ダヴィド・ベン=グリオン
(1886〜1973)
・イスラエル建国の父。
・初代首相。
・英雄。
ここまでは、広く知られた話です。
でも、私が心を打たれたのは、
その後の人生でした。
政界を引退したベングリオンは、
権力や名誉にしがみつくことなく、
ネゲヴ砂漠にあるキブツへ移り住みます。
(※キブツとは イスラエルで発展した、農業を中心とする共同生活・共同所有の集団居住コミュニティ。メンバーは財産や収入を共有し、民主的な運営のもとで生活・労働・教育・福祉を共同で行う)
そして、一人の国民として、
砂漠の開拓の現場に身を置いたのです。
ネゲヴ砂漠に今も残るベングリオンの家は、
決して豪邸ではありませんでした。
▲必要なモノだけが置いてある、簡素なキッチン
▼その様子もっと詳しくは、コチラの過去ブログをご覧ください。
そこで送っていた暮らしは、
「徹底して質素で、ストイックな一労働者としての生活」でした。
ベングリオンは、キブツの若者たちに、
「ネゲヴ砂漠を開拓し、そこに何百万人ものユダヤ人が暮らせる国をつくりたい」
という夢を語ります。
そして、
「私を元首相として特別扱いしないでほしい。一人の一般人として扱ってほしい」
と強く望みました。
しかし当時のネゲヴ砂漠は、
誰が見ても不毛の地。
水もない。
緑もない。
農業など夢物語でした。
キブツの若者たちも、
「70歳近い元首相が羊を追うなんて、足手まといになるだけだ」
「政治的なパフォーマンスに利用されたくない」
と、冷ややかな目で見ていたそうです。
それでも、
70歳を超えたベングリオンは、
砂漠の強い日差しの中で泥にまみれ、
若者たちと同じように働き続けました。
その姿は、
少しずつ彼らの心を動かしていきます。
一日の労働が終わると、若者たちは
ベングリオンの小さな家に集まりました。
書斎に並ぶ約5,000冊の本に囲まれながら、
世界の歴史や哲学、
そしてユダヤ民族の未来について語り合ったそうです。
私が心を打たれたのは、
首相だったことではありません。
首相を辞めた後も、
一人の国民として、
国の未来に人生を捧げたことでした。
私は、
この姿こそ、「愛国心」
と、呼ぶのかもしれないと感じました。
ベングリオンには、こんな言葉があります。
「科学と人間の意志があれば、砂漠は花開く。」
「もしイスラエルが砂漠を征服できなければ、砂漠がイスラエルを飲み込むだろう。」
彼は、その言葉を語るだけではありませんでした。
自ら砂漠へ移り住み、
人生そのもので、
その信念を示し続けたのです。
そして今、
彼の夢は確かに花開いています。
彼が暮らした砂漠には、
緑の畑が広がり、
世界最先端の農業技術が生まれ、
若者が集うベン=グリオン大学が建ち、
新しい都市が育っています。
バスの窓から見えた緑は、
単なる農業技術の成果ではありませんでした。
一人の人間が、
砂漠の向こうに未来を見続けた結果だったのです。
その風景を眺めながら、
私はこんなことを考えました。
豊かな未来は、
恵まれた環境から生まれるとは限らない。
誰もが「無理だ」と思う場所にも、
未来を信じる人がいる。
そして、
その未来のために、
今日を生きる人がいる。
イスラエルの砂漠で見た緑は、
そんな「意志」が形になった風景でした。
未来は、
予測するものではなく、
創るもの。
ベングリオンは、それを
人生そのもので
教えてくれたように思います。






