昨日に引き続き溝口先生の講座の続きです。
イヌイットの人々の細胞膜はEPA rich(EPAが豊富)で、食べ物をEPA richにすると私たちの細胞膜も変わってくると言われていました。
溝口先生がスライドの中で紹介されていた論文が気になって検索しました⬇
「経皮的冠動脈インターベンション後の長期心血管イベントに対するエイコサペンタエン酸とアラキドン酸の比率の影響」
についての論文です。
PDFファイルをスクショしました⬇
今日はこの論文について採りあげます。
最近、脂肪酸のバランスとして「EPA/AA比」という言葉を聞くことがあります。
EPAは魚の油に多いオメガ3系脂肪酸。
AAはアラキドン酸のことで、オメガ6系脂肪酸です。
EPA/AA比とは、簡単にいうと、
魚の油に多いEPAと、アラキドン酸のバランスを見る指標
です。
この値が高いほどEPAが多いということ。
今回は、PCI、つまり心臓の血管に対するカテーテル治療を受けた患者さんで、EPA/AA比とその後の心血管イベントの関係を調べた日本の研究を紹介します。
どんな研究?
この研究は、名古屋大学病院でPCIを受けた冠動脈疾患患者さんを対象にした観察研究です。
対象は、EPA/AA比が測定されていた831人。
患者さんをEPA/AA比で分けて、その後の心血管イベントがどのくらい起こるかを追跡しました。
EPA/AA比の中央値は0.29でした。
研究では、EPA/AA比が低い下位25%の患者さんを「Low EPA/AA群」、それ以外を「High EPA/AA群」として比較しています。
EPA/AA比が低い群の特徴
EPA/AA比が低い患者さんでは、
* 喫煙者が多い
* 心筋梗塞の既往が多い
* 急性冠症候群として治療を受けた人が多い
* 中性脂肪が高め
* EPA値が低く、アラキドン酸値が高い
という特徴がありました。
つまり、EPA/AA比が低いというのは、単にEPAが少ないだけではありません。
この研究では、低EPA/AA群ではEPAが低く、AAが高いという、より“AA優位”な脂肪酸バランスになっていました。
どんなイベントを見たの?
この研究で見た主な心血管イベントは、
* 心血管死
* 非致死性心筋梗塞
* 虚血性脳卒中
です。
再PCIなどの血行再建ではなく、かなり重要度の高い「ハードイベント」を見ている点がポイントです。
追跡期間の中央値は1,206日、約3.3年でした。
結果は?
結果として、EPA/AA比が低い群では、心血管イベントが有意に多くなっていました。
MACEというのはMajor Adverse Cardiovascular Events の略です。
日本語ではよく、主要心血管イベント または 主要有害心血管イベント と訳されます。
上のグラフを見るとEPA/AA比が低いほうが心血管イベントが多いことがよく分かります。(赤線)
イベント数は、
* High EPA/AA群:600人中53人
* Low EPA/AA群:231人中32人
でした。
単純な割合で見ると、
* High EPA/AA群:約8.8%
* Low EPA/AA群:約13.9%
です。
つまり、EPA/AA比が低い患者さんでは、その後の心血管イベントが多い傾向がありました。
さらに多変量解析でも、Low EPA/AAは心血管イベントの独立した予測因子でした。
ハザード比は1.92。
つまり、この研究では、EPA/AA比が低い患者さんは、そうでない患者さんに比べて、心血管イベントリスクが約1.9倍高いという結果でした。
なぜEPA/AA比が大事なの?
