2~3週間前、父から電話があった

実は引っ越したことを伝えていなかった
それぐらい私と父には距離があった
父はそこまで深く考えてはいないだろうし、
私が一方的に感じているだけだ

そんな父からの電話はいつもドキッとする

『もしもの時のために、色々と伝えおきたい』

私は胸が苦しくなった『そうだよね』『そうだよね』と何度も繰り返し、
事情を説明して、また会う日にちを決めて連絡すると電話を切った

母が亡くなったとき、父には伝えていたことがあった
もし父に何かあった時、銀行口座が凍結する前に対処しなければならないこと
葬儀のこと、公共料金や家賃の支払い、
他にも家財の整理もとても重要

母が亡くなってからの一連の流れのときに、
一人では対処ができなくて助けてもらって
母の家の状態もよく知っていて、家財処分は父が動いてくれたので、
家をシンプルにしておくことは、強く強く念押ししておいた

ちなみに両親は離婚して20年ぐらい経っていて
関係ないのに
それでも娘のために力になってくれたのだ

そして父が言うもしもの時というのは、亡くなるということだ

母は死を動揺し覚悟しつつ、けれど特に備えもなく、遺される私のことはこれっぽっちも考えていない人だった
悲しくて悲しくて仕方がなかった
失う悲しみと同時に怒りもわいてくる
そして、その怒りを直接ぶつけることも出来ない
折り合いはかなりついているとは言え、それでも時々思い出しては、
何となく腹が立ってくる
どうして娘の負担にならないように、少しぐらい考えてくれてもよかったのに、とか
母と暮らしていたときは安心して財布も置いておけなかった

これからの私の死生観は変わっていった
葬式もそうだけど、母の関係者を殆ど知らず連絡もできなかった
母の家族は母の死を知らない
まるでドラマや映画にでも出てきそうな境遇だけれど、
何故母は、家族と付き合うことをしなかったのか、
母には兄弟が沢山いることは聞いたことがあったけれど、
それについて深く聞くことが怖くて謎のままだ

父も同じで、私には親戚付き合いがないし、知らない

その事にも触れなければならず、
心の闇に触れるようで怖くて、それからというもの
頭から離れなくなり、父と会うのが怖かった
ずっと元気で生きていてほしいけれど、
どこでどうなるか分からない
コロナで色んなニュースを目にして、ますます怖さが増した

逃げたいけど逃げるわけにはいかない
それが『そうだよね』と自分を納得させるように、電話で返答するしかなかった

そして、気になって気になって落ち着かなくなり、父に電話することにした
夫の仕事のことや、引っ越し先のこと、
父の状況も聞いて、

そして本題

もしもの時、父のことを伝える人の連絡先もメモに残しておいてほしいと伝えた
個人的にお世話になった人、仕事で縁があったひと
そして、父の兄弟のこと
私は連絡先を知らないから、と言うと『分かった』と言っていた
やっと言えた

いずれちゃんと聞かないといけない父の家族
両親や兄弟、知っておかないといけない
私は父と母の両親がどうなっているのかすら知らない

母のことは仕方ないとしても、父のことも知らないままなんて
このままでは後悔してしまう
少しでも家族を感じたい私の気持ちを、父は理解してくれるだろうか

やっとここまできた
言ってみようと勇気が少しもてた

電話で話して、少し楽になった
元気そうでよかったし、我が家の状況も聞いて、安心もしたようだ

今度会ったらご飯を奢るよと言ってくれた
いつもこちらがお金を出していたので、なんか嬉しかったな
お金を出してくれてラッキーという訳じゃなくて、
久々に親に甘えられるっていうか、子供に戻れるっていうのが何か嬉しい

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