チルチルとミチルは幸福の青い鳥を求めて旅に出ました。 でも、過去の国や未来の国、さまざまな場所を探したのですが、それはまやかしの青い鳥か、太陽の下では生きられないようなもろいものであったりしたのです。 冒険から帰った次の朝、チルチルとミチルはお母さんの起こす声で目が覚めます。 「やっぱりお母さんのいるこのうちが一番だな」 そうやって何気なく愛鳥の籠を見ると、朝日を浴びたそのインコは、真っ青な羽根に見えました。 「やぁ、青い鳥がいた。本物の青い鳥が」 青い鳥は、見つけるつもりになれば、どこにでもいるのかもしれません。 本物の青い鳥さん、
ケーユクスとアルキュオネー
テッサリアの国王ケーユクスは、暁の明星へスポロスの子。アルキュオネーは、風の支配者アイオロスの娘。二人は輝かしいばかりの美貌と幸せに包まれていた夫婦でした。
ケーユクスの兄ダイダリオーンは娘の死を嘆き、パルナッソスの断崖から飛び降りました。この不幸な出来事のために、ケーユクスはイオニアのアポローンの神託を伺おうと決意しました。
テッサリアからイオニアに行くには、エーゲ海をわたる長い船旅になります。ケーユクスの決意を聞いたアルキュオネーは、何とかやめさせようとしました。風の支配者である父から、風の恐ろしさを知っていたからです。
「私も連れて行ってください。一人にしないでください」
しかし、アルキュオネーまで海の危険にさらすわけにはいきません。ケーユクスは妻をなんとか説得して、残すことにしました。
「わが父、明けの明星に誓って、月が二度みちるまでには帰ってこよう」
ケーユクス、エーゲ海の嵐の中で逝く
航海がエーゲ海の中ほどまできたある日。夜になると稲妻が光り、風も強くなり、海も大きくうねり荒れてきました。船は高く波の上に持ち上げられ、水面に叩き付けられます。水夫たちは疲れ果ててしまいました。ケーユクスもただただアルキュオネーのことを思い、連れてこなかったことを喜びました。
そして、ついに稲妻が帆柱を砕き、高い波が船を打ちくだきました。死が近づいたケーユクスは、波が自分を故郷に運んでくれるよう祈りました。
一方、アルキュオネーは、こうした恐ろしい出来事を知らず、ケーユクスの帰りを指折り数えて待っていました。夫の新しい着物をそろえたり、神々に祈りを捧げていました。とりわけ夫婦愛の神ヘーラーには香を絶やしたことがありません。
「無事でありますように。生きて帰ってこられますように。旅先で好きな女に会いませんように」
この最後の祈りだけは、唯一かなった願いでした。
女神ヘーラーは、すでに死んだケーユクスに対するアルキュオネーの祈りに絶えられなくなってきました。そこで、虹の使者イーリスを呼んで、命じました。
「イーリスよ、眠りの神ヒュプノスの館に行って、ケーユクスの死んだことを夢枕に立って伝えてもらうように」
眠りの神ヒュプノスの館
七色の衣をまとうイーリスは、大空に虹をかけながら出かけていきました。ヒュプノスの館は、どんよりとした空気に包まれ、静寂に支配されています。門もなく、館の中央に黒檀(こくたん)でできた長椅子が一つおいてあり、黒い羽布団がしかれ、黒い垂れ幕がかかっています。
イーリスは、まとわりつく夢を追いはらい言いました。
「ヒュプノスよ、もの静かな神よ、心のしずめ役、悩み疲れた胸のなぐさめ役よ、アルキュオネーのところに行って、ケーユクスの死とその遭難のありさまとを知らせなさい」
イーリスは伝えると、よどんだ空気、眠気が全身に忍びよってくるのを感じて、その場をすぐ立ち去りました。
ヒュプノスには、人間に変身するのが得意なモルペウス、鳥獣に変身するイケロス、岩や木、水に変身するパンタソスなどの息子がいます。ヒュプノスはモルペウスにイーリスの命令を伝えると、ふたたび枕に頭をのせ、心地よい眠りに身をまかせました。
モルペウス、ケーユクスの影となって
モルペウスは羽音ひとつさせずテッサリアに飛んでいきました。着くとケーユクスに変身し、アルキュオネーの枕元に立ちました。その顔は死人のように青ざめ、髪は水をふくみ、水がしたたり落ちています。そして、かがみ込んで、涙を流しながら言いました。
「この変わり果てたケーユクスが分かるかね?不幸な妻よ、これはお前の夫の影なのだ。アルキュオネーよ、お前の祈りも通じず、私は死んでしまった。嵐が船を沈めてしまったのだ!さぁ、起きて、私の冥福を祈っておくれ」
「待ってください!あなたは何処へ行かれるのですか?私もいっしょにお供をさせてください」
夢の中でアルキュオネーは叫びました。その大きな自分の声で目をさました彼女は、胸をたたき、着ているものを引き裂きました。
一羽のカワセミ
翌朝、アルキュオネーは夫が出発した海岸に行きました。ふと海の上に目をやると、得体の知れぬものが浮いています。波が近くに運んでにくると、難破した人間の体とわかり、彼女は言いました。
「お気の毒なお方、あなたにも奥さまがあり、奥さまもお気の毒に」
死体がもっと近づいてくると、それがケーユクスのものだと分かりました。その瞬間、アルキュオネーの体は宙を飛んでいました!あの小さな"カワセミ"となって。
カワセミの話 アルキュオネーより




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