歳時記 5月19日
立夏/竹笋生(りっか/たけのこしょうず) 新緑のなかで、タケノコが次々に生え育ってくる。
歳時記余話
1) 歴史から完全消去された聖人
歴史から抹殺され、現代日本人がほとんど知らない、「聖人」がいる。日本人が戦国時代を経て宇宙を忘れつつあった時代、再び日本民族を「宇宙」と一体化させた不世出の思想家である。戦後、GHQが最も恐れ、徹底的に抹殺した思想家でもある。中江藤樹(なかえ とうじゅ 1608~1648)、戦前の学校の教科書(修身、国語、歴史など)における記述は88箇所にものぼり、多くの家庭の神棚や本棚にその著書や教科書が置かれ、誰もがその名を耳にするだけで居住まいを正した、日本で唯一の「聖人」である。
江戸時代初期、熊沢蕃山ら藤樹の直弟子たちは全国に広がり、幕末に至って、吉田松陰、西郷隆盛、勝海舟、佐久間象山らの志士たちはみな藤樹の弟子の系譜であった。さらに昭和の時代にジャパンアズNO1を実現した松下幸之助、本田宗一郎、土光敏夫らもみな藤樹の系譜の最後の弟子たちである。民間芸能でも江戸時代から書籍、講談、浪曲、芝居、浄瑠璃、紙芝居などによって、さらに昭和前期には映画、ラジオ、新聞、雑誌なども加わって、藤樹の気迫はじつに300年にわたって繰り返し上演され、再現され、日本人の血肉になった。日本民族は藤樹に学んで、旧石器時代を含む縄文4万年の「宇宙」との一体化を維持してきたのである。
2)日本民族と「宇宙」をつなぐ
中江藤樹が生涯をかけて成し遂げたのは、縄文の古代から我々のDNAに流れる日本の精神文化の核心、「神・宇宙と一体となる人間のあり方、家族のあり方」の構造を論理的に解明したことである。そして神と宇宙と人間が理屈を超えて調和して力強く和楽して生きる仕組みを紐解いた。藤樹はこれを自ら脱藩と母への献身という当時の武士としてはあり得ない生き様を通して実践した。そして明快に説き明かし、江戸時代初期の民衆を「宇宙」の申し子へと育てていった。明治以降、欧米人の物欲に侵食された日本人が、それでもなお宇宙と和楽し、強靭な精神を維持し、世界を驚嘆させる道徳心を発揮できたのは、藤樹が遺した精神的遺産に拠るところが極めて大きい。聖人・中江藤樹に学んだ熊沢蕃山、吉田松陰、松下幸之助ら日本民族は、4万年の歴史を貫いて、「宇宙」につながり、献身していた。
3)歴史の完全消去、宇宙と精神の崩壊
GHQにとって「日本精神を破壊する」「日本の家族を破壊する」ということは、中江藤樹を抹殺するということであった。GHQは、江戸初期からの古典であり日本民族の血肉となっている藤樹の思想を、単に本を燃やす「焚書」だけで消し去ることは不可能だと悟った。そこで彼らが1947年に実行したのが、「歴史の完全消去」である。 まず日本人の精神の背骨を折るために「修身」の授業を廃止。さらに子供たちの手で、教科書の中江藤樹らの記述を黒墨で塗り潰させた。これは陰湿極まる精神的テロである。続く戦後教科書においては、藤樹の記述は「88箇所」から一気に「0箇所」になった。ラジオ、映画、舞台、雑誌などの民間芸能からもその名は徹底的に検閲・自粛させられた。結果、現代日本人は、日本民族を神・宇宙とつないできた自国の聖人をほとんど知らない。あるいはその「聖人」が何たるかわからない。こうして現代日本人は「宇宙」から断絶した。「宇宙」と再接続する方法もわからなくなった。凄まじい精神的空白状態に追い込まれたのである。
4)日本人の完全弱体化、そして今後の覚醒への鍵
戦後、かろうじてまだ「宇宙」と繋がっていた日本の伝統的家族は、1970年代に団塊の世代が結婚適齢期を迎えるにあたって徹底的に破壊されていく。前回、「日本の「家族崩壊」の真実 ~失われた共同体の現実を見直す(歳時記余話)」で述べた通りである。さらに1980年代のバブル期までに松下幸之助ら藤樹の最後の弟子たちの系譜がみな亡くなってしまう。こうして4万年続いてきた日本民族の家族、先祖、故郷、伝統と歴史、精神、神々は一気に消滅していく。あとは2026年の現在に至るまで日本人は弱体化・不良化していくのみであった。 我々が今、宇宙とのつながりを回復するには、戦後体制によって闇に葬られた「生命の暗号」を、自らの手で再び解き明かさねばならない。源頼朝や徳川家康や西郷隆盛のように、島流しや人質や牢獄にあった敗者の状況から自助努力で復活するのである。その鍵はここ、中江藤樹にある。(次回に続く)
