私たちに必要なのは魂の強化である。なぜ「魂のピアノ」は鳴らないのか (中江藤樹 第2回、内村鑑三、小林秀雄、渡部昇一の視点)

 

 

歳時記

 

小満/紅花栄(しょうまん/べにばなさかう) あらゆる生き物が勢いよく成長して生命力に満ちる頃、紅花が盛んに咲き誇る。魂の強化・充実に相応しい季節。

 

 

 

歳時記余話

 

この日本を覆い尽くすグローバリズムは層が厚い。強大である。一方、日本人は家族も故郷も破壊され、弱体化し、疲弊の極みにある。今、私たちに必要なのは、高市首相やグローバリズムの動向に一喜一憂することではない。内村鑑三が言うとおり、政治の混乱は国民の頭の混乱の投影にすぎない。いま私たち日本人に本当に必要なのは、政権、国家、グローバリズムなどの地上の権力よりもさらに上位にある「宇宙の普遍的価値」に直結し、それによって「一人ひとりの魂を強化すること」である。内村の「一個人の義は一国家の利よりも重い」と信じ抜く、烈火のごとき精神――これ以外に日本人が生き残る道はない。

 

このグローバル支配の根底にあるものこそ、前回(5月18日)お話しした、GHQによる「歴史の完全消去」という精神的テロである。中江藤樹が説いた真理は、政治よりも強い「宇宙の法」であった。日本人が宇宙と直結する方法論であった。宇宙の法を忘れた民族は、外圧に触れた瞬間に崩れ落ちる。しかし戦後、教科書における中江藤樹の記述は88箇所から0箇所へとモロに抹殺された。浪曲・講談・映画などの民間芸能でも藤樹の上演を自粛させられた。結果、現代日本人は自分たち日本民族を宇宙と結びつけていた聖人・中江藤樹を知らない。歴史の完全消去。日本人は4万年の歴史で培ってきた宇宙との神人和楽を根こそぎ切断されたのである。

 

だからと言ってGHQ(グローバリズム)が悪いと騒いでも始まらない。戦勝国が敗戦国を徹底的に弱体化し搾取するのは歴史の必然である。当前のことなのだ。第一に、これだけ弱体化し疲弊した日本人では強大なグローバリズムの企業社会主義体制に歯向かうことも難しい。現代日本人の脆さの原因は、政治家の問題ではない。政治家が軟弱なのは日本国民が軟弱だからだ。日本人自身の徹底的な「魂の断線」の問題である。そこから脱出できないことが真の問題である。現代日本人は宇宙から引き剥がされ、大地から引き抜かれ、浮草となり、政治への無力感を抱えたまま、「巨大な洗脳の檻」の中に閉じ込められているのである。

 

こんな話がある。――ある劇場に、極上の美しさで鳴り響く一台の最高級グランドピアノがあった。しかしある日、悪意ある侵入者によって、ピアノの内部の「すべての弦」が一本残らず切断されてしまった。こうなるとピアノの演奏者が鍵盤をどれほど激しく叩こうとも、政治への怒りをぶつけようとも、そこから返ってくるのは「カチカチ」という虚しいプラスチックの打鍵音だけである。

 

今の日本人の魂は、この「弦を切られたピアノ」だ。いくら熱心に政治の鍵盤を弾いても、いくら個人の自由だと虚構に逃げ込んでも、いくら飾り立てても、魂の奥底と響き合う宇宙の音楽が鳴らない。小林秀雄は「芸とは魂の調律だ」と言った。小林が骨を噛み砕くような冷徹さで求めたのは、外側の制度の改革ではなく、内なる魂の調律であった。政治の鍵盤を叩く前に、まず私たちの魂の弦を張り直さねばならない。

 

では、グローバリズムやGHQや戦後利得者が、私たちの魂から叩き切った「最重要の弦」は何なのか。そして、その代わりに私たちに与えられた「決して宇宙の音楽が鳴ることのない偽物の楽器」とは何か。次回、現代日本人が命よりも大切だと信じ込まされている最大の洗脳の檻―― 恋愛至上主義という精神の牢獄を白日の下に晒す。この檻を破ることが、「生命の暗号」を解き明かし、魂の断線から脱出する突破口となる。

 

(次回に続く)

 

 

 

 

出典・参照ライブラリ

 

現代ゲノム科学が証明する「日本人の4万年連続性」(金沢大学・理化学研究所・東京大学等の共同研究 2021年〜2024年)

「三重構造モデル」の提唱(Science Advances 掲載論文等): 金沢大学の覚張隆史准教授らのチームは、パレオゲノミクス(古人骨の全ゲノム解析)により、現代日本人が「縄文人」「弥生人」に加えて、3つ目の祖先として「古墳人(東アジアの渡来集団)」の遺伝子を引き継いでいることを実証した。

 

「4万年の通底」: 近年の分子人類学・集団遺伝学において、日本列島への人類到達(約4万年前の旧石器時代)から縄文時代を経て、現代日本人に至るまで、独自の「東ユーラシア基層集団」としての遺伝的特徴(特に縄文祖先由来の固有ゲノム)は、激しい断絶を起こすことなく色濃く受け継がれている。すなわち日本人の遺伝子は4万年間連続していることが明らかになっている。

 

 

 

中江藤樹に関する歴史的背景「GHQによる歴史・聖人の消去工作」

『墨塗り教科書』(1945年〜1946年): 文部省による修身、日本歴史、地理の教科書の授業停止、および「中江藤樹(近江聖人)」をはじめとする日本の偉人・徳行に関する記述の削除命令。

 

88箇所から0箇所へ: 戦前の『尋常小学修身書』等において、中江藤樹の「大孝」「孝道(徳の根本)」の逸話は広く掲載されていた。しかし、日本人の愛国心を警戒したGHQおよび戦後利得者たちによる学習指導要領の度重なる変更により、封建的抑圧を排する教育改革という建前のもと、小・中学校の教科書からその主たる記述が一時完全に姿を消した。

 

民間芸能(浪曲・講談)の検閲: GHQの民間情報教育局(CIE)による「封建的・軍国主義的復讐を美化する物語」の禁止措置。これにより『忠臣蔵』や、中江藤樹の徳行を描いた演目が一時上演自粛・制限に追い込まれた。

 

 

 

巨人たちの思想的背景(引用・視点の典拠)

小林秀雄(冷徹な批評と魂の調律)

「政治家の出来不出来に心を奪われるのは、自分の魂の空洞を他人で埋めようとする態度だ」という視座は、彼の批評精神の本質。小林は戦中・戦後を通して「流行のイデオロギーや社会制度の変革(外側の出来事)に熱狂する知識人」を痛烈に批判し、常に人間の「宿命」や「内なる美(魂の調律)」を見つめ直すことを求めた。

 

渡部昇一(戦後利得者と国家依存の病)

著書『戦後解体』『戦後利得者たちの戦後体制』等。渡部氏は、占領政策(WGIP)によって植え付けられた自虐史観を利用して利益を得る「戦後利得者」の存在を告発した。また、戦後民主主義が「国家に権利を要求し、依存するばかりで、精神的独立(独り立つ精神)を忘れた」ことを終生、知的な誠実さをもって批判し続けた。

 

内村鑑三(宇宙の普遍的価値と一個人の義)

『代表的日本人』(中江藤樹を世界に紹介した名著)、および彼の『非戦論』『不敬事件』に見られる絶対信仰。内村は、地上の国家権力やナショナリズムよりも、神(宇宙の主)の正義を上位に置いた。「一個人の義は一国家の利よりも重い」という、国家と対峙しても曲がらない烈火のごとき独立精神の源泉。