こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
季節は「立冬(りっとう)になっていますね。
暦(こよみ)の上では、いよいよ冬となったわけですね。
なんとも憂鬱(ゆううつ)なイメージのある「冬」の季節ですが、イギリスの詩人「パーシー・ピッシュ・シェリー」が次のような言葉を残しています。
「If Winter comes, can Spring be far behind?」
「冬が来たならば、春は遠くない」と訳されるのですが、それが転じて・・・
人生のなかで、辛い(つらい)時期を乗り越えれば、必ず幸せな時期が訪れるという意味で、用いられるようです。
日本にも「冬来りなば春遠からじ」という言葉があるわけですが、 ・・・この言葉の由来は、イギリスの詩人「パーシー・ビッシュ・シェリー」の詩「西風に寄せる歌」に由来するのだそうです。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回の話題は、「加齢」と「自律神経障害」の関連について、お話をしてみたいと思います。
その前に「自律神経」とは、どのようなものか?・・・をご説明してみたいと思います。
「自律神経」は、「交感神経("アクセル")」と「副交感神経("ブレーキ")」、そして消化管を司る(つかさどる)「腸管神経系」からなり、心拍・血圧・体温・消化・排尿・発汗などを無意識に調整します。
「交感神経」は、上に示したように車の「アクセル」に、そして、「副交感神経」は「ブレーキ」に例え(たとえ)られたりしますよね。
「副交感神経」のうち、特に心臓や多くの内臓を調節する主要な神経は、「迷走神経(めいそうしんけい)と呼ばれています。
心臓では「迷走神経」が、心拍を抑制(よくせい)し、「心拍変動(HRV)」の低下高めます。
「心拍変動(HRV)」とは、ちょっと聞きなれないかもしれませんね。少し補足(ほそく)しますと・・・
心臓の拍動の間隔は、一定ではなく「ゆらぎ」をもって、常に変動します。その「ゆらぎ」を数値化したものが、「心拍変動(HRV)」になります。
この「心拍変動(HRV)」は、「自律神経(交感神経と副交感神経)」の働きを反映しており、一般的に変動が大きいほどリラックスしており、低い場合は「ストレス」が高い状態を示すとされています。
「心拍変動(HRV)」は、心拍のゆらぎを数値化したものですが、この中のいくつかの指標が国際的に標準化されています(参考1)
話を戻しますと・・・「交感神経」は心拍・血圧を上げますね。
実は、加齢とともに「交感神経」は亢進(こうしん)して優位となることが報告されています。
一方で「迷走神経(副交感)低下していくという「自律神経」のバランスの変化が進み、このことは、慢性炎症の亢進、血管内皮細胞の機能低下、起立性低血圧や排尿・便通障害の増加、心血管リスク上昇に結びつくことが分かってきています。
では、加齢により、「自律神経」にどのような変化と報告されているのでしょうか?詳しくみてみたいと思います。
「加齢」によって起きてくるのは、次のようなことが報告されています。
【1】「心拍変動(HRV)」は、年齢とともに低下します。大規模縦断の古典研究でも、65歳以降に「心拍変動(HRV)」が明確に低下することが示されています(参考2)
「心拍変動(HRV)」が低い場合は、「ストレス」が高い状態でしたよね。
【2】加齢に伴い「交感神経」活動は上昇することが知られています。ヒトの筋交感神経活動(microneurography)やノルエピネフリン動態の研究で、加齢に伴う「交感神経」のトーンの増加が報告されています(参考3)。
【3】こうした「加齢」に伴う「交感神経」の活発化は、慢性炎症・
血管内皮細胞の機能障害・心血管リスクを増悪させ、
「心拍変動(HRV)」の低下は、CRPやIL-6など炎症マーカー上昇と逆相関し、心血管イベントリスクと関係することが大規模な解析で示されています。(参考4)
【4】臨床症状:高齢者ほど「起立性低血圧(OH)」、排尿障害(過活動膀胱など)、便秘などの自律神経症状が増えます。
「起立性低血圧(OH)」の有病率は地域在住高齢者で約2割、施設入所では約1/4に達するというメタ解析があります(参考5)
いかがでしょうか?
「自律神経障害」などは、一部の方だけの病態ではなく、加齢により、誰にでも起こりうることなのですね。、
しかしながら、「自律神経障害」は、慢性炎症・「血管内皮細胞」の機能障害・心血管リスクを増悪させるなどと聞くと、単なる気のせいなどと放置はせず、
確実な診断のもとに治療していくことが必要だと言えますね。
「自律神経障害」の発症のメカニズムと、その治療は後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>11月11日
急に気温が下がり、風も冷たくなっていますね。
あわてて、ストーブを持ち出したりしました。
秋の穏やかな(おだやかな)時間を心待ちしていたのですが・・・
いきなり、暦どおりに「冬」のような陽気になりますと身体も驚きますね。
今回は「自律神経」の機能障害について、お話をさせて頂きました。
実は・・・複数の大規模疫学研究や臨床研究により、急激な気温変動や極端な高温・低温への曝露は自律神経系のバランスを乱し、障害リスクを高めることが示されています。
この中でも、寒冷曝露(かんれいばくろ)は、高齢者の神経系疾患による死亡リスクを有意に増加させることが報告されており、男性と74歳以上の高齢者が自律神経障害を起こすリスクが高くなることが分かっています(参考6)。
では、暑いのは大丈夫なのか?・・・と言いますと、そうでもなくて、高温曝露も若年~成人で、自律神経機能の低下や自律神経障害と関連していることが報告されており、その内容は
交感神経優位となり、自律神経の回復や機能が低下しやすくなることが報告されています(参考7)
つまり、急激な寒暖差や極端な気温は、自律神経のバランスを乱し、障害や関連疾患リスクを高めることが多くなるというわけですね。
では、自律神経障害では、どのような症状を起こす可能性があるのでしょうか?
