背後から母の
「その鎌、よく切れないわよ」
という声。
別に問題はない。
力任せに叩きつければ、いずれは切れるはず。
私道の入り口の隣家の前で、通りがかりの男の人が、私の姿を見て小走りに去って行った。
洗っただけで化粧してない日焼けした顔。
洗いざらしたTシャツにジャージを着用して、足元はサンダル。
髪は無造作に後でひとまとめに束ねてる。
そして、右手にはむきだしの鎌を握りしめてる。
自分自身を客観的に見れば、かなり怖いかも…。
「私、異常者!
攻撃的な性向ありま~す」
って宣言してるみたい。
ターゲットは私道の入り口、隣家と道をはさんで隣の更地に生えてるセイタカアワダチソウ。
ぶっとい茎が根元近くから折れて、道路にはみ出てる。
愛車の車体、右側に、長~いひっかき傷があるのを発見したのは日曜日の夕方。
コンパウンドで磨けば消せるだろうけど、そんなことしたら買った時にしてもらったガラスコートも剥がれちゃう。
道路に向かって倒れた、セイタカアワダチソウの茎の断面が犯人なのは間違いない。
わが家の前の私道はメチャクチャ狭い。
私道に入るまでの道も、同じくメチャクチャ狭い。
でも、慣れっこだ。
免許取ってすぐから、ここを1500cc以上の車で曲がってきたし。
ただ、この更地には古い家が建ってて、セイタカアワダチソウなんて無かった。
やっぱり、その存在を許しておくわけにはいかん…。
切れない鎌の刃を、何度もセイタカアワダチソウの茎に叩きつけた。
なんか、脳内麻薬がどっさり分泌されたのか、けっこう夢中になってガシガシ。
声には出さなかったけど、気分は
「ホーッホッホッホッ!
死ね死ねみんな死んでしまえ~」
どうせなら…と、次から次へと、セイタカアワダチソウの茎を根元から踏んで折り倒してから、鎌の刃をガシガシ振りおろし続けた。
ふと、視界の左端に動くものが目に入ったので、顔を向けると、あわてて途中の道を左に曲がって行く年配の女性の姿が!
相当、アブナイ奴に見えたのかな…。
確かに…。
こんないでたちで、鎌を握りしめた中年女がウツロな目をして歩いてたら…。
いくら雑草相手でも、完全にトリップした目をして鎌を振りおろし続けてたら…。
そばに寄りたくないのは当然だな。
残念ながら、セイタカアワダチソウを4本やっつけたところで、作業終了とした。
通報されて、職務質問されたり、銃刀法違反で捕まりたくなかったので
う~ん…。
意外と私、殺人鬼の素質、あるのかも。
う~ん…。
なんか、また悩み増やしちゃったかな。