EPAとアラキドン酸は、体の中で炎症や血小板凝集、血管反応に関わる物質の材料になります。
アラキドン酸からは、炎症や血小板凝集、血管収縮に関わるメディエーターが作られます。
一方、EPAは同じ経路に関わりますが、EPA由来のメディエーターは、一般にアラキドン酸由来のものより炎症や血栓形成を促す作用が弱いと考えられています。
そのため、EPAが少なく、アラキドン酸が相対的に多い状態では、炎症・血栓・動脈硬化の方向に傾きやすい可能性があります。
これが、EPA/AA比が注目される理由です。
ただし、注意点もあります
ここで大事なのは、この研究は観察研究だということです。
つまり、
EPA/AA比が低い人で心血管イベントが多かった
という関連は示しています。
しかし、
EPA/AA比を上げれば必ずイベントが減る
と証明した研究ではありません。
EPA/AA比が低い人は、喫煙、食生活、糖代謝、腎機能、炎症状態など、他の要因も関係している可能性があります。
ですから、EPA/AA比だけで治療方針を決めるのではなく、LDLコレステロール、血圧、糖尿病、喫煙、腎機能などと合わせて考える必要があります。
JELIS試験とのつながり
EPAと心血管イベントの関係で有名なのが、JELIS試験です。
JELIS試験では、日本人の高コレステロール血症患者さんに、スタチン治療に加えて高純度EPA 1,800mg/日を追加したところ、主要冠動脈イベントが有意に減少しました。
JELIS試験では、LDLコレステロールの低下は両群でほぼ同じでした。
つまり、EPAの効果は単にLDLを下げることだけでは説明しにくく、炎症、血小板凝集、血管内皮機能、プラーク安定化など、多面的な作用が関係している可能性があります。
今回の研究は、そうしたEPAの臨床的意義を考えるうえで、EPA/AA比という指標が参考になる可能性を示したものです。
食事ではどう考える?
EPA/AA比を考えるうえで、まず意識したいのは魚です。
EPAは、サバ、イワシ、サンマ、アジ、ブリなどの青魚に多く含まれます。
一方、アラキドン酸は肉や卵などに含まれます。
だからといって、肉や卵をすべて避ける必要はありません。
大切なのは、肉や揚げ物に偏りすぎず、魚を増やすこと。
特に、冠動脈疾患がある人、PCI後の人、脂質異常症がある人では、食事全体の中で魚を取り入れることは意味があります。
まとめ
EPA/AA比は、魚の油に多いEPAと、アラキドン酸のバランスを見る指標です。
日本の研究では、PCIを受けた冠動脈疾患患者さんで、EPA/AA比が低い人ほど、その後の心血管イベントが多いことが示されました。
ただし、EPA/AA比はあくまでリスクを考えるための補助的な指標です。
この数値だけで治療を決めるのではなく、LDLコレステロール、血圧、糖尿病、喫煙、腎機能などと合わせて見る必要があります。
食事では、肉や揚げ物を極端に怖がるのではなく、魚を意識して増やし、脂肪酸のバランスを整えることが現実的です。
油は「良い」「悪い」で単純に分けるのではなく、種類、摂り方、酸化状態、そしてバランスで考えることが大切です。
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参考文献
Niwa K, Tanaka A, Funakubo H, et al. The Influence of Eicosapentaenoic Acid to Arachidonic Acid Ratio on Long-term Cardiovascular Events Following Percutaneous Coronary Intervention. Internal Medicine. 2021;60:3865-3871.
Yokoyama M, Origasa H, Matsuzaki M, et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS). Lancet. 2007;369:1090-1098.
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溝口先生が講義の中で使っておられたイラストが分かりやすかったので、Aiに作ってもらいました。
普通に生活している日本人はEPA/AA比が0.5くらいなので、これを1.0以上に上げてあげることが必要。
そのためには青魚を中心に魚を食べるようにする、手軽にEPAを摂るならサプリメントが便利です。
私は魚中心の食生活で育ちました。
父が釣りが大好きで週末になると夜釣りに出かけて、日曜日の朝に釣ってきた魚をさばいて刺身にしてくれていました。
メバルの煮付けも美味しかった。
キスのフライなんて普通食べられないようですが、毎週のように食卓に上がっていました。
田舎でほぼ自給自足だったので肉を食べる習慣がありません。
だから肉は苦手でした。
食べるとお腹がもたれてしんどくなる。
焼肉なんて行ったら途中で胃が痛くなる。
得に牛肉は食べ付けていませんでしたから。
ところが・・・
栄養療法を受けて肉が食べられるようになってからというもの、今は肉派に完全シフト。
ほとんど魚を食べなくなっていました。
肉大好きなので外食する時も肉がメイン。
家でも肉メイン。
卵も毎日必ず食べる。
ということは・・・私の体はアラキドン酸richになってるかも![]()
自分の食生活を見直そうと思います。
肉ばっかりじゃなくて、魚もしっかり食べようと思いました〜![]()
皆さんも好きだからと1つの食材に偏らず、バランス良く色々なものを食べましょうね。
患者さんのリクエストで復活させた
化粧品と発酵素するりの記事は
コチラ![]()
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