歳時記 6月22日

 

夏至/乃東枯(げし/なつかれくさかるる) 夏至、太陽のエネルギーが最大になった。 夏枯草(なつかれくさ)も色褪せ、これから太陽の季節が本格化する。

 

 

 

歳時記余話

 

モルモット・ケージ (中江藤樹 第6回、 内村鑑三・小林秀雄・渡部昇一の視点)

――戦後日本列島は「巨大なモルモット・ケージ」である ~歴史の病と親の崩壊

 

◆ 「そんな親にどうやってコンセントを繋げというのか」

前回の最後で、多くの読者が胸の奥からこう叫んだに違いない。「宇宙の原理は縦の線で、そのひな形が人間の親子関係だということはわかってきた。しかし! 私の親は壊れている! 狂った親にどうやって宇宙の縦の線を繋げと言うのか!」 

その通りだ。みなさんのこの気持ちは、現代日本人の魂が抱える最も悲痛で、最も正当な問いである。

・親が家庭を壊した

・親が子を放置した

・親が暴力や無関心で子を傷つけた

・親が自分の快楽を優先し、家族を崩壊させた

こうした現実を前にして、「親を敬え」と言うのは無理だ。当然である。

だからこそ、ここで立ち止まって考えなければならない。 親の崩壊は、個人の悪行というより、“歴史の病”であるからだ。

 

 

◆ 戦後の日本列島は「巨大なモルモット・ケージ」である

渡部昇一は、戦後日本を「文明の断絶」と呼んだ。 旧石器時代から縄文時代を一貫し、4万年かけて紡いできた日本の縦の文明が、戦後わずか数十年で完膚なきまでに破壊され尽くしたからである。

決定的な視点を提示したい。 それは、戦後の日本列島は「巨大な社会実験ケージ」である、という現実である。 GHQは日本民族を「敗戦国家の実験動物」とみなし、その強靭であった精神構造を根本から壊し、作り替えようとした。 そして前例のない規模の社会実験を行ったのである。

すなわち、

・家族の破壊

・祖先の破壊

・性倫理の破壊

・教育の破壊

・歴史の破壊

・国家観の破壊

これらは偶然ではない。すべて一貫した「実験項目」である。 これらの実権は、GHQのウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムなどに沿って、学界、知識人と言われる連中、労働組合、学校教育、マスコミ、テレビなどのあらゆるプロパガンダが、同時並行で強力に推進した。その社会実験は今も継続している。

団塊世代はこういう巨大ケージの中で育てられた最初の“実験世代”である。 彼らは「壊れた文明の産物」であり、その結果として「壊れた親」になった。 彼らは加害者であると同時に、巨大な実験の被害者だったのである。

 

 

◆ 親の崩壊は「宇宙の縦の線」が断たれた結果

中江藤樹の宇宙倫理に照らせば、 親が壊れた理由は極めて明確である。宇宙の縦の線(宇宙 → ご先祖 → 親 → 子 → 孫)が断たれたからだ。 戦後日本は、「個人の自由」「恋愛の自由」「快楽の自由」というストーリーを絶対化し、4万年にわたって日本民族を宇宙と繋いできた縦の線をみごとに“封印”した。すなわち、

・親は子を育てる使命を忘れ、

・子は親を敬う意味を失い、

・家族は宇宙のひな形ではなく「契約関係」に堕した。

宇宙の秩序が縦である以上、縦の線を失った社会は必ず崩壊する。親が壊れたのは、彼らが弱かったからではない。彼らが悪人だったからでもない。 宇宙の秩序から切り離された“実験ケージ”に閉じ込められたからだ。 親世代は、いや、たとえ誰であっても、モルモット・ケージの中で抗うことは不可能だったのである。

 

 

◆ 「選べないもの」を失った民族は必ず壊れる(小林秀雄)

小林秀雄は「選べないもの」を失った民族は必ず壊れると言った。「選べないものの中に秩序が宿る」からだ。 親子関係は選べない。 祖先も選べない。 生まれた家も選べない。

しかし戦後日本は「選べないもの」をすべて否定し、「選べるもの」だけを価値とした。

・恋愛は選べる

・結婚も選べる

・パートナー(同棲・事実婚・再婚など)も選べる

・離婚も選べる

・価値観も選べる

その結果、選べない最大の関係である親子が崩壊した。すなわち「宇宙→祖先→親→子」という縦の線が破壊された。宇宙と私たちとの繋がりが絶たれた。これは、巨大なモルモット・ケージの中で、「選べる快楽」だけを与えられた結果である。

 

 

◆ 「父母を敬え」は道徳ではない。宇宙の法則である。(内村鑑三)