参考文献は省力しますが・・・以下のように実に多彩な症状を示すことが報告されています。
- 消化器系:便秘、下痢、早期満腹感、胃腸運動障害、悪心
- 泌尿器系:頻尿、尿失禁、尿閉、排尿困難
- 発汗・体温調節 :発汗異常(多汗・無汗)、体温調節障害、顔面紅潮
- 性機能:勃起障害、性欲減退
- 心血管系:起立性低血圧、動悸、頻脈、徐脈、血圧変動、失神
などとなります。さらに「動脈硬化」となるわけです。
「動脈硬化」に進行するメカニズムは、以下のようなものになります。
加齢により、「自律神経系」は全身の恒常性維持能力を徐々に失い、特に血圧調節や心拍制御、消化、排泄などの自律的な反応が鈍化します。
この背景には、血管・受容体・神経伝達・中枢機能の多層的な変化が関与してい流ことが分かっています。
以下は、おおよそのメカニズムを示していますが、、興味にある方は、お読みください
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1.動脈硬化と動脈スティフネスによる圧受容体感度の低下
加齢に伴い、動脈壁はコラーゲンの増加やエラスチンの断裂によって弾力を失い、動脈スティフネス(硬化)が進行します(参考8)。
頸動脈洞や大動脈弓に存在する圧受容体(バロレセプター)は、血圧変化を感知して心拍や血管収縮を調整しますが、動脈が硬くなることで血圧変化に対する伸展刺激が伝わりにくくなります。これにより、バロレフレックス感度(BRS, baroreflex sensitivity)が低下し、立位時の血圧維持が困難になります(参考9)。
さらに、加齢では交感神経活動が相対的に優位となるため、血圧の変動性が大きくなり、起立性低血圧や食後低血圧などが生じやすくなります。
<以下は、文献省略>
2.受容体およびシナプス伝達の加齢変化
自律神経系の信号は、末梢臓器のアドレナリン受容体(β₁、β₂など)やムスカリン受容体(M₂など)を介して発現します。加齢により、これらの受容体の発現量や感受性が低下することが知られています。
例えば、β受容体の感受性低下により、心拍増加や血管拡張反応が鈍くなります。また、アセチルコリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の合成・放出・再取り込みの効率も低下し、シナプス間伝達の遅延が生じます。これらの変化は、交感・副交感神経の応答速度を遅くし、自律的な血圧・心拍調節の精度を損ないます。
3.求心路および中枢の脆弱化
加齢では、末梢神経の軸索変性や脱髄、特に小径線維(C線維・Aδ線維)の障害が生じやすくなります。糖尿病性小線維障害などが加わると自律神経性フィードバックがさらに障害されます。
一方、脳幹や視床下部などの自律神経中枢でも、加齢に伴い神経細胞の脱落やグリア細胞の活性化、酸化ストレスの蓄積が見られます。この中枢レベルの変性が、心拍変動(HRV)の減少やストレス応答の鈍化を引き起こします。
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・・・というメカニズムが、報告されているわけですね。
つまり、「自律神経障害」を放置すれば、「動脈硬化」を進展させ、さらには、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などの心血管障害を起こすリスクが高くなってしまうというわけですね。
今回は、治療まで話題を広げることができませんでしたが・・・
またの機会に詳しくお話をしたいと思います![]()
今回も最後までお付き合い頂きまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Circulation. 1996 Mar 1;93(5):1043-65.
Heart rate variability: standards of measurement, physiological interpretation and clinical use. Task Force of the European Society of Cardiology and the North American Society of Pacing and Electrophysiology
Task Force of the European Society of Cardiology and the North American Society of Pacing and Electrophysiology.
2)J Am Coll Cardiol. 1998 Mar 1;31(3):593-601.
Twenty-four hour time domain heart rate variability and heart rate: relations to age and gender over nine decades
K Umetabiら
3)Am J Physiol. 1997 Jun;272(6 Pt 1):E976-80.
Age-related increase in muscle sympathetic nerve activity is associated with abdominal adiposity
P P Jonesら
4)Brain Behav Immun. 2019 Aug:80:219-226.
Heart rate variability and inflammation: A meta-analysis of human studies
DeWayne P Williamsら
5)J Gerontol A Bio Sci Med Sci. 2020 Jan 1;75(1):117-122. The Prevalence of Orthostatic Hypotension: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Nor I'zzati Seadonら
6)Sci Total Environ. 2021 Dec 15:800:149548.
The mortality burden of nervous system diseases attributed to ambient temperature: A multi-city study in China
Xuemei Suら
7)Sleep, Volume 41(1), April 2018, A172.
0453 The Effects Of Ambient Temperature Changes On The Severity Of Obstructive Sleep Apnea And Autonomic Nervous System Among Adult Patients
N Liuら
8)Circulation. 2003 Jan 7;107(1):139-46.
Arterial and cardiac aging: major shareholders in cardiovascular disease enterprises: Part I: aging arteries: a "set up" for vascular disease
Edward G Lakattaら
9)Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2007 Jul;293(1):R3-R12.
Effect of aging on baroreflex function in humans
Kevin D Monahanら
(六本木けやき坂イルミネーション2025)
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