新しい連載の投稿を始めました^ ^

 

母の愛猫・金ちゃんは、少しボサボサで、なんとも不思議なダミ声の猫だった。 長年、母とは衝突を繰り返してきた。結婚への反対、繰り返される口論、「もう帰ってくるな」と言われたことも一度や二度ではない。ワタシは母を「毒親」だと思い、距離を置くことで自分を守ろうとしていた。 けれど、父の死、愛猫たちとの別れ、そして年を重ねた母との再会を通して、少しずつ見えてきたものがあった。 なぜワタシは、これほどまでに母に反発していたのか。 なぜ母は、不器用な言葉しか使えなかったのか。 ダミ声の猫・金ちゃんを軸に、幼少期の記憶、家族との確執、母娘の和解までを綴った連作エッセイです。 「毒親」だと思っていた母の向こう側に見えてきたものとは――。

 

ダミ声の猫 vol.1 結婚と勘当

 



ワタシの実家には、ダミ声の猫がいる。名前は「金ちゃん」。母の愛猫だ。

その鳴き声を文字にするのは難しい。普通の猫のように「ニャーニャー」とは鳴かないからだ。

無理やり表現するなら、「ヌギャー、ヌギャー」といった感じだろうか。

毛色は茶トラ。尻尾は途中で丸まっていて、毛並みもボサボサ。一目惚れされるような猫では決してない。今年で十一歳になるという。

ワタシが「可愛い」とは到底思えないその猫を、母はとても可愛がっている。

母は「もう猫は飼うまい」と思っていたそうだ。しかし、まだ目も開かないような子猫がダンボールに入れられて捨てられているのを見つけ、放っておけなかったらしい。

母が金ちゃんを呼ぶとき、声はワントーン高くなる。

「金ちゃーん♡、金ちゃーん♡」

そう呼ぶと、金ちゃんは「ヌギャー、ヌギャー」と返事をしながらやって来る。

先日、ワタシは久しぶりに一人で実家へ帰った。

去年の三月、母と電話で大喧嘩をしたとき、「もう二度と帰ってくるな」と言われて以来、心に澱のように溜まっていたものが、ようやく晴れたからだ。

ワタシもそのとき、「もう二度と帰るものか」と言いたかった。

だが、その言葉は飲み込んだ。口にしてしまえば、本当に取り返しがつかなくなりそうな気がしたからだ。

その代わり、メールでこう送った。

「お母さんはものすごく口が悪いから、兄に捨てられないようにね」

それを最後に、ワタシから連絡を取ることはできなかった。

ワタシが大人になってからというもの、母とはずっと上手くいっていなかった。

母は事あるごとに禁止や命令をしてきた。

結婚を大反対されたときもそうだった。


▼続きはこちら

https://note.com/preview/n5bee01ebe75c?prev_access_key=9667cd46761eb4c759b8f14accc6e2c9