【檸檬】
梶井 基次郎 (著)
新潮文庫
1977年12月発行
作者は病弱だったという。(結核で31歳で没す。)
八百屋で檸檬を買って、それを握って町をぶらつき、本屋へ行って戸棚から美術本を抜き出し、
積み重ねて、その上に檸檬を載せて、そのまま本屋を出るというストーリー。
ただ、これだけのストーリー。
当然、この間の作者の心の動きが描写されるのであるが、あまりにも短い。
チョット作文の心得がある人なら、この程度の心理描写は、ブログでも書けるような気がする。
でも、彼の代表作として古典になったのだから、それなりの芸術的価値があるのは当然のこと
である。
やはり、病弱である彼から見た、心情風景の描写に魅力があると思う。
香り高い、ぎゅっと引き締まったという印象の檸檬。
それを手にしたときの、冷たい感触。
彼の病んだ体との、強烈な対比としての檸檬が、効果的に使われている。
若くして死ぬということは、本人にとっては悔しいことだろうが、堕落していないイメージを後世に残せるという意味で、芸術家としては不幸なことではないようである。