歯を抜いて来ました。 

右下の一番奥の歯です。 

ベテランのP先生、あらまあ手際が良くて、たったの15分ぐらいの間に、抜歯を済ませ、二針縫って傷口を塞いでしまいました。

3時間ぐらい経って麻酔が切れてきたとき、歯茎は痛み、右の頬はプクッと腫れ、口の中には血の混じった唾液が溜まり、、と、少々みじめな状態。気持ちも落ち込みかけました。

でもまあ、ひとのからだって良くできてるんですね。

そういう状態は2時間足らずで終わり、気がついたら私はお腹の空くのに我慢できなくて、おじやを作っていました。 

なぜそんなことになったかというと、私はそれまでずっと、歯に包帯をしていたのです。いや、もっと正確に言うと、抜歯した傷口にガーゼを当ててあって、私はそれが外れないように、3時間ほど上下の歯を噛み合わせたままだったのでした。 

当然、モノを話すのは不自然になる(フランス語医は口を大きく動かして発音する言語)、飲まず食わずです。除菌液を買いに行った薬屋では、薬剤師さんがそんな事情を分かってくれて助かりました。 

痛い経験でしたが、反面、いくつか発見もありました。 

口の中の傷って、意外に速く回復する。 

手術の後の傷は、怪我みたいなモンです。体はピンピンしているから、当然お腹が空きます。もー、我慢できん!と思って、噛みしめていた包帯を吐き出し、ご飯を食べ始めると、あら不思議、なんとかモノを噛めるとは! これ、私の食い意地のためだけではないと思いますよ。


奥歯が一本無くても、モノを食べられる。それも、結構マトモに。 

右奥歯があったときよりも楽にモノを噛めたのは、嬉しい驚きでした。右奥歯があったときは、歯の根が化膿していたので、上の歯が当たると痛くてたまらなかったのです。今はそれを取ってしまったから、痛みが無くなり先週より楽になりました。 

 そして、これがきょうの最大の成果。生まれて初めておじやを作りました。 

今まで、自分一人でおじやを作ったことがなかったのです。でも、痛みの抜けない歯茎、どこまで噛めるか分からない噛み合わせが心配でした。そこで、急遽熱いご飯を炊き、自己流で、と言うより、適当にかつを出汁など入れて、おじやらしきものをこしらえました。こんなに手早くご飯を炊けたのも、
圧力鍋でお米を炊く練習をしていたからこそ。まことに、芸は身をたすく、であります。 

きょうは仕事はお休み。スイスでは三日間以内まで、診断書無しで、医療休暇を取れるのです。これは有給休暇です。 

こんな状態でしたから、オフィスに行ってもきっと仕事にならなかったでしょう。でも、こういう医療休暇の制度はとてもありがたいと思います。もし私がフリーランスだったら、自分が働かなければ収入はありません。フリーランスの働き方には、良いことも沢山ありますが、体に不調が起きたときは、きついこともありますね。 

義歯を作れるようになるまでに、3ヶ月かかるそうです。抜いた歯の跡を、骨が自然に閉じるまでにかかる時間だそうです。人の体って、融通無碍。いろいろなことに対応できるんですね。凄いなあ。 

この先長いけれど、まあいいか。私本体より先に昇天した奥歯の供養をして、また人生は続くのです。 

(3月5日)