(32)自閉症児の扁桃体と、癇癪・メルトダウンについて | 自閉症児の医療と療育のエビデンス情報

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よりエビデンスの高い医療と療育を提供したい。そのための情報発信です。

まず、脳内の「扁桃体」について書きます。

論文の引用ではありませんが、WEBで、簡単に描かれた図を見つけたので、紹介します。

扁桃体」はアーモンド形で、下の図では緑色で示されています。

 

 

Autism Understood のページより  一部改変)*1

 

Amygdala が 扁桃体

Limbic が 大脳辺縁系

(neo) Cortex は 大脳(新)皮質

Brain stem  脳幹

 

 

 

Amygdala(扁桃体)

辺縁系に含まれますが、ここでは独立させて紹介しています。*2

Dino Brain(恐竜脳)とか、lizard brain(トカゲ脳)と称されることもあるようです。

 

たとえば、草地で、細長くくねったものを見た時に、

「ヘビだ!」と瞬時に危機認識するのが扁桃体です。

そのあと、大脳(新)皮質が「なんだホースか」と判断してくれれば、

'panic monkey'(辺縁系)が騒ぎ出さずに済みます。*3

 

扁桃体は、

不安と関係すると、よく言われています。 *4 *5

ところで、

「扁桃体の障害が、自閉症の発症と関係する」、と言われることがあります。 *6

自閉症の幼児は、扁桃体が大きい(青年期以降はそうではない)という報告もあります。*7 *8

よく誤解されるのですが、

大きいからといって、機能が高いとか、仕事量が多いとか、そうとも限りません。

そして、

扁桃体の機能異常が自閉症の原因、というほど単純な話ではないかもしれません。

扁桃体は、脳内の他の部位とつながっているわけですから、*9

扁桃体そのものではなく、

扁桃体から脳内の他の部位に(または扁桃体に向かって)

情報が伝達されるネットワークの、どこかの問題かもしれません。

 

さて。

私が扁桃体について書いたのは、次のページの記載を見たからです:

癇癪は、大脳新皮質で起こり、

メルトダウンは、大脳辺縁系で起こる。 *10

メルトダウンって、ご存じですか。

(ここでは、福島原発事故の「炉心溶融」とは、別の話になります)

それは、子どもにとっての「過負荷」によって起こる、感情の爆発です。

日本では、癇癪やパニック(年長児の場合)と、ほぼ区別されていません。*11

 

例えば、「玩具が欲しくて泣き続ける」のが、本来の「癇癪」で、

玩具をもらえればそこで終わります。

意識的で目的があるので、新皮質で起こるというのですね。

 

いっぽう、メルトダウン*12 は、生命の危険を感じて泣き続ける、といったことで、

たとえば、「安心できるルーチンが崩れたため」、とか、

感覚過敏のため、などで起こります。

親が気にならないような音が非常に不快で泣く、ということが、ありえます。

「ヘビが怖くて泣く」のも同じことで、'panic monkey'(辺縁系)によって起こると考えます。

 

ですので、自閉症の子どもさんが泣き続けているような時、

その理由を知ろうとすることなしに、

すべてを問題行動(癇癪)として、療育者が「消去」だけで対応してしまう、ということがもしあれば、

子どもさんを損ねてしまう可能性があります。

 

「行動(泣き止まない)」の前に何があったか、何が原因で泣いているのか、理解しようとすること、

もし「メルトダウン」であれば、その原因を、取り除いてあげてください。

落ち着ける場所を、見つけてあげてください。

理解しようとする姿勢を、忘れないで欲しいと思います。

それが、子どもさん一人一人を大切にすることに、つながると思います。

 

私は、個人的に、ですが、

自閉症のお子さんが泣き止まないのは、新皮質よりも辺縁系の関与が大きいように感じます。

それは、たとえば、自分の気持ちや欲求を、上手く言葉で相手に伝えられないためであっても、

生命の、強い不安を感じて泣くのかもしれないと思えるからです。

 

不安にも、種類があって、

自閉症児特有の不安(Autism-specific anxiety)というものが、あるようです。

*13 *14

不安の種類でさえ、自閉症者は、非自閉症者とは異なる可能性があるのです。

 

応用行動分析学は、自閉症児に限った学問ではありません。

むしろ、通常の「強化」などのABA的対応が、

定型発達児に比べて「あまり響かない」ような、自閉症児も少なくないとお聞きします。

ですので、

自閉症児に対しては、まずは、

一人一人の特性や、行動の「前」を理解しようとする姿勢が必要で、

それが、よいABA療育の前提になると思います。

 

 

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*1.

 

*2.

 

*3.

https://www.sciencedirect.com/topics/medicine-and-dentistry/triune-brain

 

*4.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2882379/

 

*5.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10108338/

 

*6.

 

*7.

 

*8.

 

*9.

 

*10.

 

*11.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4788642/

米国人のかたが書いた論文ですが、中ほどで、わざわざ「日本では、…」というふうに、記載してくれています。

 

 

*12.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3719386/

 

*13.

 

*14.