胃酸不足は万病のもと
中村 篤史/ナカムラクリニック
2025年3月29日
だいたい西洋医学というのは、悪役を設定するものです。
「高血圧を放置しては危険だ」
「コレステロールが高い。そのうち脳梗塞になるよ」
「こんなに高い尿酸値で、痛風発作を起こしても知らないよ」
医者からさまざまな脅しを受けて、薬を飲み始める。しかしこの薬のせいで、本当の病気になっていく。そういうパターンがあまりにも多い。
僕の仕事の半分は、薬害の治療です。
ワクチンを含め医薬品がこの世に存在しなかったら、現代の病気の半分は存在しない。それぐらいに言っても過言ではないと思います。
西洋医学的には、胃酸は「悪党の一味」です。
「胃酸のせいで胸焼けになる。胃薬を飲めば楽になるよ」
なるほど、処方された胃酸抑制薬で、確かに逆流性食道炎が楽になる。
しかし今回、僕が言いたいのは「胃酸不足は万病のもと」ということです。
たとえば、胃薬(胃酸抑制薬)を飲むと胃癌になりやすいし、
認知症のリスクも上がるし、
リウマチにもかかりやすくなります。
胃酸を抑える薬のせいでさまざまな病気になるのはもちろん、たとえ胃薬を飲んでいなくても、多くの病気の背景には胃酸不足があります。
たとえば、喘息。
西洋医学的には、喘息とは「気道の慢性炎症」であり、対処法としてステロイドなどの気管支拡張薬が使われますが、これは間違っています。あるいは少なくとも、この考え方では根本的な治癒には至りません。
正しくは、喘息とは、胃酸欠乏による未消化物の毒性が、(たまたま)呼吸器に現れた状態のことを言います。
だから、毒性が皮膚に出ればアトピーになるし、関節に生じればリウマチになります。精神に来ればうつ病などになります。
これは最新の知見ではなく、大昔から言われていたことです。
未消化物はインドのアーユルヴェーダ医学ではアーマと呼ばれて、これが万病のもとになります。
実際、小児喘息の子供たちの胃酸分泌量を調べると、8割の小児で胃酸分泌量が少なかった。
ひょっとしたら、みなさんも経験があるかもしれません。子供のときに喘息でも、大人になるにつれて勝手に治っていった人はいませんか?
そう、喘息は自然治癒します(ただしステロイドなどの薬で症状を抑え込むと治りません。これはアトピーなど他の病気も同じです)。なぜ治るのかというと、成長するにつれて胃酸分泌が正常化し、アーマ(未消化物)が減少するからです。
実際のところ、喘息を治すのに子供の成長を待つ必要はありません。介入的に、子供の胃酸分泌を高めてやればいい。
食直前あるいは食事中に、塩酸とペプシンを投与してやる。いわば、人工的な胃酸を投与した格好です。これを3か月続けると、喘鳴(「ぜーぜー」)が減少し食事量が増え体重も増えた。喘息が軽快したわけです。
「ああ、よかった!これはすごい」ということで、塩酸とペプシンをやめると、また症状をぶり返す子供がいる。そこで、しっかりと食事制限をする。「小麦はダメ。牛乳もやめときな」と。すると、今度こそしっかり治っていく。塩酸とペプシンをやめても、喘息は再発しなかった。
喘息だけではありません。リウマチでも同じことです。
リウマチ患者で胃酸分泌量が少ないことは、大昔から分かっていましたし、胃酸を補うと関節炎が治ることも分かっていました。
同様の研究は山ほどあります。
胃酸の分泌量は罹病機関と逆相関していました。
つまり、リウマチを長くわずらっている人ほど、胃酸分泌が少なかったということです。
さらに、リウマチがひどい人ほど胃酸分泌が少ないということも言えます。
逆に、なぜか胃酸分泌が復活した人では、それに伴ってリウマチ症状も改善していきました。
みなさん、リウマチにかかったら、病院の何科を受診しますか?
関節の病気だから整形外科?
リウマチは関節滑膜に対する自己抗体が原因、つまり免疫の病気だから、膠原病内科?
