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 新刊書のように良い状態の本を古書店で発見。タイトルから東日本大震災後に書かれた本なのかと思ったら、10年以上前(1999年6月初版)に出た本だった。それでも著者の名前を見て読んでみようと・・・。

 

 

【危機感なき日本人】
瀬戸内 戦後50年たって、いま本当に日本のそういうバックボーンの精神や心がなくなりましたでしょう。戦争が終わって、アメリカの方針は、そういうものを日本から全部なくそうとしたんですから。教育にしてもアメリカに言われるままにそのとおりにしましたからね。だから、もうまったく芯のない、クラゲみたいな日本人になってしまいましたね。・・・(中略)・・・。唯々諾々としてその教育を続けてきて、50年たって、今、もう一度日本は完全に戦争に負けたんじゃないでしょうか。いまこそ完全な敗戦じゃないですか。だから、このままいったら、21世紀には日本は滅ぼされるんじゃないでしょうか。
稲盛 そう言う点では、目覚めなければならないときでしょうね。
瀬戸内 ええ。日本人には危機感というものがほんとうにないでしょう。
稲盛 ないですね。 (p.25)
 この様な発言は年配の皆さんが口をそろえて語っていることなので、戦後世代の志の高い青年たちも良く分かっているのだけれど、政治主導で具体的に舵をきらないことには何も良くならない。安倍政権がいっとき行動を起こしたけれど舵をきりきれない本当の原因は、国民全体が日本丸の進行方向に対して、やはり本当に危機感を持っていないからなんだろう。
 日本の若者達の魂に潜在する純粋な素直さに期待は置くけれど、日本社会の側に失われたものが多すぎると、若者達だって辿りようがないだろうに・・・と思ってしまう。
 バブル崩壊以降、経済の下降傾向に飲まれている大人は、日本文化の守り手としての自覚を持てずに、放棄してしまっているか手を拱いてしまっている。むしろバブル崩壊以降に生まれた若者たちには、自分自身が生きてきた範囲内で失われた経験がない分、明確な陽光を見出せないまでも、茫漠たる光を感じつつ自身の中でその光をフォーカスしているのかもしれない。そうであることを期待するしかないような気がしている。

 

 

【聖職者がいなくなって・・・】
瀬戸内 今、日本には聖職者がいなくなりました。お医者さんというのは人の命を救ってくれる聖職ですよね。お坊さんも人の心を救う聖職ですよ。教育者も人を教育する聖職ですよ。この聖職の人たちが経営にかまけて金儲けに走っていますでしょう。聖職者でなくなったということ、これが日本をだめにしている大きな問題だと思いますね。(p.28)
 聖職者とは無形の価値に準ずる生き方を軸にしている人のことを言うんだろうけど、今日の宗教は完全に貨幣経済に乗っ取られている。社会に蔓延しているのは「貨幣という神」に従う聖職者ばかりなのである。

 

 

【稲盛さんの人生の分岐点】
稲盛 私が悪さをすると親父が、
「おまえ、何でそんな悪さをしたんだ。正しいと思ってしたのか」
というから、
「そうだ、社会正義でやったんだ」
と答えると、相当な悪(ワル)で学校ではえらい怒られているのに、親父はそれっきりなにもいわない。黙っている。
中坊 やっぱり誰かが認めてあげないかんね。
稲盛  ・・・(中略)・・・。ですからおっしゃった通り誰か認めてくれる人がいなかったら、ヤクザになっていたかもしれません。だって、身につけた空手をいかして、大学出のインテリやくざになろうと思っていたこともあるぐらいですから。(笑)。
 中坊さんも法曹界で検察を敵に回して社会正義を主張しているまっとうな方。既得権者たちが自分たちの権力や財力を守り強化するために作っている法律に、何ら疑念を挟むこともなく、そこに万全の社会正義があると思い込んでいる普通の公務員的知性(痴性)しかない平凡な親での下では、社会を変えるような反骨精神を持つ子供など育つわけない。
 今日の裁判所など、完全にウンコ以下である。
              【裁判所の実態】

 

 

【ブルドック戦法】
 子供の頃の喧嘩の仕方を語っている個所がある。中坊さんは弱かったけれど絶対に負けない方法を知っていた。「噛みつき」戦法である。血が口に入って来ても吐き出すと離れてしまうから、噛みついたまま血を飲み込むのだという。相手は間違いなく外科行き。それを聞いた稲盛さんの発言。
稲盛 ガキ大将の喧嘩にも程度があるわけです。相手が倒れる、血だらけになる、そうするとその辺でやめとくという暗黙のルールがあるんですね。ところが、今の話は限度がない(笑)。それは凄まじいことです。(p.61)
 思わず笑ってしまったけれど、イメージするだけで血の気が引く壮絶な戦法である。
中坊 いちばん弱い、ガキ大将にもなれない子やったら、それしか手がなかったんですよ。
稲盛 ですから、現在の中坊公平の強さというのは、並みの強さじゃないわけです。
瀬戸内 噛みついて離れない(笑)。強いですね。私も思いだした、夫婦けんかのとき、その手は使いましたよ(笑)。(p.61)
 日本社会をテーマに話されている内容だから笑いつつも楽しく読んでいたのに、瀬戸内さんの発言を読んで固まってしまった。