人物概要 中江藤樹(なかえとうじゅ)
1608年4月21日~1648年10月11日。江戸時代初期の儒学者・思想家。縄文時代以来の「宇宙の理」を解明し、万物の根源への感謝である「孝」と人間の内なる良心(良知)に従う「知行合一」を思想の核心とした。日本陽明学(心学)の開祖。後世に「近江聖人」と仰がれた。伊予大洲藩(愛媛県)に仕官するも、「孝」と「良知」の実践のため、私議で脱藩し、故郷の近江国小川村(滋賀県高島市)にいる老母に至孝(極めて深い親孝行)を尽くした。私塾「藤樹書院」を開き、身分の隔てなく農民や馬子まで教え育てた。
出典・参考
中江藤樹『翁問答』(岩波文庫、講談社学術文庫)
渡部昇一『決定版 日本の歴史』(飛鳥新社)※GHQの占領政策と教育破壊の構造
江藤淳『閉ざされた言語空間』(文藝春秋)※WGIPの実態
古鳥史康、他『日本の文化伝統そして日本人のこころ』(ウェブサイト)
ご参考
1)日本人の4万年の「宇宙と一体の生活」
日本人はもともと縄文の昔から、大自然の息吹の中に神々を見出し、宇宙と和楽する家族生活・社会生活を営んできた。「サザエさん」家のような、おじいちゃん、おばあちゃん、娘夫婦(または息子夫婦)、孫たちが一緒に暮らす三世代家族が日本の家族の原形である。旧石器時代を含む実に4万年もの間、我々の祖先の伝統的な家族は宇宙のエネルギーと完全に一体化していたのである。
2)「宇宙との関係」を破壊してきた外圧の歴史
この強靭にして温かな精神世界・家族生活は、2300年前の「弥生人」の渡来、1800年前の「大和人」の渡来、200年前の「欧米人」の渡来によって、徐々に侵食され破壊されてきた。そして、80年前(1945年)の「GHQ」という最大の外圧の渡来によって、ついにトドメを刺された。
3)団塊の世代の悲劇
とくに、生まれながらにGHQから洗脳された団塊の世代が結婚適齢期を迎えた1970年代、彼らは家族と同居することを拒否し、新婚夫婦だけで核家族を作っていった。すなわち4万年にわたる伝統の家族(三世代家族)を破壊していった。ここに至って日本人は神や宇宙との伝統の繋がりを完全に断絶し、自滅の道を突き進み出した。そしていま、団塊の世代をはじめとする我々日本人が直面しているのは、深刻な家族崩壊、故郷喪失、夫婦別居や離婚、無縁社会の闇、孤独と絶望、介護問題、増税、物価高、ワクチン被害、企業の所有権喪失、資源の所有権喪失、貧困化、孤独死などの悲劇である。
4)戦勝国が敗戦国を徹底的に搾取し弱体化するのは歴史の必然
この地獄絵図の根本原因は、GHQと戦後体制が国を挙げて組織的に行ってきた「日本精神の破壊工作」にある。すなわちウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)をはじめとする日本民族弱体化政策である。しかし、米国などの戦勝国が、敗戦国を徹底的に搾取し、二度と牙をむけないよう徹底的に弱体化するのは、歴史のリアリズムである。世界中どこでも当然のことなのだ。
5)問題なのは日本人自身
問題なのは、日本人自身がその欺瞞に蓋をして自滅の道を突き進んでいることである。日本のメディアが「個の自由」というインチキのプロパガンダを垂れ流しているのは、戦勝国である米国とそれに追従する戦後利得者が日本弱体化のためにやっていることだから、いわば当然のことだ。問題なのは日本人が自らそれに乗って浮かれていることだ。あるいはそれに乗って浮かれようとしていることに問題がある。
6)完全に弱体化した日本人
彼らの日本民族弱体化政策の最大の核心こそが、「日本の伝統的家族(三世代家族)の破壊」である。日本民族は家族がバラバラに解体され、必然的に故郷も破壊され、個人個人のつながりも断たれ、孤立し、大地から断ち切られた浮草のように弱体化したのだ。
7)日本民族の現在の立ち位置
かつて内村鑑三が烈火のごとき信仰心で時代の欺瞞を撃ち、小林秀雄が歴史の「骨」を噛み砕くように魂の連続性を凝視し、渡部昇一が恐れず戦後利得者の嘘を暴いたように、我々もまた、戦後メディアの洗脳を剥ぎ取り、隠蔽された真実に直面しなければならない。
