梅雨・台風と腎臓
第13回


 

 



「気圧の変化で調子が悪いし、足がむくみます」

この時期になると、このようにおっしゃる患者さんが数人いらっしゃいます。

いわゆる「気圧病」「気象病」と言われるものです。

梅雨や台風と腎臓は関係があるのでしょうか。
今回は気圧病と腎臓についてお話しします。



天気が崩れるときに起きる「気圧の低下」は体にとって大きな環境ストレス




◇気圧変化で頭痛・高血圧・むくみ

「雨が降る前に頭が痛くなる」
「天気が悪い日は血圧が不安定になる」
「体がむくんで重い」…。


このような体調の変化を経験したことがある方は結構多いのではないでしょうか。

これらは気象の変化が体に影響を与える気圧病、気象病(天気痛)として、医学的なメカニズムが徐々に解明されています。


私たちの体は、常に1気圧(約1013ヘクトパスカル)という空気の重さ(圧力)を受けて生活しています。

天気が崩れるときに起きる「気圧の低下」は、目に見えないものの、体にとっては大きな環境ストレスです。

カンジンカナメの腎臓にとっても、この頭痛、高血圧、むくみの三つは大きく関わります。



◇耳の奥のセンサー暴走

低気圧が近づくとズキズキとした強い頭痛(片頭痛など)が起きる原因は、耳の奥にある内耳のセンサーの興奮と脳の血管の広がりにあります。

私たちの耳の奥(内耳)には、気圧の変化を察知する特殊なセンサーが存在します。

気圧が急激に下がるとこのセンサーが過剰に興奮し、脳の「三叉神経(さんさしんけい)」という痛みの神経を刺激します。


中部大学の佐藤純教授らのグループによる基礎研究において、人工的に低気圧の環境をつくると、内耳の前庭神経(延髄上前庭神経核細胞)が選択的に興奮することが証明されており、この内耳の気圧感受機構が自律神経系を刺激し、頭痛を悪化させているようです。

また、山の上や飛行機に乗っている時にポテトチップスの袋を持っていくと、外の気圧が下がるため、内側からパンパンに膨らみますよね。

脳の血管でもこのような拡張が起こっており、ポテトチップス現象と言われることがあります。

周りの気圧が下がると脳の血管が広がり、周囲の神経を圧迫してズキズキとした痛みを引き起こすとされています。



◇ピンチ察知して血圧上昇

「低気圧イコール圧力が下がるのだから、血圧も下がるのでは?」と思われがちですが、実は逆の現象が起きやすくなります。

気圧が急激に下がると、逆に血圧が上昇したり、乱高下したりする傾向があります。


気圧が急激に低下すると、体はそれを「生命の危機(ストレス)」と捉えます。

すると、体を緊張させる交感神経のスイッチが強制的にONになります。交感神経が優位になると、アドレナリンなどのホルモンが分泌され、血管がギュッと収縮します。

その結果、血液の通り道が狭くなり、血圧が上がってしまうのです。

特に、もともと高血圧の持病がある方は、急な気圧低下やそれに伴う寒暖差によって血圧が跳ね上がりやすくなるため注意が必要です。



◇腎臓と体のむくみ

天気が悪い日に「体が重だるい」とか「靴がきつくなる」と感じるのは、体内の水分バランスの乱れが原因です。

これには、腎臓の働きと血管の構造が深く関わっています。


外からの気圧(押し返す力)が弱まると、血管の壁にかかる圧力が変化し、血液中の水分(血漿=けっしょう)が血管の外側(細胞の隙間)へと染み出やすくなります。

これが全身のむくみの正体です。


水分が血管の外へ逃げてしまうと、一時的に血管内を流れる血液の量が減少します。

腎臓は血液をろ過して尿(余分な水分や老廃物)をつくる臓器です。

入ってくる血液の量が減ると、「これ以上水分を捨ててはいけない」と判断し、尿の量を減らしてしまいます(腎臓の水分調節に関しては第3回で触れています)。


さらに、交感神経の興奮によって腎臓の血管自体が縮むと、腎臓のろ過機能が一時的に低下します。

排泄されなかった水分や塩分が体内に滞留するため、これがさらに血圧を押し上げるという悪循環を招くのです。


健康な腎臓であれば一時的な環境変化にすぐに対応できますが、慢性腎臓病(CKD)患者さんや心不全患者さんでは、水分の滞留・悪化のリスクを高めることが指摘されていますので、要注意です。



◇梅雨や台風の時期は塩分に注意!

気圧の変化を止めることはできませんが、体が受けるダメージを最小限に抑えることは可能です。

一般的な対処法として以下の対処法が有名です。思い当たる方はやってみることをお勧めします。



1. 耳周りの血流を良くする

内耳の血流が悪いと気圧センサーが過敏になります。

耳の後ろにあるツボをマッサージしたり、耳を上下に軽く引っ張って回したりすると、内耳の血行が促され、頭痛の予防につながります。


2. 天気が悪い日は減塩

気圧低下時は体に水分がたまりやすくなります。


高血圧の悪化や腎臓への負担を防ぐためにも、雨の日は意識して塩分を控え、水分を外に出しやすくしましょう。


3. 朝の光と入浴で自律神経を整える

乱れた自律神経のスイッチを切り替えるには、朝にしっかり光を浴びること、そして夜はぬるめのお湯に浸かって副交感神経(リラックスモード)を優位にすることが効果的です。

ご自身の体のクセを知り、この季節の気圧の波を上手に乗りこなしていきましょう。






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