『望みは何と訊かれたら』 小池真理子:著 <新潮社>
人間の根源的欲求とは何か?
若い頃から、ひとりで外食をするのが苦手だった。
何かを食べているのを、人に見られるのが、恥ずか
しいような感じだった。
だから、カフェとかでひとりで食事をするときには、本や新聞を読みながら目を誰にも合わせずに、サンドイッチなんかを食べていた。
基本的には食事をするという行為が、本能的で根源的な欲求を満たすという行為だからかもしれない。
『望みは何と訊かれたら』
以前このコーナーで紹介した小池真理子さんの『恋』に並ぶ、傑作のひとつだと思う。
彼女が得意とする全共闘運動が盛んだった1970年を背景に書かれた長編小説 。
パリの美術館で、槇村沙織は三十数年ぶりに秋津吾朗に再会する。
彼は、学生運動の果ての凄絶な粛清リンチから身ひとつで逃走した二十歳の沙織を、半年間匿ってくれた男性だった。
主人公の女性視点で描かれる、愛のカタチ。
心身ともに困憊した主人公が飼育される中で感じる、人間の「生」の意味。
愛と死と、安心感。
小池真理子さんの、官能的で美しく、それでいて甘美で退廃的な世界に、のめりこんでください。
食べるということが、実にエロティックな行為だということが改めて認識される。
間違いなく小池真理子さんの最高傑作のひとつです。
