傲慢になりそうな時には気をつけよう
人間は、ほかの生き物と少し違います。
多くの生き物は、自然に適応しながら生きています。
でも人間は、知恵を使って自然そのものを変えようとしてきました。
川を治め、海を埋め立て、山を削り、街をつくる。
そのおかげで、私たちはより安全に、より豊かに暮らせるようになりました。
これは間違いなく、人間のすごいところです。
でも――自然は、それでもなお、偉大です。
科学で多くのことが解明されました。
天気予報も精度が上がり、地震の研究も進み、宇宙のことまでわかるようになりました。
けれど、自然を「抑え込む」ことはできません。
大雨も、猛暑も、寒波も、火山も、人間の都合とは関係なく起こります。
人間は自然の前では、やはり無力なのです。
気候の変化も、地球の大きな営みのひとつです。
温暖化も寒冷化も、長い時間の中で起きてきました。
その環境に合わせて動植物が生き、そして僕たちも、そこに身を置いて暮らしています。
地球というのは、無数の要因が絡み合い、影響しあい、補いあいながら紡がれている存在です。
どれか一つを人間が完全にコントロールできる、そんな単純な世界ではありません。
今僕は仕事で、北海道の阿寒湖にいます。
今年の冬は、例年よりも暖かく、阿寒湖はいつもより早く春が来そうです。
もうすぐ春です。
僕はこの時期が好きです。空気の奥に、かすかなやわらかさを感じる瞬間があります。
自然は、静かに、確実に、次の季節の準備をしています。
春の来ない冬はありません。
植物も、動物も、目に見えないところで確実に動いています。
それを思うと、僕たちは「生きている」というより、「生かされている」のかもしれない、と思うのです。
その感覚を持てたとき、不思議と感謝の気持ちが湧いてきます。
自然を尊重すること。
四季の変化に目を向けること。
季節の食べ物を味わい、風を感じること。
身近な一つひとつを、ありがたいものとして受け取る。
それだけで、心は少し整います。
日本人は、季節を二十四に分けてきました。
二十四節気という、繊細な時間の感覚。
雨水、啓蟄、穀雨、白露……
自然の変化を、美しい言葉で受け止めてきました。
こんな国に生まれたことは、実はとても豊かなことなのかもしれません。
傲慢になりそうなとき、僕は空を見上げます。
自然の大きさを思い出すと、人間の力の限界も思い出します。
そして同時に、その自然の中で今日も生きていることに、静かな感謝が生まれます。
強くなることよりも、大きくなることよりも、まずは、感じ取れる心でいたい。
そんな春の入り口です。
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