なぜ聞かなかったんだろうと僕は心の中で考えていた。

 

Kの運転するするドライブはとても心地が良かった。

ブレーキの踏み方もとてもスムーズだった。

全く違和感なく静かに綺麗に停車して発車も流れるようだった。

僕が何か考えていることをKは分かっていたのか、僕の思考の邪魔をせず黙って静かに運転してくれていた。

僕らはそのままいきあたりばったりのドライブをした。

結局、美味しいパン屋を見つけることはできず、美味しいコーヒーも飲むことができなかった。

お洒落なコーヒー屋はあったけれど豆だけしか売っていなかった。

適当なレストランへ入って大して美味しくもないアジアン料理を食べた。

Kはそれも旅の醍醐味の一つだと言って笑っていた。

その後、海岸周辺をふらついてみたり、本屋に行ってみたりと目的のない時間を過ごした。

 

帰りの車の中で毎年夏に彼女と子どもと一緒に山の上のパン屋に行ったことをふと思い出していた。

そこで僕と子どもが一緒にパンを食べている姿を彼女は写真に撮った。

その写真の中の僕を見て彼女は言った。

 

「寂しそうな顔をしてる」

 

と。

 

Kが口を開いた。

 

「お前は彼女のことをまだ愛している。そして戻れるならもう一度やり直したいと思っている」

 

「そうだと思う」

 

「だと思う・・・か。なんだかはっきりしないな。ま、本当のところはお前にしか分からない。俺はお前じゃないからな。でも本当に彼女と寄りを戻したいのならしっかり考えるんだな。人生に必要な存在なんてそうそう巡り会うことじゃない。いろいろなことが偶然に重なりあって人は巡り会う。お前と俺もそうだ。俺たちは何気なく生活しているが、俺たちを取り巻く環境にはいろいろな情報が与えられていて、そのどれかを俺たちは無意識のうちに選択し行動している。その中で俺たちは他人と知り合う。これから先も同じだ。一つでも違う選択をしていたら、きっとその出会いはない。彼女と巡り会ったことも、俺たちが巡り会ったことも。もし別の選択をしていた場合は、また別の人たちとの巡り会いがある」

 

Kがそんな話をするとは意外だった。

でもKの表情は真剣だった。

 

「何とも言えないが・・・いずれにせよお前には必要なことだったんだよ」

 

「必要なこと?」

 

「必要なことだ」

 

とKは言った。