「水虫」と「足の裏の皮膚がん」に関係があるかもしれない、という論文が出ました | みのり先生の診察室

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2024年の論文なのですが医師サイトに掲載されていて話題になっていたのでご紹介したいと思います。

 

 

 

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1346-8138.17256

 


「水虫くらい、たいしたことない」

そう思っている人は多いかもしれません。

たしかに水虫は、皮膚科ではとてもよく見るありふれた病気です。
 

命に関わる病気というイメージは、あまりないでしょう。

でも最近、ちょっと気になる論文が報告されました。

それは、
 

足の裏にできる悪性黒色腫、いわゆるメラノーマの患者さんでは、水虫が多かった
 

という内容です。

もちろん、最初に大切なことを言っておきます。
 

「水虫があると、必ず皮膚がんになる」という話ではありません。

また、「水虫がメラノーマの原因だ」と証明されたわけでもありません。

ただ、足の裏の慢性的な炎症や角質の変化が、皮膚がんと何らかの関係を持っている可能性が示された、興味深い研究です。
 

 

 

足の裏にも「メラノーマ」はできます

 

メラノーマは、皮膚の色を作るメラニン細胞が悪性化した皮膚がんです。

「皮膚がん」と聞くと、顔や腕など、日光が当たりやすい場所をイメージする方が多いかもしれません。

でも日本人では、手のひら、足の裏、爪などにできるタイプのメラノーマも重要です。

特に足の裏は、普段あまり自分でじっくり見ない場所です。
 

そのため、気づいたときには進行していた、ということもあります。

「ただのホクロだと思っていた」
「靴ずれだと思っていた」
「水虫だと思っていた」

そんな形で発見が遅れることがあります。

 

 

今回の論文で何が分かったのか

 

今回紹介するのは、足底部の悪性黒色腫と足白癬、つまり水虫との関連を調べた日本の研究です。

研究では、足底部悪性黒色腫の患者さん30人と、メラノーマ以外の足の病気の患者さん84人を比較しています。

その結果、足底部悪性黒色腫の患者さんでは、30人中18人、つまり60.0%に足白癬がありました。

一方、対照群では、84人中25人、つまり29.8%に足白癬がありました。

つまり、足底部悪性黒色腫の患者さんでは、比較対象の患者さんよりも水虫を持っている割合が高かった、という結果です。

さらに興味深いのは、水虫の中でも、足の裏が厚くガサガサになる「角化型」の水虫が特に多かったという点です。

 

角化型の水虫は、かゆみがあまり強くないこともあります。

そのため患者さん自身が、
 

「年齢のせいで足裏が硬くなっているだけ」
「乾燥しているだけ」
「かかとのガサガサ」
 

と思っていることも少なくありません。

 

 

では、水虫がメラノーマを起こすのでしょうか?

 

ここはとても大事です。

今回の研究だけで、水虫がメラノーマの原因であるとは言えません。

この研究は、過去の診療録をもとに調べた後ろ向き研究です。

つまり、分かったのは、
 

足底部悪性黒色腫の患者さんでは、水虫が多く見られた
 

という関連です。

原因と結果までは、まだ証明されていません。

 

水虫が先にあって、その慢性炎症が関係したのか。
 

メラノーマがある足に、たまたま水虫も多かったのか。
 

あるいは、靴、歩き方、足への刺激、糖尿病、免疫状態など、別の共通する要因があるのか。

このあたりは、今後さらに研究が必要です。

 

 

それでも、この論文から学べること

 

この論文を読んで、私たちが日常生活で気をつけたいことは、決して
「水虫が怖い」と不安になることではありません。

大切なのは、足の裏の変化を、自己判断で放置しないことです。

たとえば、こんな変化がある場合は注意が必要です。

・足の裏に黒いシミやホクロのようなものがある
・以前より大きくなっている
・色が濃くなったり、まだらになったりしている
・形がいびつ
・出血する
・治らない傷がある
・水虫だと思って薬を塗っても改善しない
・足裏のガサガサが左右差をもって強い
・爪の周囲や爪の下に黒い変化がある

このような場合は、「水虫かな」「タコかな」「年齢のせいかな」と決めつけず、皮膚科で確認してもらうことをおすすめします。

 

 

水虫は、ありふれているけれど軽視しすぎない

 

水虫はとてもありふれた病気です。

だからこそ、自己判断で市販薬を塗って終わり、という方も多いです。

もちろん、市販薬で改善するケースもあります。


ただし、見た目だけでは水虫かどうか分からないこともあります。

湿疹、掌蹠膿疱症、乾癬、接触皮膚炎、角化症、タコ、ウオノメ、そしてまれに皮膚がん

足の裏の病気は、見た目が似ていることがあります。

水虫かどうかは、皮膚の一部を少し取って顕微鏡で白癬菌を確認することで診断できます。

「水虫だと思っていたけど、実は違った」
「乾燥だと思っていたけど、水虫だった」
 

どちらも実際の診療ではよくあります。

 

 

患者さんに伝えたいこと

 

今回の論文は、決して「水虫がある人はがんになる」という怖い話ではありません。

でも、
 

足の裏の慢性的な炎症や角化を、軽く見すぎないほうがいい


というメッセージとしては、とても大切だと思います。

足の裏は、毎日体重を支えている場所です。
 

靴で蒸れやすく、刺激も受けやすく、皮膚トラブルが起こりやすい場所です。

そして、自分では見えにくい場所でもあります。

だからこそ、時々でいいので、足の裏を見てください。
 

ご家族の足の裏も、機会があれば見てあげてください。

黒いシミ、治らない傷、左右差のあるガサガサ、なかなか治らない水虫。

こうした変化があるときは、早めに皮膚科で相談してください。

 

 

まとめ

 

今回の研究では、足の裏の悪性黒色腫の患者さんでは、水虫、とくに足裏が厚くガサガサになる角化型の水虫が多く見られました。

ただし、これは「水虫がメラノーマを起こす」と証明した研究ではありません。

現時点で言えるのは、
 

足の裏の慢性的な水虫や角化と、足底メラノーマには何らかの関連があるかもしれない


ということです。

水虫はありふれた病気です。
 

でも、足の裏の変化をすべて水虫と決めつけるのは危険です。

「いつもの水虫かな?」
「ただのガサガサかな?」

そう思っても、長引く場合や見た目が気になる場合は、皮膚科で一度確認してもらいましょう。

足の裏を見る習慣が、思わぬ病気の早期発見につながることがあります。

 

参考文献:
Waki Y, Nobeyama Y, Nakagawa H, Asahina A. High prevalence of dermatophytosis of the feet in acral melanoma of the foot. The Journal of Dermatology. 2024. DOI: 10.1111/1346-8138.17256. PMID: 38711284.
 

 

 

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