王清任-Wang Qin Ren(1768-1831)は、武道家であり、外科、鍼灸、薬草学に精通していた清代の名医。医林改錯(いリんかいさく)の著者で、絡脈の授業で紹介されましたが、なかなか印象深い方でした。
死体解剖を数多く行った彼は、臨床における解剖学の重要さを提唱。
清時代に西洋から伝わっていた解剖学書を数多く訂正した程。
“体の臓器に関する知識無く治療を行うのは、盲目に暗闇を歩くのと同じ”
と痛烈に批判。
王清任の貢献:
* 脾臓は膵臓のとなりにあることを発見
* 心臓と脳の関わり。
* 大動脈-酸素を多く含む赤い血
* 大静脈-酸素の少ない青みがかって見える血は衝脈に関連
* 赤い血は心(しん・Heart)の陽・火に関連
* 暗い血は腎の陰・寒に関連
* 横隔膜の機能について、または横隔膜の機能異常による気滞・瘀血の病因・病機について解明
彼は、すべての病の根源は血にあると説き、様々な活血法を考案しました。
血府(Xu Fu)は、Blood Mansionと呼ばれ胸部、特に肺と心に関連しています。この部分の血液循環に問題が生じると、血の成分自体が重くなり重力を伴なって、横隔膜、下腹部へとずんずん沈んでゆきます。そして、下腹部で起こる血の停滞は、頭部にある脳の中にまで影響していると説明。
下腹部にある腎の陽気が遮断されて起こる、心拍停止や脳卒中、瘀血(Blood Stasis)が原因の痴呆症、頭痛、アルツハイマー、膀胱炎、前立腺肥大、生理痛、子宮筋腫などは密接に循環器系と脳に関連しています。
なんとなく、頭がぼーっとするという状態が続いている人は、
前述した症状を伴なっていないかチェックしてくださいね!
王清任の中医学的にみた心臓と経絡の関わりをご紹介します。
左は陽(Yang)の部分で、血液を心臓から身体全体へ押し出す働き
左心房:小陽(Shao Yang)の胆・GBと三焦TE
症状:胸部の胸痛と不快感
治療:胸部の経穴にGB23輒筋(ちょうきん),GB24日月(じつげつ),GB22淵腋
(えんえき)とCV17膻中(だんちゅう)
虚症の場合:GB41足臨泣(あしりんきゅう)とTE3中渚(ちゅうしょ)
実症の場合:絡穴のGB37光明(こうめい)とTH5外関(がいかん)を刺絡
左心室:太陽(Tai Yang)の膀胱・BLと小腸・SI
症状:血圧の問題、Systolic issues 収縮期高血圧(症): 膀胱・BL、
Diastolic issues 拡張期血圧が90以上: 小腸・SI
(僧帽弁の問題は、小陽と太陽間の交信問題による可能性があります。)
通常、身体は血圧上昇による心臓への負担を排尿によって緩和しています。
治療:
収縮期高血圧(症)の場合:BL41附分(ふぶん)-左心室の調整を助ける働きがあります。
拡張期の問題:CV13上脘(じょうかん)/CV12中脘(ちゅうかん)
虚症の場合:BL65束骨(そっこつ)・SI3后溪 (こうけい)
実症場合:心火が小腸から膀胱へ影響し、膀胱炎になった場合、BL58飛揚
(ひよう)とSI7支正(しせい)を刺絡
右は陰(Yin)の部分で、大静脈と関連し、身体で使われた血液を回収する働き
右心房:小陰(Shao Yin)の腎と心
症状:不整脈、心房細動Atrial Fibrillation:腎と心の交信不和によっておこるとも考えられています。
治療:胸部の経穴:HT1極泉(きょくせん)・KI27兪府(ゆふ)
虚症の場合:KI3太谿(たいけい)とHT7神門(しんもん)にお灸
実症の場合:頻脈, 心悸しんき高進の場合、HT5通里(つうり)とKI4大鐘(だいしょう)を刺絡
右心室:太陰(Tai Yin)の脾と肺
症状:心臓発作、呼吸困難
治療:右心室に関連した呼吸困難
胸部の経穴:LU1中府(ちゅうふ)、LU2云門(うんもん)、
SP21大包(だいほう)
虚症の場合:SP3太白(たいはく)とLU9太淵(たいえん)
実症の場合:SP4公孫(こうそん)とLU7列缺(れっけつ)を刺絡
心臓疾患も、心臓を4つの部屋に分類して症状別にしてみると、心臓だけの問題ではないことがよく分かりますね。 中医学は予防医学! 身体からのサインを見逃さず、早期発見、早期治療に取り組んでいきましょう。
次回は、王清任の末梢循環と体循環の絡脈治療についてお知らせします!