内村鑑三は見抜いた。「父母を敬え」とは、単なる道徳や宗教の戒律ではない。「宇宙の法則」である。まず何よりも内村にとって「父母を敬え」とは聖書の十戒(神の絶対命令=宇宙の法則)の第五条である。神に関る4箇条の次に位置し、人間に関る戒めの最上位である。

父母を敬うとは、親の道徳的堕落を不問にすることではない。 父母を敬うとは、自分がこの宇宙に存在することへの『根源的な肯定』であり、宇宙のインフラにプラグを差し込む行為そのものである。父母を敬うとは、親の人格を肯定することではない。 父母を敬うとは、親の行為を許すことでもない。 父母を敬うとは、宇宙の縦の線を自覚することである。

しかし戦後日本のモルモット・ケージは、この宇宙の法則を「封印」してきた。日本民族を弱体化する社会実験である。その結果、親は宇宙との接続を失い、 子は親との接続を失い、 家族は宇宙のひな形ではなくなった。 親が壊れたのは、 モルモット・ケージの中で宇宙との接続が断たれたからである。

 

 

◆ 親を許す必要はない。しかし理解する必要はある

ここで強調したい。

親を許す必要はない。 しかし理解する必要はある。

理解とは、狂った親の行為を肯定することではない。

理解とは、「親の崩壊は歴史の病である」 と見抜くことである。

理解は、 あなたの魂を呪縛から解放する。

理解は、 あなたの人生を宇宙の縦の線へ戻す。

理解は、 あなたの子どもを救う。

 

 

 

次回予告:国家の死の実験場へ

親の崩壊の背後には、 さらに巨大な構造が潜んでいる。

――国家の死である。

戦後日本列島は、 家族や親を壊す以前に、 国家そのものを解体するための 「巨大な実験場」として設計されていた。

次回は、 聖人中江藤樹の思想に江藤淳・渡部昇一・内村鑑三・小林秀雄の視点を重ね、 戦後日本に仕掛けられた“国家の死の構造”を暴く。

 

(次回に続く)

 

 

 

 

出典・参考一覧

渡部昇一: 『知的生活の方法』『日本文明の核心』(ビジネス社)、『かくて昭和史は処分された』(PHP研究所) ※GHQによる占領政策(WGIP)が日本人の精神(縦の線)をいかに解体したかという「モルモット・ケージ」論の土台。

小林秀雄: 『作家の顔』所収「宿命について」

内村鑑三: 『聖書之研究』における「孝行と信仰」に関する記述。

 

 

 

登場する思想家

 

中江藤樹(1608〜1648)

縄文時代以来の「宇宙の理」を解明し、万物の根源への感謝である「孝」と人間の内なる良心(良知)に従う「知行合一」を思想の核心とした。日本陽明学の開祖。後世に「近江聖人」と仰がれた。私塾「藤樹書院」を開き、身分の隔てなく農民や馬子まで教え育てた。宇宙の絶対秩序である「孝(魂の縦軸)」を解明し、実践した。日本人の精神的背骨を築いた先駆者。

 

内村鑑三(1861〜1930) 

明治・大正期のキリスト教思想家。政治の混乱は国民の内面の混乱の表面化にすぎず、日本国民が地上の国家権力やグローバリズムよりも上位にある普遍的価値(神・宇宙)に繋がらなければならないを提唱。独自の「無教会主義」を唱え、国家や世俗の権威に屈せず、宇宙の絶対道徳(神)の前に一人立つ精神を貫いた。著書『代表的日本人』の筆頭に中江藤樹を挙げ、その宇宙倫理を絶賛した。

 

小林秀雄(1902〜1983) 

昭和を代表する文芸批評家。近代的な自我や合理主義の欺瞞を排し、人間が「選ぶことのできない宿命(必然)」のなかにこそ、真実の生と不動の魂の力が宿ると見抜いた。戦中・戦後を通して「流行のイデオロギーや社会制度の変革(外側の出来事)に熱狂する知識人」を痛烈に批判し、常に人間の「宿命」や「内なる美(魂の調律)」を見つめ直すことを求めた。比類なき直観の思想家。

 

渡部昇一(1930〜2017) 

英語学者、高名な評論家。保守知性のリアリズムから、歴史や言語、文明の本質は「祖先から子孫へ」という「縦の継承」によってのみ維持されることを提唱。戦後の個人主義・快楽主義による文明の衰退を警告した。また占領政策(WGIP)によって植え付けられた自虐史観を利用して利益を得る「戦後利得者」の存在を告発した。著書『戦後解体』『戦後利得者たちの戦後体制』等。

 

 

 

