書くことが出来なかった。
心に余裕がない。辛くて苦しい。
サバちゃんの容態が悪化して、付きっ切り、と言ってもいい。
欲しがって食べていて、その食べている最中に器に向けて吐き戻してしまった。
そこから、吐いて吐いて。
抗ガン剤を順調に進めて行けていると思っていたのに、吐いて吐いて、もちろん食べることも出来ず、
ちょっとだけ飲んだお湯すらも滝のように吐く。
希望的観測だなんてもう言ってらない。
こんな急激にだけれど、この子の命は既に出戸際なのだろうか。
二日にわたって吐いていてもちろんお薬どころではないので、通院決定。
こんな辛いときに限って、夫は出張。大事な時はいつも出張なのだ。
その日は嵐のような風雨。
朝の5時にたたき起こして、タクシー使うからアプリを入れて?と夫に頼む。
いつだったか、家の郵便受けにタクシーを呼ぶアプリのチラシが入っていて、
わたしは、いつか使う時があるかも、と、見えるところに取っておいた。
それがこんな早くに使うことになるとは。
タクシーの呼び方を教えてもらい、夫はダッシュで出張していった。
わたしは、サバちゃんをキャリーに入れて(リュック型)、撥水の風呂敷でリュックを包んだ。
アプリを起動して呼ぶが、こんな悪天候なのでつかまらない。
朝イチで行きたいが、予約しているわけでもないので、何度かトライして、やっと配車された。
初めての経験。これでもう、夫がいなくても受診できる。
診察室で、二日にわたってひどく吐き続けていることを話した。
脱水もしており体重ももちろん減っている。
先生は、血液検査をして、嘔吐の原因が、腎不全の悪化でもなく何かの感染症由来でもないことを確認して、こう言った。
「こう状態が悪いということは、ローグレードの薬が効果がないと思うしかないです。吐き気も止めたいし、脱水も解消しないといけない。
このままローグレードの薬を飲んでも意味がないので、一時的にハイグレードの抗がん剤を投与します。
4種類の薬を組み合わせて使うような治療が多いですが、今回は酵素に効くハイグレードの薬で、副作用が少ないものを使用して癌細胞をガン!と減らします。副作用は少ないけれども、まれにアレルギーを起こす子がいるので、今日半日預かります。観察しながら点滴を打って、抗がん剤を打って、吐き気止めも打って、脱水も解消します。夕方迎えに来てください。」
わたしはサバちゃんを託してバスで帰宅した。
もちろん一睡もしていないし、胃がキリキリと痛んで辛い。
ドラッグストアで喜びそうなパウチや缶詰を買い、自分はレトルトのお粥。
帰宅したら12時だった。
痛む胃に太田胃散を大量に放り込み、何とかお粥を食べて、お腹にカイロを貼った。
18時には起きて迎えに行かなくてはならないので、睡眠薬を三分の一だけにして飲んで、仮眠した。
起きてまたバスで迎えに行く。
帰るときに「先生、この子は、ローグレードではなく、ハイグレードのガンになったんですか?」と尋ねたら、
「いえいえ、それは違って、あくまでもローグレードです。それは細胞の大きさが違うので明らかに差があり、間違いはありません。
ただ、この子はステロイドを日常的に飲んできたので、薬を排出する力が強いのだと思います。
今後も状態が安定していればローグレードの治療で、こんな風に悪化したらまた今回のような治療を挟む、という方針で行こうと思っています。」とのことだった。
なんでも、食べられるものを、ごう少量ずつ与えてください、とのこと。
けれども、一時的に回復しても、今度は便の異常が出始めた。
土曜日から下痢が始まった。軟便から、血便、粘膜便、水様便。
日曜日、わたしが眠りから覚めたら、下痢でトイレは満杯だった。
ああ、可哀想に、申し訳ない…。
さらには嘔吐もした。
二つの症状が二日にわたって連続したら受診、と言われている。
今夜、本当なら抗がん剤を飲ませる日なのだが、こんなに下痢をしていても飲ませて大丈夫なのか。
わたしが病院に行くことはたやすいが、サバちゃんには過大なストレスになる。
気安く連れて行きたくはない。
嘔吐は止まって、少量の固形物を食べたので、お守りにもらった整腸剤を混入出来たが、
そんな量では全然必要量に達していない。
朝までの様子を見て、電話相談にしておくか、受診したほうがいいか、決めようと思っている。
祈ってくれている人がいる。
祈りは有効である。
わたしに、「難しいと思うけど、執着を手放して。そして淡々とやれる仕事があるならやっていて。」と助言をくれた人がいる。
その通りだと思う。
サバちゃんは覚悟して、わたしの身代わりに自分がガンになったのだ。
だから、それを取りやめにはもうできない。
何とか少しでも状態が良くなって欲しい。それはサバちゃんの辛さを取り除きたいからだ。
いなくなっちゃいやだ。一人にしないで!
けれども、身をよじって苦しんでいる様子を見ると、
そう遠くない将来、治療をあきらめる選択をしなくてはならないのかもしれないと心によぎる。
サバちゃんなしの人生なんて嫌だ。
ずっと一緒にいられると思ってた。
普通に20歳くらいまで生きてくれると思ってた。
だからおろそかにしたり、邪険にしてしまったわたしの罪!
どんなに自分を責めても時間を巻き戻せない。
助けて
助けて
助けて…。

2021.12月