手術室から戻ってきた長男の様子が
明らかにおかしかった。
手術した腕は見えない。
喉が渇いた!
痛い!と大騒ぎしている。
焦点はあっているような、いないような。
「よく頑張ったね。えらいよ。
もう無事に終わったから大丈夫だよ」
と声をかけても、まったく聞こえないかのように泣き続ける。
……母が癌の手術をした後も
せん妄状態でひどく意識が混乱していて呼び出され、しばらく待機していたがそんな感じなのだろうか。
脈拍もランプが点滅して
高熱。
「2時間は水分はとれません。
頭も起こさないようにしてください」
と看護師に言われ、
夫と息子、3人だけになった部屋で病室の時計が1分、1秒進むのが遅く感じられた。
熱のせいで頬が真っ赤になった息子が
喉の渇きと腕の痛みをひたすら訴える。
「少しならいいのかなぁ。お茶飲ませてみる?」
と夫が息子の気迫に負けそうになっている。
……この人はなんでいつもこうなのだろう。
手術中の待機時間もそうだが思ったことを簡単に口にだして勝手すぎる。
「そんなこと聞いたら今だって限界なのに期待して水が飲めると思っちゃうじゃん。
病院から許可が降りないってことは
身体によくないからでしょ?
意識朦朧としていて危ない。
いくら泣かれても待つしかないときだってあるよ。」
「だけどさぁ……」
「2時間経つまでなんとか辛いのを
紛らわせるしかないのわかんないの」
