Kは車のアクセルを踏んだ。

そして僕たちは高速道路に入る。

夏の青空と白い雲、鮮やかな木々の緑、そしてKとの空間…それらは僕の心を癒してくれた。

僕が暫くKが言ったことを一つ一つ振り返っていると、またKが口を開いた。

 

「他人は人にあれこれ言える。自分のことじゃないからな。でも人の意見は第三者の立場から考えたことで、或る意味冷静で正しかったりする。全部じゃないけどな。言われている本人は、何にも知らないくせにって思うんだよ。でも俺はさっき言ったように自分を取り巻く全ては何かしらの意味があり、何かのヒントがあると思っている」

 

「でもそうやって生きていると僕は混乱しそうな気がする。何かを選択するときに考えすぎて深みにはまってしまいそうだ」

 

「心の声を聞けばいい。選択するのに深く考える必要はない。あとで考えればいい。心の声を聞くことは大体において正しい方向に導いてくれる。極端な話しだけど生まれつきひねくれているやつなんていない。誰しも心の奥底には澄んだ清いものがある。どんな悪人でもだ。悪人たちはそれに蓋をしてしまっているだけだ。でも心の奥底には正しいことそうでないことは分かっているはずだ。本能だけで生きている赤ん坊のうちから巨大な集団の中で洗脳されて育っている場合は除いてだけどな。心が正しい方向にいくと選択する方向もおのずと正しい方向になる。どんな状況でも心の声を聞くことが大事だ」

 

僕は目の前に広がる景色を見つめていた。

 

「お前の心には迷いがあるだけだ。本当はお前は俺が言わんとすることを分かってるんだろ?」

 

「分かると言えば分かる。分からないと言えば分からない」

 

と僕は言った。

 

暫くの沈黙があった。

 

「どっちでもいいさ。でも俺はどうでもいいやつにはこういうことは話さない。つまり俺にとってお前は大事な存在だからな。とにかくちゃんと考えるんだ」

 

そしてKは続けてこう言った。

 

「俺はいろいろ失った。そして俺もいろいろ考えた」

 

そう言ったKの表情は遠くの何かを、誰かを思っているようだった。

 

「K…何があった?」

 

と僕が聞くと、

 

「俺のことはいい。終わったことだ。問題はお前だよ」

 

と言って微笑んだ。

さっきまでの真剣な表情は消え失せていた。

その微笑みは青年時代だった頃のKを思い出せた。

僕は懐かしさとともに何故かKの美しさに見惚れてしまった。

僕はKに起こった何かに対してはそれ以上何も聞かなかった。

昨日の後輩も同じことを言っていたことを思い出した。

 

必要なこと…。