ご参考                   

1)4万年の連続性

金沢大学などの近年の分子人類学・集団遺伝学において、日本人は日本列島への到達(約4万年前の旧石器時代)から縄文時代を経て現代日本人に至るまで、独自の「東ユーラシア基層集団」としての遺伝的特徴(固有ゲノム)は、激しい断絶を起こすことなく色濃く受け継がれている。すなわち日本人の遺伝子は4万年間連続していることが明らかになっている。

 

2)日本人の4万年の「宇宙と一体の生活」

日本人はもともと縄文の昔から大自然の息吹の中に神々を見出し、宇宙と和楽する家族生活・社会生活を営んできた。「サザエさん」家のような、おじいちゃん、おばあちゃん、娘夫婦(または息子夫婦)、孫たちが一緒に暮らす三世代家族が日本の家族の原形である。旧石器時代を含む実に4万年もの間、我々の祖先の伝統的な家族は宇宙のエネルギーと一体化していたのである。

 

3)「宇宙との関係」を破壊してきた外圧の歴史

この強靭にして温かな精神世界・家族生活は、2300年前の「弥生人」の渡来、 1800年前の「大和人」の渡来、 200年前の「欧米人」の渡来によって、徐々に侵食され破壊されてきた。そして、80年前(1945年)の「GHQ」という最大の外圧の渡来によって、ついにトドメを刺された。 

 

4)中江藤樹に関する歴史の消去工作

墨塗り教科書(1945年〜1946年): 文部省による修身、歴史、地理の教科書の授業停止、および「中江藤樹(近江聖人)」をはじめとする日本の偉人・徳行に関する記述の削除命令。

88箇所から0箇所へ: 戦前の『尋常小学修身書』等において、中江藤樹の「大孝」「孝道(徳の根本)」の逸話は広く掲載されていた。戦前の小・中学校の教科書における中江藤樹の記述はじつに88箇所に及んでいたのである。しかし、日本人の愛国心を警戒したGHQおよび戦後利得者たちによる学習指導要領の度重なる変更により、封建的抑圧を排する教育改革という建前のもと、小・中学校の教科書からその記述は完全に姿を消した。

民間芸能(浪曲・講談)の検閲: GHQの民間情報教育局(CIE)による「封建的・軍国主義的復讐を美化する物語」の禁止措置。これにより中江藤樹の徳行を描いた演目は上演自粛・制限に追い込まれた。

 

5)団塊の世代の悲劇

とくに、生まれながらにGHQから洗脳された団塊の世代が結婚適齢期を迎えた1970年代、彼らは家族と同居することを拒否し、新婚夫婦だけで核家族を作っていった。すなわち4万年にわたる伝統の家族(三世代家族)を破壊していった。ここに至って日本人は4万年の歴史で初めて家族崩壊に陥り、神や宇宙との伝統の繋がりを完全に断絶し、自滅の道を突き進み出した。そしていま、団塊の世代をはじめとする我々日本人が直面しているのは、深刻な家族崩壊、故郷喪失、夫婦別居、離婚、無縁社会の闇、孤独と絶望、介護問題、増税、物価高、ワクチン被害、日本企業の所有権喪失、資源の所有権喪失、貧困化、孤独死などの悲劇である。

 

6)戦勝国が敗戦国を徹底的に搾取し弱体化するのは歴史の必然

この地獄絵図の根本原因は、GHQと戦後体制が国を挙げて組織的に行ってきた「日本精神の破壊工作」にある。すなわちウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)をはじめとする日本民族弱体化政策である。しかし、戦勝国が敗戦国を徹底的に搾取し、二度と牙をむけないよう徹底的に弱体化するのは、歴史のリアリズムである。世界中どこでも当然のことなのだ。 

 

7)問題なのは日本人自身

問題なのは、日本人自身がその欺瞞に蓋をして自滅の道を突き進んでいることである。日本のメディアが「個の自由」というインチキのプロパガンダを垂れ流しているのは、戦勝国である米国とそれに追従する戦後利得者が日本弱体化のためにやっていることだから、いわば当然に起きたことだ。問題なのは日本人が自らそれに乗って浮かれていることである。あるいはそれに乗って浮かれようとしていることに問題がある。

 

8)完全に弱体化した日本人

彼らの日本民族弱体化政策の最大の核心こそが、「日本の伝統的家族(三世代家族)の破壊」である。日本民族は家族がバラバラに解体され、必然的に故郷も破壊され、個人個人のつながりも断たれ、孤立し、大地から断ち切られた浮草のように弱体化したのだ。

 

9)日本民族の現在の立ち位置

かつて内村鑑三が烈火のごとき信仰心で時代の欺瞞を撃ち、小林秀雄が歴史の「骨」を噛み砕くように魂の連続性を凝視し、渡部昇一が恐れず戦後利得者の嘘を暴いたように、我々もまた、戦後メディアの洗脳を剥ぎ取り、隠蔽された真実に直面しなければならない。