どちらも間違いです。
リウマチは胃酸不足に起因する消化器系疾患であり、また同時に、全身性の炎症性疾患でもあります。
根本的な考え方が間違っているのだから、整形外科に行っても膠原病内科に行っても治癒することはありません。消化器内科に行くと「うちじゃない」と言われるはずです(笑)
メトトレキサートみたいな、免疫抑制剤だか抗癌剤だかよく分からない毒物を延々飲み続けることになる。こんな治療で根本解決するはずがありません。
患者に「喘息は(リウマチは)、胃腸の病気だよ」というと、ポカンとした顔をされます。心の声としては、「気管支の病気(関節の病気)に決まってるでしょうが。何を言ってるんだこのヤブ医者は」というところでしょう(笑)
でも、上記の説明にあるように、胃腸の病気だという解釈も可能で、僕はその考え方に沿って、食事なり栄養なりの助言をしています。
「逆流性食道炎の人は胃酸が出てないからね」などというと、患者はますます不可解な顔をして、「しまった!頭のおかしい医者にかかってしまった!」てなもんです(笑)
「胃酸が出過ぎていて、それが食道に逆流して胸焼けがする。それが逆流性食道炎でしょうが。胃酸が出てないせいで逆流性食道炎だなんて、意味が分からない」
そうおっしゃりたい気持ちは分かります。
しかし、僕が今回言いたいことは、「胃酸不足は万病のもと」ということです。この万病のひとつとして、逆流性食道炎も例外ではありません。
食道と胃の境い目、このあたりを噴門というのですが、そのやや上部、食道の下のほうに下部食道括約筋(LES)という筋肉があります。この筋肉の性質として、胃のpHがしっかり低いと(pH 1~3)しっかり収縮するというのがあります。
食事をして、胃液がしっかり出ると、LESがしっかり締まる。そのおかげで、胃内容物が食道側に逆流しないんですね。しかし、さまざまな原因で、胃酸がしっかり出ず、胃内pHがアルカリに偏ると(pH 5~6)、LESがゆるゆるで、全然しまらない。そのせいで、胃の内容物が食道側に逆流します。
もうひとつ、胃酸分泌が十分ではないせいで、タンパク質の分解ができず、腸内で異常発酵が起こり、ガス産生が亢進する。あるいは、消化力が低いので、胃内容物が長時間胃に滞留する。
このガス産生とか胃内容物のせいで腹部膨満感が強くなり、胃内圧が上昇して、ますます胃酸逆流が起きやすくなる。消化酵素のペプシンとか胆汁は、食道の粘膜を強い刺激になる。そのせいで、食道炎が起こるということです。
「鉄剤を飲み、タンパク質をしっかり食べてプロテインを飲んで、病気を治そう」という健康法がありました。
僕はこの健康法で失敗した人を数多く見てきました。今でもよく見ます。
この失敗の原因は、胃酸の分泌量(消化力)に目を向けないことによります。ろくに胃酸が出てないにもかかわらず(消化力が弱いにもかかわらず)、タンパク質の大量摂取を勧めては、体内でアーマ(未消化物)が大量発生し、体はその処理に難渋し、症状は悪化するはずです。
根本的な解決は、胃酸をしっかり出すことです。
梅干しを食べたり、酢や柑橘類など酸っぱいものをとる。あるいは、ヨモギやゴーヤなど苦いものも胃酸分泌を高めてくれます。
これは、逆流性食道炎に対する解決というだけではありません。万病に対する対処法であるとも思っています。
下手なサプリよりも梅干しが一番ですよ。
2024年9月に東京でオーソモレキュラー医学会のシンポジウムがあって、そこでサッカー元日本代表の鈴木啓太氏の講演が印象に残った。鈴木氏はこんな話をしていた。

「2004年アテネオリンピックのアジア最終予選のときのことです。ドバイに到着して3日後くらいから、一人また一人と下痢に苦しむ選手が増えていき、最終的には代表メンバーの23人中18人が下痢になりました。それも単なる下痢ではありません。
しかし僕は代表23人のメンバーのうちで、下痢をしなかった5人の一人でした。なぜ下痢をしなかったのか。僕はその理由をはっきりと言えます。
それは食後にはいつも温かい緑茶を飲み梅干しを食べていたからです。
静岡出身だからというわけでもないのですが、海外遠征にはいつも緑茶を持参します。それと、祖母から代々続く手作りの梅干しも持っていきます」
僕は初診の患者には、必ず「梅干しを食べていますか」と聞くようにしている。
上記の鈴木氏の話は、梅干しの食中毒予防効果の見事な実例になっているが、梅干しの効用はそればかりではない。
梅干しを食べると唾液分泌が促進されることは、みなさん経験上ご存知でしょう。しかし促進されるのは唾液分泌だけではなく、胃液分泌も含め消化系全般が活性化します。
以前の記事で、喘息、アトピー、リウマチは胃酸が出てないことが原因だと指摘したけれど、梅干しはこれらのアレルギー性疾患(自己免疫疾患)の改善の一助にもなる。
「梅干しを食べれば、唾液がわき胃液がわくということは、胃酸逆流の人にとってはかえって症状が悪化するのではないか?」と思う人もいるかもしれないけれど、研究の示すところはむしろ真逆です。
梅干しの腸内細菌叢に対する影響について、こんな論文がありました。
【背景と目的】梅干しを食べると胃内のピロリ菌が丸く変形して動かなくなり凝集して働きを失う効果(ピロリ除菌には抗生剤よりも梅干し!)が確認されているが、梅エキスの投与による腸内細菌叢への影響を検討する。
【方法】ピロリ菌陰性かつ胃粘膜に萎縮のない健常者をA群、ピロリ菌陽性かつ胃粘膜に萎縮のある者をD群として、梅エキスを4週間投与した効果を見る。
【結果】梅エキス投与により、D群でバクテロイデスが有意に増加した。
萎縮性胃炎のある人とない人とで、クロストリジウム属の組成に有意差があるとか、梅エキス投与によりバクテロイデスが増えたとか、いくつかの知見が得られたけど、重要なことは、梅エキスの投与により腸内細菌叢が変化したことです。
2022年7月日本人の腸内細菌叢を語る上で、重要な研究が発表されました。
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https://www.ncgm.go.jp/pressrelease/2022/20220720.html
4200人を対象とした大規模研究で、膨大な生活習慣や臨床情報、腸内細菌叢を統合した世界初の大規模マイクロバイオームデータベースを構築しました。この研究で数多くのことが分かりました。
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たとえば、食事、生活習慣、疾患、薬剤、これらが腸内細菌叢に影響を与えることはもちろんだけれども、これらのうちどれが一番影響が大きいと思いますか?
