時平の桜、菅公の梅/奥山 景布子
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800年代後半~900年代初めにかけて、藤原時平と菅原道真の確執を描いた作品です。



 

1000年以上も昔の出来事を題材にしておりますが、二人の男の争いはまるで

現代の政治闘争の様相を呈しています。

 

歴史小説でもあり、政治小説でもある。

 

そんな奥の深い作品になっています。



 

タイトルとカバーの絵が美しいですね~

 

道真の梅好きは有名で、紅梅殿というあだ名もありました。

 

邸にも梅の木があったようで、左遷されるときに詠んだ歌




 

東風吹かば  匂いおこせよ  梅の花

 

 

 

 

    主なしとて 春を忘るな




 

は、あまりにも有名ですね~




 

一方の時平の桜は、調べてみたところ特に関係なさそうで、作者の創作かな?と思います。

 

作中では、時平の妹、醍醐天皇女御の穏子に

 

「兄君は桜が好きで、邸の桜の木の下で業平の歌を歌う。」

 

というセリフを言わせています。



 

業平の歌とはもちろん、




 

世の中に  絶えて桜の なかりせば


 

    春の心は  のどけからまし




 

でしょう。





 

また、こちらも左遷されるときに道真が詠んだ歌ですが、




 

桜花  主を忘れぬ ものならば

  

    吹き込む風に  言伝はせよ




 

この歌からすると、道真邸には桜の木もあったのか?と思いますが、それはおいといて・・・・・


 

作中では、この歌を



 

桜花  友を忘れぬ ものならば

  

    吹き込む風に  言伝はせよ



 


 

とアレンジし、大宰府への道中から時平に送った歌として使われています。

 

こうすると、時平を桜になぞらえているような歌になって、時平と桜が関連性を持ってきます。

 

奥山氏の創作でしょうが、ナイスアレンジですね~




 

 

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「孤高の秀才 菅原道真 × 凡庸な貴公子 藤原時平」


 

「二花は並ばぬ運命」




 

本の帯に書かれていた文面です。





 

確かに道真は孤高の秀才でした。

 

元々学問の家に生まれ、自信も努力を重ね、漢文・漢詩の素養はもとより、

政治家としても税制や戸籍制度の立案やら、国史編纂事業やらで、他の追随を許さない

圧倒的な能力を示します。



 

しかし、学問的な能力だけでは通用しないのが政治の世界の難しいところ。



 

藤原氏や源氏など名門貴族の嫉妬や反発


 

宇多天皇からの厚すぎる信任


 

自らの理想を貫きたくとも貫けないもどかしさ



 

人間関係の難しさ、複雑さを誰よりも痛感していたのが道真ではないでしょうか?


 

それは、彼の詩の中にも現れています。

 

 

http://ameblo.mom/doublemoon2416/entry-10946188263.html






 

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一方の時平ですが、

 

こちらは政治家ですね~(ノ゚ο゚)ノ(ノ゚ο゚)ノ

さすがは藤原北家の嫡男!


 

うるさ型の源光、義父の源湛、伯父の国経らを上手に懐柔しながら折り合いをつけている様子は

とても「凡庸な貴公子」ではありません。


 

性格的にも、よく笑って、お酒も嗜み、笛も得意で、和歌も好む。

道真とはタイプが違いますね~



 

ただ、皮肉なことに政策的に理想とするところは時平と道真ではほぼ同じとして描かれています。

違うのは、世代、身分、境遇、そして理想を実現するまでの方法論。


 

学者タイプの道真と政治家タイプの時平・・・・・


 

所詮は二花は並ばぬ運命、ということでしょう。






 

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作中には、時平の親友として紀貫之も登場します。


 

当時の宇多天皇は和歌を好む人物だったようで、宮中でしばしば歌合などの行事を催していました。


 

漢文の方が格上と見られていた当時にあって、和歌が文芸として認められる、

そんな芽が出始めたころだったようです。





 

宇多上皇が催した「女郎花合」に判者として活躍する貫之が描かれています。

 

そのときに貫之が詠んだ歌がこちら。




 

小倉山  峯立ちならし 鳴く鹿の


 

    経にしむ秋を  知る人ぞなき




 

各句の頭に「おみなえし」をつけた折句の手法が使われたもので、

時の醍醐天皇がお気に召されたとか?





 

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また、三十六歌仙の一人、伊勢も登場します。


 

彼女は、時平とも、その弟の仲平とも関係があり、その後は宇多天皇の寵をうけ皇子を生むも、

その子は早世。

天皇出家後は、敦慶親王と結婚して中務(歌人、三十六歌仙の一人)を生む、という

波乱に満ちた生涯を送っています。



 

百人一首にある





 

難波潟 みじかき芦の ふしのまも


 

   あはでこの世を  すぐしてよとや





 

は、その誰に向かって詠んだのやら?

 

 

 

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また、作中には、時平が戯れて伊勢の扇を奪うという場面があり、

その扇に記されていた歌がこちら。






 

世の中に  いづらわが身の ありてなし


 

   あはれとや言はむ  あな憂とや言はむ






 

詠み人知らずの歌ですが、とても印象的だったので、書きとめておきます。

 

 

 

 


そして、こちらは本当に伊勢作の歌。

 

 

 

 

 

 

世の常の  人の心し  まだ見ねば

 

 

   何かこのたび  消ぬべきものを

 

 

 

 

 

仲平との間が疎遠になったときに詠んだ歌として使われています。

 

 

 

 

こんなふうに、素敵な歌がたくさん出てくるのも、この小説の魅力ですね~(^-^)/


 

 

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奥山景布子さんは、まだお若いので著作は少ないものの、

専門が源氏物語や蜻蛉日記などということで、その頃を描いた歴史小説を書いておられるようですね~


 

王朝時代の物語らしく文体も格調高い雰囲気で、とてもよかったです。



 

また一人、好きな作家が増えて嬉しいですo(^-^)o