【恐るべき子供たち】
ジャン・コクトー/著
東郷青児/訳
角川文庫
1953年3月30日発行
ジャン・コクトーという名前は有名である。
だが、フランス人であるということ以外の知識をまったく持ち合わせていなかった。
だから、まったく白紙の状態でこの本を読んだ。
読みづらい。
文章の中に入っていけないのである。
こんな薄っぺらい文庫本を読むのに、1週間もかかってしまった。
尤も、途中で別の本を1冊読んでしまったのだが。
小説としては、稚拙と言わざるをえない。
登場人物の役作り、取り巻く舞台の描写、ストーリーの語り口など、どれをとっても中途半端で、感情移入が出来ない。
それでも、なにが言いたいのか、最後まで丁寧に読んだつもりである。
ただ、子供(19歳にもなっていくのだが)の不安定な心理状態、大人の理解できない精神世界については、それなりに描かれているとは
感じた。
作者は、子供の頃の気持のままストレートに書いたものと、自分で理解することにした。
でも、「分からん」という気持ちは正直なところである。
・・・・・・っで、最後の解説を読んで、ようやくジャン・コクトーという人間について理解できた。
当時のフランス、(19世紀末から第一次世界大戦まで)の、ちょっと粋がった芸術家連中の一人であることが分かった。
彼の基本は、詩人。
早熟の詩人としてもてはやされた彼の人生。
当時の前衛芸術家達との交流と別れ。
アヘン中毒の影響。
これら彼の背景全てをまず基本情報として持っておかないと、この【恐るべき子供たち】を理解できない事がようやく分かった。
な~んだ。
「それならそうと、読む前に言ってくれ」と、自分の常識のなさを棚にあげて悪態をつきたくなる。
最初と最後の雪の描写、雪合戦の白い玉と毒薬の黒い玉。つい立で囲った舞台は子供の世界と大人の現実世界。
兄弟の愛と、他人との愛。悪魔と天使。
これら全ての舞台装置がようやく理解できる。
じゃあ、これらのネタバラシを知った上で、もう一度読み直して見ますか?
・・・・・・っと問われても、正直その気にはならない。
彼を解くキーワードは、「彼の人生そのものが詩であった」っが全てであろう。
だが、彼は長く生きすぎた。早熟の天才は、74歳まで生きてはいけない。
彼が、伝説になれなかったのは、その長生きにあったと思われる。
最後に、読みにくかった原因が、訳者のあとがきで分かった。
ナンだ、(画家の)東郷青児が翻訳しているではないか。
彼のフランス語(翻訳者としての)はジャン・コクトーにとって、ちょっと気の毒だったかも知れない。