こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
暑さは和らいで(やわらいで)いるのですが・・・曇りがちのすっきりしないお天気になっていますね。
秋晴れの透きとおるような青空を早く見てみたい・・・などと思ったりもします。
イギリスの小説家、フランシス・ブルット・ヤングは次のような言葉を残しています。
An autumn garden has a sadness when the sun is not shining.太
陽(ひ)が輝いていないとき、秋の公園(庭)には悲しみがある
まさに今日の曇り空は、寂しい冬を予感させるものでした。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は、「新型コロナウイルス感染」後に、「自己免疫疾患」を発症する可能性があるか?・・・というお話をしてみたいと思います。
いまさら、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」の話なの?:・・と思う方は、多いかもしれませんね。
「オミクロン株」に変異してからは、重症化(じゅうしょうか)する可能性は少なくなりましたし、米国からは「新型コロナウイルス」のワクチンは、健康に害があるなどという発言もちらほらと聞こえてきます。
「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」は、恐れることはない・・・などと勇ましい(いさましい)声も聞こえてきますよね。
しかしながら、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染が
各種の「自己免疫疾患」の発症リスクを20-43%増加させることが、複数の大規模国際研究により確立されているのですね。
「自己免疫疾患」とは、「リウマチ膠原病疾患」ということになりますね。
複数の論文において、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染後に「自己免疫疾患」を発症を疑うような「自己抗体」の出現が報告されているわけです。
特に重要な知見は以下の通りです:
「ロングCOVID」患者の83%で潜在性自己免疫(1種類以上の自己抗体陽性)が確認されています (参考1)。
さらに「ロングCOVID」患者の62%でポリ自己免疫(2種類以上の自己抗体陽性)に関する抗体の発現が報告されています
その「自己抗体」は、どのようなものがあるか?・・・と言いますと、次のようなものになります。
抗核抗体(ANA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体に関連する抗体など、、さまざまな「自己抗体」の出現が報告されています。特に重症例や入院患者で高頻度に認められ、健常者と比較して有意に多いとされているのですね(参考2)。
(AIで画像を作成)
ところで、「Long -Covid」自体は、どのような症状を起こすのでしょうか?
少し、整理をしておきたいと思います。
「新型コロナウイルス(COVID-19)」感染後、急性期を過ぎても多様な症状が長期間持続する「Long-COVID(ロングCOVID)」が世界中で報告されています。
これらの後遺症は、身体的・精神的・社会的な健康に大きな影響を及ぼしていると考えられています。
例えば、「Long-COVID(ロングCOVI)」の症状として報告されているのは、以下のようなものになります。
疲労(58%)、頭痛(44%)、注意力障害(27%)、脱毛(25%)、呼吸困難(24%)など、50種類以上の長期症状が報告されています(参考3,4)。
これらの症状に加えて、「自己免疫疾患」を発症すると聞きますと
・・・それは、本当なのか?・・・疑いたくもなりますよね。
もちろん、「自己抗体」が、血液中に存在するだけでは、「自己免疫疾患」を発症したとはいえません。あくまでも「自己抗体」は、その多くが診断を正確に行うための「参考」とされる場合が多いと考えられます。
では、実際に「自己免疫疾患」を発症することは報告されているのでしょうか?
残念ながら・・・「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」の感染後に、血管炎、多発性筋炎、全身性エリテマトーデス(SLE) ,サルコイドーシス、自己免疫性肝炎、ギランバレー症候群などの発症が報告されています(参考2)
では、なぜ、新型コロナウイルスの感染から、「自己免疫疾患」が発症するのでしょうか?
その詳細なメカニズムは、「自己免疫疾患発症」のヒントにもなるのではないかと思ったり、
何よりも「自己免疫疾患」を発症したときの早期発見は極めて、重要であるというお話につなげていきたいわけですが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>9月23日
今回は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染をきっかけに
自己免疫疾患を発症する可能性があるというお話をさせていただきました。
通常の自己免疫疾患(リウマチ膠原病疾患)の主な発症メカニズムは、遺伝子変異、分子修飾異常、免疫反応、加齢や環境要因などのうち、複数の要因が多層的に関与していると考えられています。
また、腸内細菌のバランス異常が免疫系の恒常性を崩し、自己免疫反応を誘発する可能性がなども示唆(しさ)されています 、
そして、ウイルス感染が自己免疫疾患の発症のトリガーになる可能性も指摘されています。
ウイルス感染がトリガーとなり、自己免疫疾患を発症する主なメカニズムは、次のようになります。
1)分子相同性(molecular mimicry)
ウイルス抗原が自己抗原と類似しているため、免疫系が誤って自己組織を攻撃する(参考5,6)
2)バイスタンダー活性化(bystander activation)
ウイルス感染による炎症環境で、自己反応性T細胞が非特異的に活性化される
3)エピトープ拡散(epitope spreading)
ウイルス感染で組織損傷が起こり、自己抗原が新たに免疫系に提示されることで自己免疫反応が拡大する
4)ウイルスによるB細胞の不死化や免疫制御破綻
特定のウイルス(例:EBウイルス)はB細胞を変化させ、自己抗体産生を促進する(参考7)
その他にも・・・
コクサッキーウイルス は、 1型糖尿病 を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは「分子相同性 」であるとされていますし(参考8)
インフルエンザウイルス は。ギラン・バレー症候群を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは
「バイスタンダー活性化等 」であるとされています(参考9)。
さらにヘルペスウイルス |は、多発性硬化症、自己免疫性角膜炎を発症させるトリガーとなる可能性が示され、そのメカニズみは