「食事」かと思いきや、なんと、「薬剤」でした。
薬が腸内細菌に及ぼす影響は圧倒的で、食習慣、生活習慣、運動よりも3倍以上も強かった。
これは驚きです。食事とかライフスタイルの影響がもっと強いと思っていたら、薬がダントツというのだから。
では、どのタイプの薬が最も腸内細菌に影響するのか?
抗生剤?抗癌剤?
違います。
なんと、消化器疾患治療薬だった。要するに胃薬です。
これも驚きです。抗生剤は、腸内細菌を根こそぎダメにするし抗癌剤は腸内細菌を含め癌も正常細胞も全部ダメにするイメージだったけれど、そんな抗生剤よりも抗癌剤よりも、タケキャブ(胃酸抑制薬)のほうが腸内細菌叢に影響が強いというのだから、ものすごく意外です。
さらに、こういう薬というものは、単剤で投与されるよりは、ちゃんぽんで使われていることが多いものです。つまり、糖尿の薬を飲んでいる人は、それだけを飲んでいるのではなく、コレステロールを下げる薬とか胃薬とか、他の薬も併用していることが多いものです(ポリファーマシー)。
そのような多剤併用は腸内細菌叢にどのような影響をするのか。
分かったことは、薬剤投与数が増えるにつれて、腸内の日和見感染症を引き起こす病原菌が増えることです。特に、腸球菌、クレブシエラ菌、アシネトバクター、肺炎連鎖球菌などが薬剤投与数とともに腸内で増加していた(正の相関)。
では、これらの多剤投与により変化した腸内細菌叢は、もう戻らないのか。それとも、薬をやめればまた回復するのか。
幸いにも、薬剤中止により腸内細菌叢への影響が減少することも同時に示されました。
上記研究の分析対象にはなっていないけれども、個人的には、ワクチンの腸内細菌叢に対する影響はかなりのものだと思っている。
たとえば、コロナワクチンを受けた人では、接種から9か月後に腸内のビフィズス菌が消失していたという報告があるし、
授乳育児中の母親がコロナワクチンを接種した場合、その児のビフィドロバクテリアがゼロになっていたという報告もある。
コロナワクチンではなく、小児の定期接種ワクチンによっても、腸内細菌は壊滅的なダメージを受けます。これについては以前の記事で触れたことがあります。
https://note.com/nakamuraclinic/n/n7001c4a7f5f7
とにかく、腸を健康に保つうえで大事なことは、まず、薬を飲まず、ワクチンを打たないことです。
病院なんて行くと、すごく軽いテンションでお薬を勧められます。
「胸がムッとする?じゃ胃薬出しておきますね~」
歯医者いっても、簡単に抗生剤出されますよね。
医者から軽く処方される薬を、軽く飲んではいけません。
逆に、積極的に行いたいこととして、毎日梅干を食べ、唾液や胃液で消化管を潤す。
たとえば、家族や友人たちと外食に行き、牡蠣を食べたとする。何人かが当たって、嘔吐や下痢の症状が出たりしますが、そういう状況であっても、全然おなかを崩さない人っているものです。
O-157騒動のときもそうでした。死者が出るほど重篤な症状が出る人がいる一方で、同じものを食べてもケロッとしてる人がいました。
上記の鈴木氏の証言もそうです。他の全員がばたばたと下痢で倒れる状況下でも自分だけは倒れない。どうすればそんなタフな胃腸になれるのか。
そのヒントのひとつが、梅干しです。除菌や抗菌薬の投与は決して根本解決にはなりません。真理は遠くにではなく、案外足元にあるものです。
ちなみに、鈴木氏がアテネ五輪に持参したという緑茶と梅干しは、相性的にも最高であることが実験で示されています。

論文を読むと、著者らは、梅干しによる胃酸分泌促進効果と、梅干しによる胃潰瘍治癒効果を、どのように記載すればいいものやら、困惑しているように思われます。
これは、結局のところ、世間の認識が間違っているということです。以前の記事で書いたように、「胃酸分泌こそ胃潰瘍の原因」であり、胃酸分泌を促進する梅干しは、胃潰瘍の救世主というのが本当のところです。
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