◆中高一貫校で中3の5月に突然の不登校(前編)
こんにちは、東ちひろです。
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は、カウンセラー養成講座受講生さんの体験談を2回にわたってお届けします。
「二度の不登校を経て、急がずに歩くことを選んだ親子の話」
(前編)「中高一貫校、中3の5月に突然の不登校」

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☆お母さんのプロフィール
二人きょうだいのお母さん。
現在高校1年生の長女さんは、中学3年生の5月から不登校に。
子育て心理学カウンセラー養成講座を受講したのは、お嬢さんが高校1年生の頃。
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◆突然の不登校
ある日、いつものように中学校へ行った娘が、ほどなくして戻ってきました。
「足が痛い。それに、ちょっと忘れ物しちゃった」
なんだか腑に落ちない理由です。
――それくらいなら、遅れてもいいから学校に行ったら?
そんな気持ちが頭をよぎりました。
しかし娘はそのまま学校を休み、次の日も、またその次の日も、学校へ行こうとはしなかったのです。
「今日は行けるかな」というわたしの願いをよそに、気がつけば一週間。
理由がはっきりわからないまま、娘の時間だけが止まってしまったように見えました。
◆進路への不安
「中間テストを受けさせてください」
テストを目前に控えたある日、担任の先生からお電話がありました。
娘の通う中学校は、中高一貫教育の付属校。
ちょうどその時期――中学3年の1学期の成績が、高校進学にあたって考査の基準になる、というのです。
学校に行けなくなっただけでも不安なのに、このままでは付属高校へ進めないかもしれない。
あまりにも突然で受け入れがたい事実に、頭が追いつきません。
焦ったわたしは、娘を説得しようと試みました。
「こんなことで、いきなり付属高校への道を閉ざされるのは、ちょっとないんじゃないかな」
その瞬間。
娘は耳を塞ぐようにして「きゃあ」と声をあげ、頭を抱えこんでしまったのです。
明らかに、いつもの娘ではありません。
強い不安に飲み込まれたように体を丸めて震えています。
呼吸も浅く、苦しそう。まるで酸素を求めるかのように、ベランダへ這い出ていく娘……。
この子の中で、わたしの想像を超える何かが起きている。
言葉にできない不安が、胸の奥で静かに広がっていきました。
◆告白
それからは登校をうながすことさえためらわれ、何もできないまま、時間ばかりが過ぎていきました。
「ドライブでも行こうか」
ある日、気分転換になればと、暗い表情で過ごしていた娘を外に連れ出しました。
夜景を見ながら2時間ほど経った頃。
娘がぽつりと言ったのです。
「高校を受験したい。今の学校には行きたくない」
娘が通っていた学校は、よくも悪くも進学校でした。
3年生になってまだ1か月半なのに、すでに2度も東大に進学した卒業生の講演があり、「ガリ勉して合格した話」を何度も聞いたそうです。
真面目すぎるほど真面目な娘。
このままここにいたら、中学でも高校でも「いい大学」を目指して走り続けなければならない――そんなふうに感じてしまったのだと思います。
「受験したい」という言葉はきっと、勇気をふりしぼって口にしたはず。
これは否定してはいけないと、直感的に感じました。
「わかった。否定はしないよ」
前置きをしてから、続けました。
「ただ、もう何日も学校に行ってないよね。受験するにしても、内申点が必要になると思うよ。
一度、冷静に整理した方がいいし、いきなり付属校への進学の権利を手放すのは、リスキーだと思う。
だから少し落ち着いて考えよう」
否定はしませんでした。
けれど、娘の思いをそのまま受け止めたわけでもありません。
あのときのわたしには、それが精一杯の返答でした。
◆中間テスト
「わかった。中間テストはがんばって受ける。勉強はしていないけど」
娘はわたしの言葉を受け入れて、学校へ向かいました。
ところが――
2日目に帰宅した途端、熱を出してしまったのです。
無意識の防衛本能みたいなものなのでしょうか。
副鼻腔炎も併発し、3 日目のテストは受けられませんでした。
その後、1日登校して、次は4、5日続けて休む。
そんな状態が続きました。
今になってふり返ると、あの頃の娘は、まるで燃え尽きる直前の線香花火のようでした。
もう限界だと思った翌日にふっと持ち直し、休んでいた日に行われた体育のテストをひとりで受けに行ったこともありました。
塾からいつもより遅く帰ってきた日には
「先生と話して盛り上がっちゃった」
と、妙に明るい声で話してきたこともあります。
あまり見ないテンションにどこか違和感をおぼえたこの日の翌日から、娘はピタッと学校に行かなくなりました。
5月の末のことでした。
◆葛藤
もう無理はさせられない。
娘が押し殺してきた苦しさが、そばにいるわたしにもひしひしと伝わってきました。
朝起きられず、気力も感じられません。
怒られるのではないか、否定されるのではないか。
そんな恐怖を抱えているのか、張りつめた緊張感が全身ににじんでいました。
これは、どうしたらいいのだろう。
“不登校”には、どう向き合うのが正解なのだろう。
日常は、あまりにも突然に変わってしまいました。
高校受験という選択肢も、それまでは考えたこともありません。
様々な問題が一挙に押し寄せてきたようなプレッシャーに、息が詰まりそうでした。
本当に、どうしたらいいんだろう。
わたし自身も、かなり追い込まれていました。
それでも、娘には下手なことを言ってはいけない――
そのことだけは、感覚的にわかりました。
娘はほとんど話をしません。
ただ、食事はとっていましたし、朝も顔を見せてはくれます。
一日の多くを静かに部屋で過ごす。
そんな日常が、淡々と過ぎていきました。

ーーーーーここまで
続きは明日の配信をお楽しみに。
東ちひろ
(公認心理師、スクールカウンセラー)
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