リタリンの代謝は肝臓で行われる。リタリンのような交感神経作用薬は、間接的にカテコールアミン刺激作用を持つ。その結果、脳のいくつかの領域(特に上行性網様体賦活系)が刺激され、多幸感が誘導される。これら交感神経刺激作用、多幸感は時間とともに耐性を生じるが、不思議なことに注意欠陥多動性障害の患者にはその効果の耐性は生じない。臨床的には、難治性あるいは遷延性うつ病の患者さんにリタリンを投与した場合、多幸感のようなものを感じたという訴えをあまり聞いたことがない。それほどまでに病状が重いのであろう。しかし、うつ病の患者さんにリタリンを処方した場合は、急速に耐性が生じるといわれる。ナルコレプシーに関しても、リタリンは治療効果に対し耐性がみられるらしい。
このリタリンについて書きながら、いったい現在リタリンを何人に対し処方しているか数えてみた。外来で3名と入院1名の4名だった。外来のうち1名はうちに来る前から既に他病院の処方で服用していた。ナルコレプシーと注意欠陥多動性障害は現在治療していないので、すべて難治性のうつ病の患者さんになる。僕の考え方なのだが、リタリンを処方しようかと思った時点で、相当に治療がうまく行っていないのではないかと。外来の3名のうち2名はECT(電撃療法)も過去に実施している。しかし、現在は長期に継続しているので、耐性を考慮すれば今やどのくらい治療状態に貢献しているか謎だ。少なくとも、今の処方している患者さんは、量がどんどん増えていくとか、心理的に依存して継続を希望しているとかは全くない。継続は僕の判断による。
一部の精神科医に、すぐにリタリンを処方してしまう人がいる。眠さがひどいタイプのうつ病に使うとかいうある意味、合理的な理由もあるようであるが、いったん処方すると中止し辛いので、できれば3環系抗うつ剤や補助療法(甲状腺剤など)ECTなどの併用で頑張るべきだと思う。だいたい旧来の抗うつ剤をいろいろ処方してみてコントロールできないケースの方が珍しい。努力しないですぐにリタリンを処方すると、まあとりあえず元気になるけど、から元気を出し続けているような感じで、あまり治療状態も良くはないし、結果的にかなりの持ち患者にリタリンを処方してしまうことになる。「いろいろ病院に行ったけど、あそこで初めて良くなった」とか見当はずれに患者に喜ばれるだけだ。僕は他病院に紹介状を書くとき、リタリンを処方している患者だと少し恥ずかしい気持ちになる。(この程度の患者にリタリンまで処方しているのかなどと思われそうでw) リタリンに関しては僕はそんな感覚を持っているのだ。そんな風に書いているが、副作用的にも依存的にもリタリンで非常に困った事態になったことは今まで一度もない。僕はリタリンについては、その悪影響についてあまりに過大評価されているようにも思う。
リタリンの有害作用であるが、不安感、過敏性、不眠、身体違和感などが認められる。また食欲抑制作用がみられるが、これも耐性が生じやすい。交感神経作用薬なので、心拍数増加、血圧上昇、動悸がみられる。子供の場合、一過性に成長抑制が見られることがある。高用量では、口渇、瞳孔散大、歯ぎしり、感情不安定などが生じうる。これが長期間続くと、妄想が出現し、統合失調症に類似した病態を呈することがある。他、補足として、リタリンは母乳中に分泌されると言われている。