「分子相同性」であるという報告もあります(参考10)
つまり、「自己免疫疾患」の発症のトリガー(引き金)のひとつに
「ウイルス感染」かもしれないというわけですね。
同様に「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」感染後に自己免疫疾患を発症しやすくなる傾向が明確に報告されています。特に重要な知見は以下の通りです:
1.ロングCOVID患者の83%で潜在性自己免疫の病態
(1種類以上の自己抗体陽性)が確認 ( 参考11)
62%でポリ自己免疫(2種類以上の自己抗体陽性)を呈することなどが報告されています。
実際の自己免疫疾患発症例としては、全身生エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、Graves病、自己免疫性溶血性貧血、
多発筋炎(PM)、自己免疫性甲状腺炎など
が報告されているようです。
また、検出頻度の高い自己抗体としtr。報告されているものは
- インターフェロン(IFN-α, IFN-ω)抗体
- 抗AGTR1抗体(Gタンパク質共役型受容体などに対する抗体)
- IL-6, IL-1, TNF-αなどに対する抗体
- 抗核抗体(ANA)
- 抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン、抗β2グリコプロテインI抗体など)
- ACE2抗体
- 抗好中球細胞質抗体(ANCA)
などが報告されています。
自己免疫疾患のような病態を示すは「ロングCOVID」の顕著な特徴であり、自己抗体の種類・量がロングCOVID症状の重篤度と相関し
免疫系恒常性の破綻(樹状細胞、Treg、NK細胞の異常)が多臓器症状を誘発するなどとも考えられているようです。
これらの症状に対して、以下のような治療も検討されているようです。
Long COVIDに伴うsmall fiber neuropathy(SFN)に対して、静注免疫グロブリン(IVIg)療法が有効である可能性を示す症例報告や小規模研究が複数存在しますが、エビデンスはまだ限定的と考えられているようです(参考12)。
また、「B細胞除去療法」では病原性B細胞の選択的除去とプラスマフェレーシスとの併用可能性が検討されていたりもするのですが、現時点では、エビデンスに乏しいとされています。
新型コロナウイルス感染(COVID-19)は、風邪(かぜ)みたいなものとする風潮もありますが、
当初は分からなかった「自己免疫様の状態」が誘導されることを考えると、やはり、感染しない方が良いわけですし、
Long-Covidに罹患(りかん)し、体調が思わしくない方も
自己免疫疾患を発症してはいないかを専門医療機関でチェックしてもらう必要があるかもしれませんね。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)J Transl Med. 2022 Mar 16;20(1):129.
Autoimmunity is a hallmark of post-COVID syndrome
Manuel Rojasら
2)Cells. 2021 Dec 20;10(12):3592. Abraham Edgar
New Onset of Autoimmune Diseases Following COVID-19 Diagnosis
Gracia-Romasら
3)BMJ 2021 Jan 22:372:n136.
Managing the long term effects of covid-19: summary of NICE, SIGN, and RCGP rapid guideline
Waquaar Shahら
4)Cells. 2022 Dec 1;11(23):3882.
Cardiovascular, Pulmonary, and Neuropsychiatric Short- and Long-Term Complications of COVID-19
Malgorzata Kobusiak-Prokopowiczら
(5)Viruses. 2023 Mar 18;15(3):782.
The Role of Viral Infections in the Onset of Autoimmune Diseases
Bhargavi Sundaresanら
(6)Viruses. 2019 Aug 19;11(8):762.
Viruses and Autoimmunity: A Review on the Potential Interaction and Molecular Mechanisms
Maria K Smattiら
(7)Nat Rev Rheumatol. 2024 Nov;20(11):729-740.
Epstein-Barr virus as a potentiator of autoimmune diseases
William H Robinsonら
(8)Clin Microbiol Rev. 2006 Jan;19(1):80-94.
Molecular mimicry, bystander activation, or viral persistence: infections and autoimmune disease
Robert S Fujinamirら
(9)Front Immunol. 2025 Apr 3:16:1558386.
The intersection of influenza infection and autoimmunity
Shunyu Xieら
(10)Science. 1998 Feb 27;279(5355):1344-7.
Molecular mimicry by herpes simplex virus-type 1: autoimmune disease after viral infection
Z S Zhaoら
(11)J Transl Med. 2022 Mar 16;20(1):129.
Autoimmunity is a hallmark of post-COVID syndrome
Manuel Rojasら
(12)Muscle Nerve. 2023 Jul;68(1):E29-E30.
Intravenous immunoglobulin for immune-mediated small fiber neuropathy with TS-HDS and FGFR-3 antibodies: The jury is still out
Lawrence A Zeidmanら
(筆者撮影)
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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