
小学校の通学路そばにある
城山の森にはこんな昔話があるんだよ
僕は娘に語り始めた
今から100年ほど前のこと
二丈町の深江にオキしゃんと呼ばれる産婆さんが住んでいた
ある冬の寒い夜のこと
オキしゃんの家の木戸を誰かが叩く音がする
トントントン トントントン
いったい誰だろうとオキしゃんが戸をあけると
見知らぬ若い男が立っていた
「妻が子どもが生まれそうなんですが
苦しんでいます 助けていただけませんか」と男が言う
この辺では見かけない男だったので不審に思ったが
人助けだと思いオキしゃんは道具を風呂敷に包んで家を出た
空に三日月が出ていた
野道を男は飛ぶように急ぎ足で歩いていく
オキしゃんは息を切らしながら後をついていく
坂を登り木々が生い茂る森のなかに小さな一軒家があった
家のなかに入ると
色白の妻がうめき声をあげて身体をねじらせている
こんなに苦しんでいるのを見るのはオキしゃんも初めてだ
すると男がオキしゃんの背後から不思議な事を言う
「お産婆さん 私の言う通りに妻の処置をしてください」
おかしいとは思ったが
指示どうりにやると無事に可愛らしい男の子が生まれた
男は大変な喜びようでこう言った
「お産婆さん ありがとうございます
ほんとうに助かりました お礼に祝いの食事を
ご用意いたしました お召しあがりください」
オキしゃんが男の後ろに目をやると
豪華なご馳走と酒が用意されていた
今まで飲んだことのないほど美味い酒と食べ物
酔いがまわり いつの間にかオキしゃんは眠ってしまいました
「おお 寒い」 オキしゃんは目を覚ますと
薄っすらと明るくなってきています
夜が明けようとしていました
オキしゃんはびっくりしました
なぜなら
オキしゃんは森のなかで寝ていたからです
まわりには食べかけのご馳走と酒が転がっているが
お皿は葉っぱに変わっていたのです
「ここは城山だったのだ」
オキしゃんは言葉を放つと昔からの言い伝えを思い出した
城山の森には 昔からキツネが住んでいて
よく人がだまされる 夜になるとキツネ火もでるから
近づかないほうが良いと言われていたのでした
オキしゃんは慌てて走りだして深江の家へと帰っていった
それから3日間 オキしゃんは熱を出して寝込んだそうだ
娘はじっと僕の話を聞いてくれた
一貴山小学校そばの城山の森の昔話
参考文献
「糸島伝説集」糸島新聞社刊