全編油絵によるアニメーションです。
ゴッホの筆使いや色彩を完璧に踏襲し、ぼくらの知るゴッホの絵画を動かせたのです。
上映時間95分を全編油絵で・・・・・
聞いただけで、気が遠くなります。
そう、とてつもない時間と労力をつぎ込んだのです。(実際には4年)
百人以上の絵描き(実際には125人)に何万枚もの絵を(実際には65,000枚)を描かせたそうです。
日本人女性も一人参加し、3ヶ月缶詰になり580枚描いたそうですが、1分にも満たない時間だったそうです。
ぼくじゃなくても思うでしょう、こんなに苦労したのにロクでもない映画に仕上げたら、承知しないぞっ!と。
しかし、素晴らしい映画に仕上がった。
愛に溢れた作品になったのです。
誰への愛?
ゴッホへの深い愛です。
参加した全ての人の、ゴッホに対する愛情が絵に乗り移ったのでしょう。
「私には絵で語りかける以外方法がないのです」というゴッホの言葉そのままを実行してみせたのです。
登場人物は全てゴッホが描いた作品の中の人物です。
作中の人物がそのまま動き語ります。
語り部となる郵便局長の息子が、親父から最後の手紙を託され、テオ(ゴッホの弟)に届けるという展開で物語は進みます。
その過程で自殺の原因に疑問が湧き、足跡を辿るうちに、ゴッホの孤独、苦悩、優しさ、優れた人間性が炙り出されてくる仕掛けです。
ゴッホ=狂人という誤解を持つ人は未だに多いでしょう。
そして、その狂気が彼を自殺に追いやったと解釈する人がほとんどでしょう。
しかし、映画では真っ向からそれらの誤解を否定します。
ゴッホを撃った犯人さえ特定します。
物語の展開はサスペンス仕立てですが、本題はそこにはありません。
あくまでもゴッホへの愛が貫かれています。
粗野だった語り部役の青年も、ゴッホの最後の人生を辿るうちに、大きく成長します。
この映画を見る観客もゴッホという人間を知ることによって、大きく変化するのです。
★★★★★