 

 

【御三方の共通項】
稲盛 それと、不良を守ってやろうという、その気持ちがどこから出てくるかなんですよね。中坊さんの場合もそうですし、私の場合でも変な正義感みたいなものがあった。それは教わってでるものではない。
瀬戸内 生まれつきの性格というのがあるんですね。
稲盛 どうも、あるんですね。
瀬戸内 遺伝でしょうかね。
中坊 そうでしょうね。
稲盛 繰り返しますが、中坊さんはいろんな連中を敵に回して不良債権の回収に一生懸命、ほんとうに喧嘩腰でやっていらっしゃるでしょう。私も仕事の上で「人間として正しい」と思うことは、どんな障害があろうともやり抜こうとしていますが、こういうエネルギーは一体どこから出てくるんでしょうね。
瀬戸内 私は女のガキ大将で、男の子のいじめっこガキ大将といつも喧嘩すると必ず勝つんですよ(笑)。生まれつきじゃないかな。(p.56-57)
 正義感の出所は、結局のところ“生まれつき、ないし、遺伝”ということか。だったら後天的に会得できないことだから、社会正義を生まれつき備えている人たちがいくら口を酸っぱくして語っても、社会正義なんて生まれつきない人たちには馬の耳に念仏ということになってしまう。どおりで社会が善化しないわけである。
 ところで、稲盛さんの正義感は、ビジネスにおいて、アメリカより酷く高い電話料金になっているNTT独占の日本の電話料金を何とか下げることは「人間として正しい」という思いで情熱を注いだことに表れている。
   《参照》   『人間の本質』 本山博・稲盛和夫 (PHP)
             【事業を始める時の思い】

 

 

【御三方の共通項の別解】
瀬戸内 私はこういうふうに思う。私たちはどこかの星から来た人間で、たぶん三人とも同じ星から来ているんでしょう。
稲盛 そういう理解もいいかもしれませんね。
瀬戸内 だから虫が好くんです(笑)。それしか分からないですよ。 ・・・(中略)・・・ 虫が好かんのと一緒に仕事をしても、それはあきませんわ。
稲盛 いや、ほんと(笑)。
 ・・・(中略)・・・ 。
中坊 少なくとも三人に共通しているのは、枕詞も美辞麗句もなしに、すぐ本音で話をすることですね。
瀬戸内 それから、世間の毀誉褒貶に煩わされないでしょう、褒めてくれたら「そうか」と思うけど、悪口をいわれても、「なに、勝手にいっとけ」と思ってる。(p.64)
 「同じ星から来ている」というのは、最も正しい解答なんじゃないだろうか。先天の意識レベルの差というのは本当に埋まらない。ムーの社会は、そのことを全員が認識した上で秩序が形成され維持されていた。
   《参照》   『黄金の帝国』 三原資忍 サン企画
             【ムァー帝国の階級社会】

 意識レベルの違う人間達を、民主主義の名において平等にしようとするから、様々な捻じれた法律がそれぞれの既得権者の都合のいいように作られてしまう。つまり人間性よりも法律が優先する世界になってしまうのである。人治国家というと我儘な人間たちが恣に振る舞う前近代的なシステムのように思えるけれど、法治国家が優れているなどという証拠は全然ない。むしろ邪悪な人間達が法を利用した権力隠蔽システムとなっているのが世界の真実である。
 最善は自律であり、最悪は法律なのである。最善はやはり魂のレベルが均一でなければ機能しない。
 アメリカが法律(法治)社会になったのには、言葉の通じない多くの民族が集う移民国家であるという前提があった。日本がアメリカ型の法治社会へと移行する必然性はないし、意図的に推進すれば日本社会は歪むのである。洋行帰りの警察官僚が大した思慮もなくアメリカのシステムに傾斜し、日本社会を紊乱させつつ治安維持の名目で国民を監視するための悪法をさらに施行させてゆくことだろう。

 

 

【無料や無報酬】
瀬戸内 私のところは法話も、天台寺も寂庵も全部ただなんですよ。写経もただです。そうすると、庭の木を「あら、これいいわね」と抜いて帰るんですよ。お茶を無料で接待していると、お茶碗をとって帰るんですよ(笑)。
中坊 確かにただでばっかりやっていると、時には腹の立ってくるときもありますよ。なんでこれだけやって、わし何の利益もないのに、その上まだこうせい、ああせいいうてくる。そんなの、できんやないかといいたくなるし、またときには、文句をいうことはありますけど、いうたら後で「つまらんことをいうたな。やっぱりいうべきでなかった」と反省というか、嫌な思いがしますね。
瀬戸内 よくわかる。(p.79)
 「魂のランク」が異なった人間たちが混在するこの地上世界では、このような事態は容易に起こってしまう。地球という平均的進化レベルの低い星では、さまざまな軋轢は起こるもの。無料や無報酬といった金銭に囚われない行為を思いつくのは、やはり、地球に来る前にそのような星に住んでいたからなんだろう。
 お金があったって貪る人は貪る、無くたって貪らない人は貪らない。その差はやはり、地球に来る前に属していた星の進化レベルに由来するんだろう。