ハルは簡単な自己紹介を終えると、カイトの陰にさっと隠れようとする。無論、いろいろなところがはみ出しているのだが。

「ハルさん、情報技術班なんですね。オレは生態調査班で、タクトって言います。こっちは生物研究班で、名前はガク。オレの弟です」

タクトがすらすらと自己紹介するのを、ハルは半ば隠れたまま聞いている。話を一通り聞いても、口を開く様子はない。

「あの、えっと……。よろしくお願いします」

「よろしくね、ハルさん」

タクトとガクが頭を下げると、ほんのわずかに会釈した。無言のままだ。

 

「こいつは超絶人見知りだからしばらくしゃべることはないだろう、気にするな。ま、仕事だけはできる奴なんだが」

カイトは冷淡に言い捨てた。

「さて、行くぞ。とりあえず、そこの木で実演しよう」

カイトは駐車場そばの木を指さした。

「おがぐずが落ちている場所を探すんだ。ここだな」

カイトが言うと、小さなおがくずが落ちている地面のそばを入念に確かめる。

「あったぞ」

カイトが示した先の木の幹に、小さな穴があった。ここが幼虫のいる場所ということらしい。

 

「まずは少し表面を削る」

ハルがポケットから小刀を取り出し、器用に穴のそばを削って入り口を広げた。

「そろそろいいだろう。ここから薬剤を注入する」

そう言ってカイトが細い銃の先を差し入れた。スイッチを押すとギュンという音とともに薬剤が注射されたらしく、余った薬剤がポタポタと入り口からこぼれ落ちる。

「これ、木が枯れちゃわない?他の虫は大丈夫なの?」

ガクが不思議そうに言う。

「木へのダメージは少ない。むしろ、放置したらカミキリムシが木を枯らすからな。まあ、他の虫がやられる可能性はあるが、そこまで強い薬じゃない」

「ふーん……」

カイトの説明に、ガクは分かったような分からないような顔をして首を傾けている。

 

「そういえば、アヤ姉は?」

「アヤコか。あいつはここの工事会社の人間を手当てしている」

「へええ?」

カイトの言葉に、ガクは素っ頓狂な声を上げた。

「なんでわざわざアヤ姉が?工事中の怪我くらい、現場の人が何とかすればいいでしょ」

「そうもいかない。簡単な打撲程度なら仲間内だけで対処できるだろうが。今回は例のカミキリムシが相手だからな」

「はあー?」

「だから駆除するんだ」

 

 

 

 

 

〈おまけ〉

カミキリムシの幼虫の駆除は、実際におこなわれています。果物の木などにカミキリムシがつくと、最悪枯れることもあるので早めの駆除が必要なんだとか。

 

幼虫のいる場所は、おがくずが落ちていることでわかるそうです。よく見ると、幼虫のすむ穴が見つかります。そこに薬を注入して殺すのですね。市販のスプレータイプの殺虫剤が売られているみたいですが、それだと地味なので銃の形を考えました。形は、水鉄砲に近いイメージです。

 

 

スプレータイプのものは、実際に検索すると出てきますよ。農家の人が買うのでしょうね。

 

ちなみに、カミキリムシの幼虫はテッポウムシと呼ばれます。食べられるのだとか。おいしいそうです。昆虫食に興味があるので、いつか食べてみたいですね。

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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