牛ガエル | もうすこし、生きてみようじゃないか・・・

 人間誰しも不思議な経験のひとつやふたつはしているのではないだろうか。


それは、気が狂うほどの恐ろしい不思議霊体験というものではなく、膨大な日


常の時間の中の一瞬、あれってなんだったんだろう、と、ふと、思い出すような


ことだ。 


 僕にも、そんな不思議な体験がいくつかあるのだが、今から書く話は、まさに


今でも、あれはなんだったんだろう、と、ふと、思い出す出来事である。
 
 



 小学校の低学年だった頃。 夏であった。 僕は近所の一つ年上の友達と毎


日のように遊んでいて、その日も誘い合って近所の川にザリガニ取りに行った。
 
 
 



 今のようにテレビゲームなどがない時代。 遊びといえば、とりあえず外。 夏


は、ほぼ毎日川へ行き、ザリガニやフナを取ったり泳いだりしていた。


 容赦なく照りつける日差しと、むせるような草の匂いの中、僕たちは水面や茂


みを注意深く見つめながら川伝いに歩いていた。 すでにバケツには数匹のザ


リガニが入っている。
 
 



 しばらくすると、茂みに何やらもぞもぞと動くものがいるのを目の端で捉えた。


見ると、かなり大きな牛ガエルであった。
 
 
 



 僕が興奮し、牛ガエルや! と、友達に叫ぶと、友達もその大きさに興奮し、


おお! と、驚嘆の声を上げる。 僕はさっそく捕まえようと網を構えた。 する


と友達は、何を思ったのか、おそらく興奮しすぎたのだろう、突然足元にあった


石を拾い上げ、牛ガエルめがけて力いっぱい投げつけたのである。 石は一


直線に飛び、牛ガエルの顔面に直撃し、グチャっという音がした。 しかし、次


の瞬間、僕と友達は短い叫び声をあげた。
 
 
 



 目の前に頭が吹き飛んだ牛ガエルがいるのだが、なんとその牛ガエルが泥


でできているのである。 石で顔は潰れてしまっているが、そのほかの足など


は牛ガエルそのもの。 だが泥なのだ。 先ほどまで生きた牛ガエルだったのに


石が当たった瞬間、泥になったのである。


 何が何だかわからない。 僕たちはその場に立ち尽くし、しばらく泥になった


牛ガエルを見つめていた。
 
 



 あれはなんだったのか。 今でも頭が吹き飛んだ泥ガエルの姿をはっきりと覚


えている。 友達とは、学年が上がるにつれ、それぞれ同い年の友達と遊ぶよう


になり、今となってはどこで何をしているのかもわからないが、おそらくあの時の


ことは覚えているのではないだろうか。


 本当に不思議で、不気味で、ちょっとワクワクするような出来事であった。
 
 
 
 
 
亀久
 
 
 
 
 
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