ある休日の昼食後、自室で寝そべりながら本を読んでいた。
(ここしばらく、さとうみつろう氏の『0 rei』を熟読中。)
カーテンが全開の窓から見える空は、夏の盛りを過ぎて力強さを失った入道雲と、心が透き通るような澄んだ青。
湿気を嫌って窓は締めきったままだが、外は相変わらず蒸し暑いに違いない。

 

 

本を読み進めているうちに、耐えがたい眠気が漂ってきた。
今、私が一番やりたいことって、寝てしまうことだね。

身体の欲求に抗うことはできない。

思考が途切れ途切れになっていく。

別の部屋で娘と夫がしているゲームの音楽が遠のいて聞こえなくなり、

本に栞を挟むこともできないまま、すとんと眠りに落ちた。

 

 

 

 

それは目が覚める寸前のこと。

 

真っ白い空間に、光の雨が降り注いでいた。
柔らかい毛布に包まれているような安心感。
大きなものに守られている感覚。
私は「私」でさえなかった。

拡張した空間の、全てが満ちたりている。

ものすごく懐かしいけど、それは常にあったのだと。
気づけなかっただけなのだと。
まどろみの中で、涙が一筋零れる。

「私は、誰?」

 

誰かが問いかけてくる。
私って…誰だっけ?

糸をたぐり寄せるように自分の名前を思い出した瞬間、私は昼寝から覚めた。

 

窓から見える空は先ほどと変わらない鮮明な碧。
耳の感覚が戻ってきて、リビングから流れてくるゲームの音がだんだんはっきり聞こえるようになる。
娘の話し声も。

 

ああ、こっちの世界が幻だ。

 

私は、これからも幻の世界を生きていくのだ。

 

さっきの涙が頬を伝って、耳たぶを濡らした。