大前研一氏の心に響く言葉より…

 

 

2025年4月20日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、第2次政権の発足から100日目を迎えたこの日、中西部ミシガン州のデトロイト郊外で、大規模な集会を行った。

 

関税強化をはじめとする自身の政策で支持率が下落する中、「歴代大統領の中で最もすばらしい100日間のスタートだった」と自画自賛し、「我々の黄金時代は今始まったばかりだ」とうそぶいた。

 

しかし、若いときに留学生としてMIT(マサチューセッツ工科大学)に学び、コンサルタントになってからは日米貿易交渉にも関わるなど、長年にわたってアメリカと関わってきた私にとって、これは「アメリカの時代」の終焉であり、世界がいよいよ不確実な時代に突入していく幕開けにしか感じられなかった。

 

 

昨年2024年は空前の選挙イヤーであった。国家元首を決める選挙が21ヵ国、国政選挙が32カ国で実施され、地球上に暮らす人口81億人の半数以上が選挙に関わった。

 

その結果、多くの国で現政権が敗北したり、不安定となったりして、「政権の突然死」が起こりやすい状況にある。

 

そのような中で、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏がアメリカ大統領に再び選ばれた。

 

今後4年間にわたり、世界はトランプ氏に振り回されることになるだろう。

 

 

ゲームチェンジ」とは、既存の枠組みやルールを根底から変える劇的な変化を意味する言葉だ。

 

トランプ氏の復帰は、まさにその象徴である。

 

彼の一連の行動や政策は、アメリカ国内にとどまらず、世界の政治経済の構造自体を大きく揺るがす転換点になる。

 

 

今年は奇しくも「戦後80年」という節目の年であるが、この間、一貫して対米追従外交を行ってきた日本も、世界に対する見方を改める必要がある。

 

また、トランプ氏の動向にかかわらず、「第4の波(サイバー社会)」が本格的に到来するなかで、日本は「失われた35年」からの脱却を目指すことが、最優先課題だ。

 

私の提案は、短期的には、コロナ禍を経て回復したインバウンド需要のさらなる増進を含む、「真の観光立国」を目指すことである。

 

海外富裕層を呼び込めれば50兆円規模も夢ではない。

 

 

加えて、2000兆円の個人金融資産の活用も重要だ。 

 

そして、長期的には生成AI時代に適した「教育の抜本的な改革」である。

 

 

企業は、サプライチェーンのシフトとAIシフトを同時に進めていく必要がある。

 

とくに後者は生成AIを開発するのではなく、「生成AIを使いこなす技術」に磨きをかける方向へとシフトしなければならない。

 

職務内容やポジションに応じて、従業員にAIなどのリスキリング (学び直し)を行うことも必須だろう。 

 

 

「教育」という観点からは、ビジネスパーソンのリスキリングだけでなく、学校教育の見直しも重要だ。

 

旧態依然たる文部科学省の学習指導要領に従って先生が教えていては、子どもはAI時代に生き残れない。

 

親は答えを教えるのではなく、子どもの「質問する力」を養い育てていくことが求められる。

 

21世紀のAI時代に適した教育が不可欠だ。

 

 

ゲームチェンジ――トランプ2.0の世界と日本の戦い方』(プレジデント社)

ゲームチェンジ――トランプ2.0の世界と日本の戦い方

 

 

 

 

 

大前研一氏はトランプ氏についてこう語る。

 

 

『私は「ドナルド・トランプ」という存在を、単なる一人の政治家ではなく、一種の「現象」であると捉えている。

 

彼の登場はアメリカの民主主義における一大転換点であり、その根底にはアメリカ国民の変質、そしてアメリカという国家のアイデンティティの揺らぎがあると考えている。

 

トランプ氏は歴代大統領の中で、最も品性に欠け、歴史に対する無知を隠そうともしない人物である。

 

にもかかわらず、いまだに共和党の岩盤支持層を中心に熱烈な支持を受けている。

 

彼らは「トランプは言ったことをやる」と評価する。

 

しかし、その内容は、国際秩序を破壊し、アメリカ国内を分断するものに他ならない。

 

彼の発言や方針には一貫性がなく、今日言ったことを翌日には変全と覆(くつがえ)すことも珍しくない。

 

彼は、正しい情報が提供されても、彼は誤りを認めないどころか、知らんふりをして、話題をそらそうとする。

 

この「トランプ現象」は、単にトランプ氏個人の資質にとどまらず、アメリカ国民そのものの変質を映し出している。

 

私は、アメリカが「もはやかつてのアメリカではなくなった」と痛感している。

 

もはや世界の模範でも自由主義陣営のリーダーでもないし、その気概すらない。

 

国民の側も、品性も知識も知恵も欠いた、下品の極みのようなリーダーを再び大統領に選ぶほど変質してしまったのである。』

 

 

では、傍若無人なトランプ氏に対して日本はどうしたらいいか、という問いに対して大前研一氏はこう語る。

 

『トランプ氏の言動に一喜一憂する必要はまったくない。

 

トランプ氏が打ち出す要求に対して、「あまり過剰に反応することはない」。

 

「柳に風」の姿勢、すなわち柔軟に、そして静かに状況を見守る戦略を推奨する。

 

なぜなら、彼自身が、今日言ったことを明日には覆すような人物だからだ。』

 

 

トランプショックという、世界規模での大きなゲームチェンジが始まった。

 

まさに今、パラダイムシフトの時。

 

 

「ゲームチェンジ」という言葉を胸に刻みたい。

 

 

 

ゲームチェンジ――トランプ2.0の世界と日本の戦い方

 

 

 

 

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