心理カウンセラー・公認心理師の栗林あや(いがぐりこ)です。
今日はちょっと胸にたまってたモヤモヤの話。
最近よく、SNSやネット記事などで
「自分を大切にしましょう」とか
「そこから抜け出すと決めましょう」
っていうようなアドバイスを目にします。
(私も言っちゃうことがある)
発信しているのは、専門家だったり、コンサルだったり、時にはAIだったり。
言っていることは理にかなっていて、たしかに正論。
でも、それを読んでて、私、すごいモヤッとすることがある。![]()
![]()
それは、渦中にいる人間からすると、
「それができたら苦労しねぇYO!!![]()
」
っていう本音があるから。
たとえば私自身、田舎の漁村で、長男の嫁として同居生活を送っています。
舅は脳梗塞の後遺症で半身麻痺があって、日中は舅と私しか家にいない。
舅が居間に出てくれば、
嫁の私が「お義父さん、何か飲みますか?」って声をかけ、
お茶やコーヒーを用意するのが「嫁として当たり前」。
そんな毎日を送っています。
「風土」や家の中の「空気」ってすごく根強くて、
誰も明言しないのに、「気づいた人(=嫁)が動くべき」みたいなルールが、地域ぐるみでずっと続いてたりする。
で、あるとき、ちょっと疲れて、
「なんで私だけがいつもやってるんだろう![]()
」って
息詰まっちゃったことがあります。
思い切って、意図的に、
舅が居間に来ても、知らないふりをしてみました。
すると舅はぶっきらぼうに「コーヒー!」とだけ言う。
周りには私以外、誰もいないから、結局は私が立ち上がる。
この「嫁だからやって当然」という空気の中で私が感じていたのは、
「嫁だからって理由で便利に使われるしんどさ」と、
でも「嫁だからやらなければいけない」っていう罪悪感の板挟みでした。
長年しみついた家族内の役割分担とか、地域の慣習、親族の力関係…。
そこには、それぞれの生活の歴史が重なった、複雑な背景があります。
表面だけ切り取れば「はい、こうすれば解決」と言えそうでも、
いざ実行しようとすると家の空気が凍り付く。
誰かが不機嫌になって、誰かが傷つき、結局は、自分があとで嫌な気持ちになったり、帳尻を合わせる羽目になる。
そんなことを何度も経験していると、
何も事情を知らない人からの机上のアドバイスは、
むしろ『重荷』や『不快』に感じることがあります。
それだけ、「やらない」選択をしたときの「精神的なプレッシャー」ってけっこう強いし、当事者にしかわからないんですよね。
誰かに責められるわけじゃなくても、あの空気の重たさ、わかる人にはわかると思います。
そんなときに、ネット記事や誰かからのアドバイスで
「現状を変える勇気がないだけじゃない?」
「あなたがその環境に甘んじてるだけでしょ」
「こうやって工夫すればいいのに」
みたいな軽い空気を感じてしまうと、逆にしんどくなるのです。
こちらとしては、
「やれることはやってるし、過去にやってきた。それでもどうにもならない部分がある」
という前提がある。
でも外からの言葉は、
「自分が決めればできるでしょ?」
「変える気が無いじゃない?」
「自由になっていいんだよ?」
「それを選んだのはあなた自身だよね?」
という前提で語られているように聞こえる。
専門家やアドバイザーの発信を見ていると、
経験していない状況について、
「こうすればいいよ」と軽やかに(=気安く)提案してくることがあります。
別にアドバイスを否定したいわけじゃないのです。
外からの提案がきっかけで、新しい視点が見えることもあります。
でも、「アドバイスがあまりにも現実から遠すぎる」と、
当事者のしんどい実感が、どこにも受け止められずに、行き場を失ってしまう。
たしかに理屈としては合っているし、机上で考えれば最適解に見えるのかもしれません。
でも、実際に渦中にいる身からすると「それができたら苦労しないよ」と思わずにはいられなくなる。
私自身、専門職として人に助言をする立場にいるからこそ、
この矛盾は痛いほどわかるし、
私自身、気をつけなくちゃと思っていることです。
理論だけを振りかざして「やればできますよ」と語るのは簡単だけど、
その後ろにある「暮らしや感情の重さ」を抱え込むのは当事者です。
だからこそ、自分がよく知らない世界に意見するときは、
まず「動けない理由があるのかもしれない」と立ち止まるようにしています。
ちなみに私の場合、上記の嫁の立場の状況をAIに相談してみたら、
「家族で協力し合えるように話し合いをしましょう」とか
「家族で役割を分担して、『飲み物補充係』『舅への声かけ係』を割り振りましょう」
と言われました。(笑)
んなもん、それができたらとっくにやってるし、
それが難しいから悩んでるのに!![]()
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もちろん、AIは現場の空気までは読めません。
それと同じように、人間であっても、
自分が経験したことのない状況について語るときに、
その当事者の「空気」がすっぽり抜けたまま、持論を展開しまうことがあるんだと思います。
ちなみに、私がその時、いちばん欲しかったのは、
「わかる〜!!そういうのって、簡単にはいかないよねえ!
」
っていう共感のひと言だったと思います。
そのうえで、「じゃあ、無理しないでできそうな一歩って何かな」と一緒に考えてくれるスタンスだったら、
もうちょっと気持ちがラクだったかもしれません。
当事者がほしいのは、完璧な分析とか正論ではなく
「その状況って、本当に動かしづらいよね〜」という共感と、
それでも明日につながりそうな、小さなヒントです。
現場を丸ごと知らなくても、少なくとも「ほんと大変だよね〜」と言葉にしてもらえるだけで、肩の力はちょっと抜けます。
その問題が解決できないのは、その人の意識や努力が足りないからじゃない。
「今の環境では、その正論のやり方が機能しない」というだけなのです。
それでも毎日、なんとか生活を回している自分のことを、責めないようにしたい。
自戒を込めてですが、私は、誰かに助言を求められたとき、
まずは「その状況、、ほんとしんどいよね。なかなか簡単にはいかないものだよね」と言える人でありたいと思っています。
(カウンセリング的には、問題を固着させないために「簡単ですよ!」というスタンスが「良し」とされているんですが…(笑))
そのうえで、「これならできるかもしれないことを、一緒に探していけたらいいな」って思ってます。
理想論ではなく、その人の暮らしの中で、現実に合うものを、必要なぶんだけ、差し出せるカウンセラーでありたいなって、あらためて思っています。
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